二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 265章 叫び ( No.269 )
日時: 2011/09/28 00:20
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「次はお前だ。頼むぞ、リーティン!」
イリスはエルレイドをボールに戻すと、次に草タイプのリーティンを繰り出した。
「リーティン、あのヤミクラゲは毒タイプの技も覚えている。だから用心しろよ」
イリスはまず、小声でリーティンにそう助言する。リーティンはコクリと小さく頷き、戦闘態勢に入る。
「よし。リーティン、ウッドハンマーだ!」
リーティンは手に持つ葉っぱに樹木の力を込め、ヤミクラゲに飛び掛かり、勢いよく振り下ろして叩きつける。
ヤミクラゲは特防は高くても防御はそこまでではない。さらに効果抜群もあって、かなりのダメージを与えた。
「くっ……ヤミクラゲ、危険な毒素!」
ヤミクラゲはカウンターに危険な毒素を放つが、リーティンは俊敏な動きで後ろに下がり、毒素が届かない所にまで退避している。
「エアスラッシュ!」
リーティンは葉っぱを振り、空気の刃を飛ばす。空気の刃はまっすぐヤミクラゲに飛んでいき、紺色の体を切り裂く。
「さらにグラスミキサー!」
リーティンはエアスラッシュの追加効果でヤミクラゲが怯むと、すぐに追撃に出る。
葉っぱを高速回転させて木の葉の渦木の葉の渦を作り出し、それを操ってヤミクラゲをその渦に巻き込む。
「ヤミクラゲ、大洪水!」
ヤミクラゲは自身の体から大量の水を放出し、グラスミキサーから抜け出す。
しかし大洪水は使用すると特攻が下がるデメリットがあり、ヤミクラゲは既に二回使用している。なので今のヤミクラゲの特攻は限りなく低いだろう。
「ヤミクラゲ、悪の波動!」
「リーティン、グラスミキサー!」
ヤミクラゲは悪意に満ちた黒い波動を放ち、リーティンは木の葉の渦でその波動を相殺する。
だがヤミクラゲの特攻はレイの予想以上に下がっていて、グラスミキサーは悪の波動を相殺するだけではなく、そのまま飲み込んでヤミクラゲに襲い掛かる。
「よし、今がチャンスだ。リーティン、ウッドハンマー!」
リーティンは樹木の力を込めた葉っぱを構え、飛び上がる。そして落下と同時にその葉っぱをヤミクラゲの脳天に思い切り叩きつけた。
「ヤミクラゲ!」
流石のヤミクラゲもこの攻撃は耐え切れず、赤いコアをピコピコと点滅させて戦闘不能となっている。
「戻りなさい、ヤミクラゲ」
レイは悔しそうにヤミクラゲをボールに戻した。
そして次のボールを手に取り、構える。その時だった
「なあ、前々から訊きたかったんだけどさ」
イリスが、レイにそう言った。本当に、混じり気なしにただ疑問を尋ねるような口調だった。
「なんであんた達は、プラズマ団なんかに入ってるんだ? 動機とか、ずっと気になってたんだよ」
それは、イリスのような者からすればごく普通の疑問だろう。プラズマ団は世間では悪い組織となっている。そんな自分の立場を悪くするような組織に属しているという事は、何かしらの事情があるはずだと。
だからイリスは何気なく訊いてみた。別に相手がレイでなくても、これがアシドやエレクトロだったとしても尋ねていたかもしれない。ただ偶然、たまたま尋ねようと思い至った時に相手をしていたのがレイだというだけだ。
しかしイリスが次に発する言葉は、レイの心の奥底にある、禁線に触れてしまう言葉だった。

「あんたらにも、あんたらの事を思ってくれる家族とかがいただろうに」

「黙れ!」

ホワイトフォレストに響き渡る、レイの叫び声。
イリスは今だかつて聞いた事のないような声量で叫んだレイに対して、ただ唖然としている。
レイはそんなイリスには意にも介さず、そのまま大声で、声を荒げ、叫ぶ。
「わたし達の事を思う家族? ええ、確かにわたしには家族がいましたよ。でも、あいつらが一度だって、わたしの事を思った事なんてない!」
レイは叫ぶ。ただ、感情のままに。
「何も知らない奴が、知った風な事を言うな!わたし達にあった思いなんて、全部辛く苦しいものだった!わたし達は今までずっと、受け続けてきた。責め苦を、辛苦を、地獄を。その苦しみを断片も知らないくせに、何も分かってないくせに、口出しするな!」
イリスは、この時に分かった。レイが解放してからずっと纏わり付いていた違和感の正体が。
そう、レイは今、感情が制御できていない。
いつもは氷のようにクールなレイなのだが、今は違う。体に熱がこもり、言葉も溶けきった水のようだ。
いつものレイは恐らく、感情を封じ込めているのだろう。キュレムの刻印とやらは、ただ力を制御するだけではないのだろう。いや、この剥き出しの感情そのものが、レイの力なのかもしれない。
「……こうなれば、あなたにも思い知ってもらいましょうか。わたし達の苦しみを味わわせる事は出来ませんが、代わりにあなた自身の苦しみを与えてあげましょう」
レイは力強くボールを握り締め、憎しみがこもった目でイリスを睨み付ける。
「あなたはここでも悶え苦しみ、わたくし自らの手によって滅されるのです」
レイはボールを構え、そして
「それでは、プラズマ団の境界を、刻みます」



今回はイリスとレイのバトルだったのですが、バトルは半分ほどで、残りはレイ自身についてでした。レイは解放すると感情が抑えられなくなってしまうのです。レイは家族に対して憎悪の念があるのですが、その辺の過去は後々明かしていきます。では、次回はレイの切り札登場です。実はもう出ていますが、ちゃんとしたバトルは次が初めてです。では、次回もお楽しみに。