二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 112章 父親 ( No.229 )
- 日時: 2011/08/31 21:47
- 名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
出会いというものは突然で、再会というものは唐突である。
14番道路でハヤトとのリベンジバトルを執り行い勝利したイリスはホワイトフォレストへ向かうべく14番道路を進んでいた。そしてホワイトフォレスとまでもう一息と言うところで、呼び止められた。
「おお、イリスじゃねえか!」
声がしたのは少し高くなっている岩の上。その声は男声にしては少し高め、もしくは女声にして少し低めと言うべきかも知れない声だ。
イリスは当たり前に声のした方を見上げ、目を見開く。
岩の上にいたのは、青い半袖Tシャツに半ズボンという、子供みたいな出で立ち。髪はこげ茶色で長いポニーテールにしていて、背はかなり低く……というか見た目は子供、それも少女に見える。
まあ男口調の女というものも、珍しくはあってもありえなくはない。
だからイリスが驚いたように目を見開いたのは、それが原因ではない。その原因を知るのは、この場ではイリスだけだろう。
この時イリスの中で、何かが繋がった。今まで頭の片隅に引っ掛かっていて、事あるたびにイリスを惑わした不確かな記憶。サザナミタウンでアシドに沈められた時に見た少女。
それが今、全て繋がり、イリスは全てを思い出した。
「と、父さん……」
岩の上で勝気な目を煌かせているのは、その昔、イリスがまだ幼い頃に蒸発したイリスの父親、イリゼだった。
「なんだお前、俺の事覚えてたのか」
イリゼは岩から飛び降りてイリスの目の前に着地しつつそう言った。
「今の今まで忘れていたけどね……まあ最近父さんの事を思い出しそうな機会が結構あったから思い出したんだと思うけど……そうじゃなければ、誰もこんな子供が自分の父親だなんて思わないと思う」
イリゼの姿は、どう考えてもどう見ても子供だ。しかも女、いっそ少女と言った方がいいだろう。
「ああ、この容姿はかなり困ってんだよな、昔から……どいつもこいつも俺を見るなり女の子扱いしてよー。失礼だよな」
「当たり前だと思うけど」
「だがしかし母さんだけは別だったな。母さんだけは俺の事をちゃんと男だと認識していた。母さんの目は、節穴じゃなかったんだ」
「それは母さんの目こそが節穴だと思うけど」
「まあそんなことはどうでもいいが」
イリスのツッコミは軽くスルー。
「そうだね、そんなことはどうでもいい。今問題なのは……何で父さんがここにいるかだ」
イリスは蒸発した理由より先に、ここにいる理由を尋ねた。
「それはだな、どうも嫌な風をイッシュの方から感じて戻って来たんだ」
「嫌な風?」
またオカルトな、とイリスは思ったが押し留める。話の腰をろうわけにもいかないからだ。
「ああ。まあこれは口で説明は出来ないか。……で、イリスよ。俺はこのイッシュに来て色々情報を集めたんだが……お前も大変だったんだな」
「……僕の事は全部知ってるんだね」
「いや、そうでもないさ。まだ一つだけ知らない事がある」
イリゼはそう言いつつ、鞄から何かを取り出す。
取り出したのは、モンスターボールだった。
「俺はまだ、お前の強さを知らない。だからやろうぜ、ポケモンバトル」
というわけで、親子といえどトレーナー同士。まずはバトルとなった次第だ。
使用ポケモンは二体。勝ち抜き戦だ。
「んじゃ、まずは俺から出すとするぜ。出て来な、ケンタロス!」
イリゼと一番手は暴れ牛ポケモンのケンタロス。分類通り足を踏み鳴らして今にも突撃してきそうだ。
「ノーマルタイプのポケモンか……だったら、このポケモンで行くか。出て来い、エルレイド!」
イリスが繰り出すのは、つい最近進化したばかりのエルレイド。格闘タイプ持ちなので、ケンタロスには有利だ。
「へえ、エルレイドか。いいポケモンだな」
「そりゃどうも……エルレイド、サイコカッター!」
エルレイドは刃に切断作用のある念動力を込め、ケンタロスに斬り掛かる。
「ふうん、まあ悪くない攻撃だ。でも、やっぱしまだその程度か」
イリゼは余裕の表情で、だがどこか落胆したように呟く。
「吹っ飛ばせケンタロス。ゴッドホーン!」
ケンタロスは駆け込むエルレイドに向かって猛突進する。しかしそれだけではなく、ケンタロスの角は神々しく光り、刃を振りかぶるエルレイドに激突する。
「エルレイド!」
エルレイドはその一撃を喰らって吹っ飛ばされ、先ほどイリゼが立っていた岩場にぶち当たり、しかも崩れてきた岩の下敷きになった。
「あー……悪い、まさかあそこまで行くとは思わなかったぜ。待ってろ、今出してやるからよ。ケンタロス、アイアンテールだ」
ケンタロスは崩れた岩をすくい上げるようにして鋼鉄の尻尾を振り、エルレイドを圧迫していた岩を全て粉砕する。
「…………」
その圧倒的光景に、イリスはただ呆然とするだけだった。
「おう、どうしたイリス。早くエルレイドをボールに戻してやれよ。もう戦闘不能だぞ」
「え……あ、ああ、うん……」
イリスは慣れているはずの動作なのにぎこちない動きでボールを取り出し、エルレイドをボールに戻す。
「さて、まずは先勝。幸先良いぜ」
イリゼは見た目も子供だが、子供っぽく笑う。
「さ、早く再開しようぜイリス。まだバトルは終わってないぜ」
そして勝気な眼差しで、イリスを見据える。
今回はイリスの父親、イリゼの登場です。そしてそのイリゼですが、年齢は大体40弱くらいですかね。でも見た目は少女です、イリスの母親の目は節穴です。では次回もイリゼとのバトル、そしてホワイトフォレストです。もしかしたらイベント発生するかもしれません。お楽しみに。