二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 106章 猛毒 ( No.211 )
日時: 2011/08/28 21:37
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「アブソル……」
危険な毒素の直撃を喰らったアブソルは、驚く事に立ち上がった。
だがそれでもかなりダメージを負っているのは見て取れる。顔面は毒素で一部が溶解し、綺麗な純白の毛並みは溶け、所々汚れている。
しかし瞳に燃える闘争心だけは、今だ轟々と燃え続けていた。
「ケヒャ、まだやるのかよ。随分な根性してるけど、それはただ苦しみが続くだけだぜ。スモーガス、火炎放射!」
スモーガスは楕円形の体を割るようにして大口を開き、灼熱の火炎を吐き出す。
アブソルは跳躍してそれをかわし、上空から鎌(のような角)でスモーガスの体を切り裂く。
「ダークリゾルブ!」
スモーガスは闇のオーラを身に纏い、それを弾けさせるようにして放つ。
全方位への攻撃を避けることは不可能と言ってもいい。だからアブソルはその攻撃を避けなかった。
避けず、自分から突っ込んで行った。
「んな!?」
流石のアシドも驚き、スモーガスにも隙が生まれた。アブソルはその隙を目聡く見つけ、切り裂く。
スモーガスの背後に着地したアブソルはさらに振り向き様にもう一度切り裂き、そのまま体を一回転させて鋼鉄の尻尾を叩き込む。
「くっ、スモーガス、危険な毒素!」
スモーガスは急いで振り返り、有害な毒素の塊を放つが、その頃アブソルはとっくにスモーガスの背後に回りこんでいて、思念の頭突きを繰り出す。
「くっそ、ちょこまかと……スモーガス、ダークリゾルブ!」
スモーガスはとにかく攻撃を当てようというつもりなのか、全方位攻撃であるダークリゾルブを放つ。だがその攻撃は、アブソルの怒りの炎で相殺されてしまった。
そしてアブソルが怒りの炎を使ったという事は、アブソルは怒っている。つまり体力がかなり減っているという事。
アブソルは相殺されたダークリゾルブを通り抜け、スモーガスの体を通り間際に切り裂く。
「スモーガス、火炎放射!」
スモーガスは背後に振り返って火炎放射を放つも、アブソルには当たらず、むしろ攻撃の隙を作っているようなもので、アブソルはその隙に鋼鉄の尻尾を叩きつける。
スモーガスは、はっきり言って鈍い。素早さが低い。どんなに強力な攻撃でも、当たらなければ意味がない。その点に関しては、素早さの低いポケモンのウィークポイントだ。
だからアシドはその鈍さをカバーするために、相手を眠り状態にする催眠術を覚えさせている。相手が眠っていれば、避けるも何もない。
だが催眠術はエスパータイプの技。対するアブソルは悪タイプ。悪タイプには、エスパータイプの技が効かない。全て完全に無効化されてしまう。
だからアシドとスモーガスは、素早さの高いアブソルに押されているのだ。
「スモーガス、危険な毒素!」
スモーガスはとにかく攻撃するが、アブソルには掠りもしない。そしてアブソルはスモーガスの攻撃を避けるたび、スモーガスを攻撃している。
「この調子じゃ、やべえかもな……」
アシドはギリギリと歯軋りしながらそう呟き、ふと気付いた。
「ん? ……ヒャハッ、こいつはいい発見だ」
アシドの顔は、何か企んでいそうな邪悪な笑みへと変わった。
「? ……!」
イリスはそんなアシドの様子を見てアブソルに視線を動かすと、アシドが笑った理由が分かった。
アブソルはどうやら、毒状態になっているらしい。
しかも普通の毒ではない。猛毒だ。
毒と猛毒の違いは、毒が時間が経つにつれて相手の体力を削るのなら、猛毒は時間を重ねるごとにその毒性を増していく。つまり、削られる体力がどんどん増えていくのだ。
たぶんこれは、さっき危険な毒素の直撃を喰らった時に、猛毒状態になったのだろう。
「そういう事だと分かれば、こっちは時間稼ぎをさせてもらうぜ。スモーガス、火炎放射!」
スモーガスは灼熱を火炎を吐き出すが、その対象はアブソルではない。アブソルの周囲の地面、草だ。
草を燃やしてアブソルを火で囲み、身動きを取れなくしつつ熱で体力も少量ながら削るという、長期戦狙いの行為だ。
だが災いポケモンアブソルにとって、この程度の火は恐れるに足らない。アブソルは燃え盛る火炎を突っ切り、スモーガスの顔面に強烈な思念の頭突きを叩き込む。
そして反撃防止のため、思念の頭突きの反動を最大限に利用して大きく後ろに跳び退る。
「ぐぅ、ならこれだ。ダークリゾルブ!」
スモーガスは全方位に闇のオーラを放ち、攻撃する。
どうたら時間を稼ぐだけでなく、直接体力を減らす気でもあるらしい。
アブソルは怒り狂うように燃え盛る炎を出現させ、襲い掛かる闇のオーラを相殺。そのまま再度突っ込んでいく。
「くっ、もうこれしかねえ……危険な毒素!」
スモーガスはまっすぐ突っ込んでくるアブソルに有害な毒素の塊を放つが、アブソルは鋼鉄の尻尾でそれを無効化し、鎌のような漆黒の角を構えて突撃のスピードを上げる。
「がぁあああ!もう止めだ!ちまちまやってられっか!スモーガス、危険な毒素を、とにかくぶちまけろ!」
最後の最後でアシドはキレたようで、指示が滅茶苦茶だ。
しかしスモーガスは従順なのか有害で危険な毒素の塊を口内に無数に作り出し、散弾銃の如くとにかくぶちまける。
「アブソル、突っ込め!」
そしてこちらも最後の最後で指示を出したイリス。
アブソルは「言われるまでもない」と言うような顔で毒素の塊が乱射される中へと飛び込んだ。
そんな所に飛び込んで無事でいられるわけがなく、アブソルは盛大に危険な毒を何発も喰らった。
だがアブソルは倒れず、スモーガスに接近し、死神が鎌を振るうように、漆黒の角でスモーガスを切り裂いた。
スモーガスは空中で静止。アブソルはスモーガスに背を向け、停止。
互いに動きを止めた、数秒後。
アブソルが倒れた。
「アブソル!」
イリスはアブソルに駆け寄る。これでイリスの手持ちは零。これで、終わりである。
「ケヒャハハハ!僕の勝ちだ、英雄。所詮てめえはその程度の力で、僕らには遠く及ば——」
ダンッ
何かが、落ちる音がした。
「スモーガス!?」
落ちたのはスモーガスで、その目は、戦闘不能のそれだった。
つまりこの勝負。イリスとアシドのバトルは
引き分けだ。



今回はイリスとアシドのバトル、決着でした。いつもはここでズバッと勝利を掴むのですが、今回は引き分けです。そういえば変化技って、タイプの相性を受けるんでしたっけ?悪タイプに催眠術が効かないと思って今回書きましたが、もしかしたら効くかもしれないです。なんか変化技はタイプ相性を受けたような受けなかったような……忘却してしまったので、気になる人は個人的に調べてくださいな。では次回は……どうしよっかな。まあ、とにかく何かします。もしかしたらハヤトと再戦するかもです。というわけで、次回もお楽しみに。