二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 269章 イリスvsセンリ ( No.290 )
日時: 2011/10/06 23:38
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

後日
イリスはホワイトフォレストの中、一際人気のないところで、黄昏ていた。
イリゼは友達に会いに行くとか言ってブラックシティに行ってしまった。ヤクザの友達でもいるのだろうかとイリスは少々心配になったが、まあ、イリゼなら大丈夫だろう。
Nはいつの間にか消えていた。まあこっちも、そのうち戻ってくるだろう。
「はぁ……」
巨大なドラゴンポケモンが着地したかのようにへし折れた樹木に腰掛け、イリスは溜息を吐く。

「悩み事か、少年」

と、不意に、背後から声が掛かった。イリスは振り返り、その声の主を視認する。
声の主は、赤黒い服を着た、精悍な顔立ちの男性だった。男性は自然な感じにイリスの横に腰掛け、イリスに語りかける。
「月並みな台詞だが、悩んでいるのなら私に話してみてはどうだ? 一応、君よりは長く生きているし、トレーナー暦も長い。多少は力になれると思うが」
のっけからズバズバと斬り込んでくる人だった。イリスはそれに気圧されたわけではないだろうが、内に溜め込んだもやもやした物を、言葉にして吐き出す。
「……僕は、ある組織と戦っているんです。僕だけじゃなく、他にもたくさんの仲間と一緒に。その組織は、人やポケモンを操って悪い事をしています。でも、ついこの前、奴らがやっている事が悪なのか、自分達がやっている事は善なのか、それが分からなくなってきました」
イリスは独り言のように言う。
「彼らは悪い事をやっているというのは紛れもない事実。でも、それを止めるためとはいえ、彼らが築いてきた居場所を崩し、仲間を引き裂いていく。僕達がやっている事は偽善なのかもしれない。実は善行のようで、悪行なのかもしれない。そう、思えてしまうんです」
いつになく、イリスの声は弱々しい。
「彼らが悪い事をしていても、それを理由に彼らの全てを潰してしまうと思うと、もうどうしたらいいのか、分からなくなってしまうんです。彼らと戦うべきなのか、戦わないべきなのか。どう向き合ったらいいのかも、全て……」
そこから先は、続かなかった。単にどう言うべきか、言葉に詰まったのかもしれない。それとも、この先は口にしたくないのかもしれない。どっちにせよ、イリスは今、迷っている。

プラズマ団は、潰すべきなのかを。

「……すみません。いくら悩みを話してみろって言われても、こんな事、当事者でもないと——いや当事者であっても、返答に困りますよね。忘れてください。では、僕はこの辺で——」
「少年」
イリスが腰を浮かせたところで、男は声を上げ、イリスを制す。
「少年。君は、トレーナー暦は何年くらいかな?」
「え……?」
いきなりの質問で戸惑うイリス。だがすぐに我を取り戻し、過去をざっと振り返ってみる。
「えーっと……一年くらい間があったから、累計すれば一年。もうすぐ二年くらいですかね」
イリスのトレーナー暦は、割と浅かった。
「そうか……まあ、その辺りだろうな」
男は呟くように言うと、イリスに向き直り、まっすぐに見つめる。
「少年。君はどうやら、大事な事を忘れているようだ。トレーナーとして、最も大事な事をな。だから——」
男はボールを取り出し、言い放つ。
「それを今から、思い出させてあげよう。ポケモンバトルでね」



「少年」
「イリスです」
「そういえばまだ名乗っていなかったな。私はセンリ、ホウエン地方という所で、ジムリーダーをしている」
イリスはジムリーダーと聞いても、流石にもう驚かない。今まで何人もそういう人物と出会ってきて、イッシュはジムリーダーが集まる場所なのか、とか思い始めているくらいだ。
「バトルは4vs4の勝ち抜き戦で構わないな?」
イリスはコクリと頷く。
「では、始めよう。行け、バクオング!」
センリの一番手は、頭から突き出た突起や尻尾に穴があり、大口を開けたポケモン。騒音ポケモンのバクオングだ。
「……重量級のポケモンっぽいな。だったら、出て来い、メタゲラス!」
イリスの一番手はメタゲラス。重量級に対抗するには同じ重量級のポケモンと推察してのチョイスだ。
「先攻は貰いますよ。メタゲラス、アイアンヘッド!」
メタゲラスは鋼鉄の頭を突き出し、バクオングに向かって猛突進する。
しかし

「バクオング、ハイパーボイス!」

バクオングは大地を揺るがすほどの大音量で叫び、音の衝撃波でメタゲラスを迎撃する。しかもただ迎撃したのではなく、メタゲラスの動きを止め、かつ200キロ近いメタゲラスを吹っ飛ばしたのだ。
吹っ飛ばされたメタゲラスは受身も取れず、地面へと落下し、クレーターのような凹みを作る。
「嘘だろ……」
戦慄するイリス。それもそうだろう。まさか音で、それも効果いまひとつのハイパーボイスでメタゲラスが吹っ飛ばされるなんて、夢にも思わないだろう。
「……メタゲラス、グラビティコア!」
直進する攻撃ではあっさりと迎撃されてしまったので、メタゲラスは今度は遠距離からの攻撃に出る。バクオングの頭上に超重力の巨大な黒い球体を作り出し、それをバクオングに向けて落とすように放つ。
イリスはバクオングを重量級と見たが、実はバクオングはそんなに重くない。体重は80キロ強ほどで、メタゲラスの半分以下だ。なのでこのグラビティコアは相当効くはずだが
「……結構、余裕って感じだな……!」
バクオングは体中に傷を作りながらも、勇ましく足を踏み鳴らしていた。
「その程度じゃ、私のポケモンは倒せないよ。バクオング」
センリがバクオングに呼びかけ、バクオングは動き出す。



今回はイリスとセンリのバトルです。一応このセンリで、他の地方から来たジムリーダーとのバトルは8回目、即ち終わりを迎えます。最後は誰にしようかずっと迷っていましたが、結局はジムリーダーで唯一主人公と血縁関係を持っているという事で、センリにしました。それに僕、結構ノーマルタイプ好きですし。ポリゴンZやケッキング、非公式ならノコウテイやフォリキーなど。特にケッキングは、ルビーではかなり苦しめられましたよ、攻撃力が半端ないですからね。では、次回は今回の続きということで、次回もお楽しみに。