二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 79章 引継 ( No.158 )
日時: 2011/08/16 23:29
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「カミギリー、シザークロス!」
「ゴキブロス、銀色の風!」
場所は同じく地下植物園、そこに急遽仮設された丸太小屋。
そこではミキとハンゾウがバトルをしていた。
ゴキブロスは素早い動きでカミギリーの攻撃をかわし、銀色の風などで攻撃しつつ能力を上げている。
ゴキブロスのスピードとカミギリーのスピードを比べると、ゴキブロスの方がやや速い。
どうやらカミギリーは、進化するとスピードが落ちるタイプらしい。
「毒突き!」
「甘い!影分身!」
ゴキブロスは毒を帯びた腕を突き出すが、カミギリーはいくつもの分身を作り出してゴキブロスの攻撃を避け、ゴキブロスを惑わす。
「宿木の種もあるでな、そう長々と戦ってはいられん。決めるぞカミギリー、辻斬り!」
ゴキブロスを包囲するようにして現れた分身は、一斉にゴキブロスに向かって斬り掛かる。
確かにダメージを受けるのは実体の攻撃だけだが、こうして囲まれればどれが本体だか分からず、かわしようがない。
ゴキブロスはカミギリーの一太刀を喰らい、戦闘不能となる。
——と、思われた。しかし
「む……?」
ゴキブロスの姿は消えていた。跡形もなく。
「ゴキブロスの技、バトンタッチ」
ふと、ミキは呟くように言う。
「私のゴキブロスは、カミギリーの攻撃を受ける前にバトンタッチを発動したよ。バトンタッチは自分を他のポケモンと交代させる技。そしてそのカミギリーの相手をするのはこのポケモン。出て来て、カブトプス!」
ミキが繰り出したのは甲羅型の頭部に細い胴と四肢、そして何よりも目を引くのは銀色に煌く両腕の鎌。
甲羅ポケモンと分類される古代のポケモン、カブトプスだ。タイプは岩・水。
「……カブトプスか。確かにそのポケモンならば拙者のカミギリーには相性で勝る。だがそれだけだ。見たところそのカブトプスは捕まえて、ないしは進化させて間もないと見える。そのような未熟なポケモンでは、如何に相性で勝っていようと熟練された拙者のカミギリーには敵わぬよ」
「そうだろうね。確かに、素のカブトプスがそのカミギリーに勝っているのは、相性だけ」
ミキは『素の』という部分を強調して言う。
「だからそのカミギリーに対抗するための、バトンタッチなんだよ。バトンタッチはただ交代させるだけじゃなく、交代したポケモンの能力変化も引き継ぐ。ゴキブロスが上げた能力は銀色の風による追加効果が三回。つまり、今のカブトプスは全能力が2,5倍に跳ね上がってるよ!」
「……!」
それは、確かに脅威だ。
ポケモンとは、それだけでもう完成した固体だ。それに攻撃力や防御力がさらに高まれば、その力は計り知れない。
「さあ行くよ。カブトプス、メタルニッパー!」
カブトプスは通常の二倍異常の敏捷性でカミギリーに接近し、その鋭い鎌で三度斬り裂く。
「ストーンエッジ!」
そして続け様に鋭くとだった岩を連射し、カミギリーを攻撃しようとする。
「ぬぅ、カミギリー、影分身!」
だがしかし、カミギリーは無数の分身を作り出し、ストーンエッジを避ける。どんな技でも、当たらなければ意味がないのだ。
「だったらこれで、燕返し!」
カブトプスは鋭い眼光で本物のカミギリーを探し当て、鋭い鎌を振るって水色の体を斬り裂く。効果抜群なのでカミギリーは大ダメージを受け、後一押しといったところだ。
「カブトプス、止めのアクアテール!」
カブトプスは針のように先端が尖った尻尾を振るい、カミギリーを吹っ飛ばす。勢いよく壁に叩きつけられたカミギリーは静かに目を閉じている。戦闘不能だ。
「戻れ、カミギリー。主は責務を果たした」
ハンゾウは労いの言葉とともに、カミギリーをボールに戻す。
たびたび思うが、プラズマ団——中でも特に上位ランクの者は結構ポケモンを大事にしている。誰しもゲーチスの野望に塗りたくられているわけではないようだ。
「……ふむ、そのカブトプスを倒すのは少々骨が折れそうだな。だがそれはそれで戦いようはある。人であれポケモンであれ、大抵の生物は視覚なくしては、まともに戦う事などできぬ」
そう言ってハンゾウは次のボールを構える。
「そうして何も見えぬ間に、闇を見つつ闇に落としていく……モアドガス、出陣だ!」
ハンゾウの二番手は毒ガスポケモンのモアドガス。
紫色の風船のような形をした頭が三つある、奇妙なポケモンだ。
「一応忠告しておいておこう。そのカブトプスの力があれば、この小屋の壁を斬り裂いて外に出る事が出来よう」
「……なにが言いたいんですか?」
疑念の顔で、ミキはハンゾウに問う。
「今から使う技は、密室で使えば生物を殺める事ができるでな」
そう言ってハンゾウは、モアドガスに指示を出す。

「モアドガス、毒煙幕!」

モアドガスは体中の穴から紫色の煙幕のようなものを放ち、視界を塞ぐ。ハンゾウは見えているのかもしれないが、ミキとカブトプスは一寸先すら見えない。
「毒煙幕……毒素を含む煙幕を発生させる技だね……確かに密室で使えば危険だけど、それはあなたも同じ事でしょ」
ミキは姿が見えないハンゾウに向かってそう言う。
するとハンゾウはどこから喋っているのか分からない話術で、返答してくる。
「拙者は忍の者だ。忍とは諜報、暗殺、工作活動を得意とする者。特に暗殺では、よく毒を用いる。自分のポケモンが毒を放つなら、その血清くらいは持っている」
普通はそうだろう。持っていなかったのはいつかのマッドサイエンティストだけだ。まあ、彼の場合は老いぼれていたから抗体が作れなかっただけだが。
「目を封じ、毒で弱らせ、闇に蝕む。これぞ忍の真髄よ」
ハンゾウの静かな声が、小屋の中に響く。



……今回、何を書けばいいか迷っています。いつも僕は執筆中に『あとがきにはこんな事を書こう』と決めたりしているのですが、こうしてあとがきにまで着く頃には、何を書こうとしていたかを忘却しています。まあ、そういう事を書くだけでそれなりに行を埋める事は出来るんですけどね。では、次回はイリスとフォレスのバトルです。お楽しみに。