二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 81章 災厄 ( No.161 )
日時: 2011/08/17 21:38
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

青紫色の炎の中から現れたのは、リオだった。
「……PDOヒウン支部統括、リオ。プラズマ団の活動を圧倒的な戦闘力で度々妨害。その実力は旧7P——旧名プラズマ団7幹部——のトップであるレンジ、プラズマ団の協力者であるメイルを撃退するほど。危惧ランクはSSオーバー……」
ハンゾウは袖口から巻物を取り出し、リオの詳細が書かれているらしいそれを読み上げる。
「ふむ、これは拙者の手におえる相手ではないな。主君のため、主君の命令でなければ勝てぬ相手と争うのは忍の理念に反する。では、拙者は退却させてもらうとしよう」
そう言い残し、ハンゾウは音もなく消えてしまった。
「……ミキちゃん、大丈夫?」
「はい、大丈夫です……ところでリオさんは、何故ここに?」
「あー……まあ、いろいろあってね」
真実を打ち明けると、リオは今までロクにバトルが出来なかった。
まず最初に潜入する時、下っ端を蹴散らして行ったはいいが、そのせいで一緒に行動していたユウナとはぐれてしまった。
まあこれだけならまだいいだろうが、問題はその先。リオはしばらくPベース内を歩いていたのだが、一向に敵が現れず、暇で暇で仕方なかった。
たまに見回りの下っ端を見つけるが、そんな雑魚ではリオも満足できない。
しかも途中でフォレスが遊び半分で仕掛けた罠を避けたり外したり掛かったりしながら進み、時にはガイアのハサーガがぶっ壊してしまった通路が塞がれて遠回りしていたら、偶然地下へと続く階段を発見。
降りてみると中は広い植物園で、進んでみると丸太小屋があり、中で誰かがバトルをしている模様。
それで聞き耳立てていると、戦っているのはミキと判明し、なにか危険な状態っぽいのでシャンデラの炎で小屋を燃やし、現在に至る。
「で、ミキちゃんはこんな密閉した空間で何やってたの?」
リオは今はもう焼け跡しか残っていない小屋を見つつそう言うと、ミキは思い出したようにハッとする。
「そうだった……師匠が今大変なんです!」



地面を崩されて地中に埋まってしまったイリスだが、運良く地中に空洞が出来ており、まだ窒息も圧死もしていない。
しかしそれでも密閉された空間、それも地中だ。そう長いこといればお陀仏だ。
「うぅ……」
イリスは全身強打した痛みに呻きつつ、周りを手探りで確認する。
すると指先に、土ではない硬い何かが当たった。
(これは……石……?)
イリスは気力を振り絞って顔を上げ、暗い中で目を凝らしてその石を見る。石には何か書いてあるようだ。

『災いの力、ここに眠る。もし仮にこの力を使いし者がいるならば、全霊を持って気をつけるべし。災いの力は災禍を予知するだけにあらず、その力は正に災い、化すれば災害の如し。その溢れんばかりの力は己にも降り注ぐ、諸刃の剣なり』

かなり擦れたり削れたり、土で汚れてはいるが、辛うじて読むことが出来る。
イリスはその石がまだ半分ほど地中に埋まっているのに気付き、うつ伏せのまま掘り返す。
どうやらその石は箱のようになっていて、文字が書かれている部分は蓋になっているようだ。
イリスは蓋を開けると、そこには見慣れた赤と白の球体——モンスターボールが入っていた。
(なんでこんな所にボールが……?)
イリスはそう思ってボールを手に取ると、どうやらその下にも文字が書かれているようだった。

『力なきもの、災いの化身を手懐ける事を禁ずる。災いの力は力なきものが使えば身を滅ぼし、世界を滅ぼす災厄となる。化生の力は混沌の災いと災害、善の心持つ者に従えば災いを悟り、人々を救う救世主となる。しかし悪の心持つ者に従えば災いを呼び起こし、人々を殺める魔王となる。災禍の石箱を開けし者に問う。汝は災厄の力を何に使うか。富のためか、名誉のためか。戦のためか、平和のためか。印のためか、刻のためか——』

(なんのためかって、そんなの決まりきった事だろ……)
イリスはボールのボタンに指を触れる。そして
(仲間のためだよ)
そしてイリスは、ボールを開く。



その頃フォレスは、倒れたイリスのポケモン達を一箇所に集めていた。
「さて、俺がかっちょよく勝利を収めたはいいが……こいつらどうすっかな……素材は悪くないから、このままプラズマ団の支給ポケモンにしちまうか? いや、アシドに引き渡して借りを作るのも悪くねえな……」
ぶつぶつとそう呟いていると、突然、先ほどイリスを巻き込んで崩れた地面が——吹き飛んだ。
「!? な、なんだ!?」
フォレスは慌てて身構える。
すると、フォレスの目の前に、一匹のポケモンが姿を現した。
美しく煌く真っ白な体毛。それと対をなすように、鎌のように湾曲した漆黒の角。尻尾も黒く、悪魔の羽のような形状をしている。
災いポケモンと呼ばれる悪タイプのポケモン、アブソルだ。
「フォレス、お前は勝利を収めたとか世迷い言をほざいてたけど、まだ勝負は終わってないよ」
アブソルが出て来た穴から、声がする。そして次の瞬間

「まだ僕には最後のポケモン——アブソルが残ってる!」

ほぼ垂直な壁を1mほど駆け上がって姿を現したのは——イリスだった。
「な、てめえ……まだ生きてやがったのか……!」
フォレスは驚きと悔しさと怒りが混じったような顔でイリスを睨み付ける。
「まあね、昔から強運でね、たぶん僕は寿命で死ぬよ」
イリスは軽く冗談を言って、すぐさま目付きを鋭いものへと切り替えた。
「フォレス、今度こそ決着だ。僕の最後のポケモン、アブソルでその四体を全滅させてやるよ」



今回はイリスの六体目のポケモン、アブソルの登場です。ちなみに何故アブソルの入ったボールがあんな所にあったのかは、後々明かしていきます。では次回はイリスvsフォレス、決着です。アブソルの意外な行動にご期待ください。では、次回もお楽しみに。