二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 285章 囮 ( No.324 )
- 日時: 2011/10/14 23:16
- 名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「テペトラー、冷凍パンチ!」
「ヨマワル、影分身」
テペトラーは拳に冷気を纏わせてヨマワルに殴りかかるが、ヨマワルは分身を無数に作り出し、その拳を回避する。
「シャドーパンチ!」
次にテペトラーは拳に纏わせた影をヨマワルへと撃ち出す。
「無駄ですよ。ヨマワル、守る」
影の拳は数多の分身の中から本物のヨマワルを見つけ出し、高速でん飛んで行くが、ヨマワルは自分の周囲に防御の結界を張る事でその拳を完全に防ぐ。
「ちっ、テペトラー、シャドーパンチ連打!」
「ヨマワル、守るです」
テペトラーはとにかく、あらん限りの影の拳を撃ち出す。
ヨマワルは結界を張ってその無数の拳を防御するが、しかし如何せん数が多いために全てを防御することはできず、結果何発か喰らってしまった。
だが
「くそっ、やけにかてぇな、そのヨマワル!」
「当然です。そのように鍛えていますからね」
ヨマワルは効果抜群のシャドーパンチを受けたというのに、平然としている。
どうやらこのヨマワルは、種ポケモンと言えど結構防御面を鍛えられているようだ。
「……まあ私のヨマワルが堅いのは確かですが、ヨマワルにダメージが通り難いのは、あなたのテペトラーだって関係があるんですよ?」
「……てめえがやったんだろうが」
ザキはチラリと、テペトラーを見遣る。
するとそのテペトラーの腹部は、焼けていて、今もなお熱を持っている。
早い話が、テペトラーは今、火傷状態なのだ。
「あなたのテペトラーは、見るだけで相当攻撃に特化されているのは見て取れましたからね。それなら毒々より、鬼火の方が良いと思いまして」
テペトラーはバトルが始まってすぐ、ヨマワルから鬼火を喰らった。
鋼や毒タイプにも持久戦を持ち込むためなのだろうが、この場合はテペトラーの強大な火力を抑制する役割もある。
水タイプなのに火力の高いテペトラーを、炎技の鬼火で制す。別段、面白くもなんともないが。
「しかし思いの他耐えますね、そのテペトラー。そろそろ倒れる頃と思っていましたが……どうやら予測が外れたようですね。これは多少リスクを負っても、毒々で早めに終わらせるべきでしたか……まあ、今となっては後の祭りですね」
「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!テペトラー、オーシャンクロー!」
ザキはキレ気味にそう叫び(もしかしたらもうキレているかもしれない)、テペトラーもそれに負けないくらいの気迫を持ってヨマワルに飛び込み、海の力と水を纏わせた爪で襲い掛かる。
「無駄だと言っているでしょうに。ヨマワル、守るです」
案の定、ヨマワルは守るでオーシャンクローを防御する。
しかしザキだって、それが分からないほど馬鹿ではない。
「そこだ!シャドーパンチ!」
テペトラーはヨマワルが守るを解いた所に影を纏わせた拳を放ち、ヨマワルをぶっ飛ばす。
……馬鹿ではないとは言っても、遠くからで効き目が薄いなら近くから、という子供でも分かるような稚拙な作戦ではあった。
「そんな程度の低い策で、私に勝つなんて不可能ですよ」
確かにその通りで、ヨマワルはさっきよりも効いてはいるようだが、まだ普通にバトルを続行できる程度にしかダメージを受けていない。
「くっそ……こんなとこでタラタラ時間喰ってるわけには——!?」
「おや、気付きましたか」
ザンバの言う通り、ザキは気付いた。
ザンバの目的は境界の水晶を金庫から取り出し、盗み出すこと。本来なら取り出し、そのまま逃げるつもりだったのだろうが、そこで思わぬザキが来てしまい、仕方なくバトルとなってしまった。
だがザンバの目的は水晶を盗み出すことであって、ザキとバトって倒すことではない。ザンバほど頭脳明晰な者ならばアシドでもない限り当初の目的を忘れてバトルに没頭したりはしない。それにザンバほどの腕があれば、ザキの脇をすり抜けて逃げることもできたはずだ。あまり長々とバトルしていては、イリスやキリハなどの仲間も来るかもしれない。それどころかザンバは、勝つだのなんだのとペラペラ喋り、まるで時間を稼いでいるかののようだった。
これらの要素が導き出す結果とは
「残念ながら、私は境界の水晶は持っていません。かの水晶は、他の仲間が所持しております」
ザンバは手にする箱の中身をさらけ出しながら言う。箱の中身は見事に空っぽだった。
「畜生が……!」
怒りを抑え、呻くようにそう呟くザキは視線を移す。すると閉鎖的なこの金庫室の中でもう一つ、他の場所と繋がる穴……通気口を発見する。そして思った通り、通気口にはめられていた鉄格子は外されていて、何者かが出入りした痕跡がある。
「お前はただの時間稼ぎだったんだな」
「ええ、そうですとも。いやはや、上手く掛かってくれるものですね。ま、この場合はあなたが短絡的なのが幸いした、と言うべきでしょうか」
「……ほざけ」
言ってザキは踵を返そうとすると
「おっと、逃がしませんよ」
ザキの進行方向に突然ヨマワルが現れ、ザキの動きを制する。
「あなたを引き止めるのが私の役目ですから。この部屋は電波も通りませんからあなたは仲間も呼べない。今頃は私の仲間が、目的の物を持って外の者に届けているでしょう」
「……外の者?」
ザキはザンバの言った引っ掛かるワードを復唱する。
そしたらザンバは、律儀にも答えた。
「はい。あなた方は気付いていないかもしれませんが、私達だってたかが5、6人の少数で敵の本拠地に乗り込んだりはしませんよ。外にいくつか部隊を待機させています」
「部隊……だと……?」
「ええ、そうですとも」
そしてザンバは次の瞬間、事も無げ途轍もないことを言い放った。
「具体的には、焦炎隊、森樹隊、氷霧隊、毒邪隊……四部隊の総勢が、この拠点を包囲しています」
今回はザキとザンバのバトルだけとなってしまいましたが、その分結構細かい所まで書けました。ザンバは実は囮で、水晶を持ち去ったのは他のプラズマ団……さて、一体誰なのか。……まあ、まだ侵入したプラズマ団はフォレスとザンバしか明らかになっていませんがね。ですが次回からはちゃんと出していきますよ。というわけで、境界の水晶を持っているのは誰か!?次回もお楽しみに。