二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 287章 漏洩 ( No.326 )
日時: 2011/10/15 01:32
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

実はイリス、イリゼ、Nの三人(+アキラ)には特定の持ち場がなく、各々適当に巡回してくれと、キリハから指示されていた。
なのでイリスはその指示通り支部内を適当に歩き回っていたら、Nを見つけた。
「あ、N!」
「ん……イリスか」
イリスはNに駆け寄る。別段、特に意味はない。
「N、プラズマ団は見つかった?」
「いや、まだ一人も見つかってないよ……イリスは?」
「僕もだ……向こうは、結構少数で攻めてきてるのかもしれないな」
「もしかしたら、大人数かもしれないけどね。単に控えているだけで」
まあともかく、Nはまだ敵を見つけていないとのことだ。それにそれは自分も同じなので、イリスはすぐにNと別れ、巡回に戻ろうとする。
しかし
「それじゃ、イリス」
「うん……。……?」
イリスはその時、何か違和感を感じた。いや、違和感とは少し違うかもしれないが、そうとしか形容できない感覚。何かが違う。真実ではない。そうイリスは感じ取った。
イリスは背を向けるNの腕を掴み、そして

「お前……誰だ?」

そう、言い放った。
「……流石は真実の英雄。物事の心理を見抜く目に優れているな」
その声はNだったが、口調はまるで違う。
Nの姿をした何者かはイリスの手を振り払い、若干の距離を取る。
「もう少し隠し通せると思ったが、まあ流石に幾度と一緒にいれば、違和感も感じやすくなってしまうか」
そしてその口調はNではなく、声ももっと低い、成人男性の声だった。
「お前……誰だ?」
イリスはもう一度、さっきと同じことを尋ねる。
「誰、とな。しかし主は既に拙者のことを存じているはずだがな」
Nの姿をした何者かは次第にその化けの皮を剥がしていき、最後には、全く違うものとなった。
立たせた黒髪のせいもあるのか、背が高く、現代ではおよそありえない忍装束を着て眼帯を掛けた男。
そして手には、今までそうやって隠していたのか、如何にもという感じの重箱を携えている。
「以前、既に名乗ったが、今一度言おう。拙者の名はハンゾウ、フレイ殿率いる焦炎隊の者だ」
「……その重箱、境界の水晶が入っているよね」
イリスはハンゾウの名乗りを無視し(というかイリスは普通にハンゾウのことを覚えていた)、重箱の中身をピシャリと言い当てる。
「……ほう、そこまでとは。真実の英雄、侮りがたしだな」
ハンゾウは本心ながら、感心したような事を言う。
「はぁ……今までのNは、お前が化けていたんだな」
「左様。いやしかし、よくあそこまで騙されると思ったよ。主らは宝物庫の場所、守護の配置、経路……我々が知りたがっている情報を全て話していたからな」
つまりまとめると、ハンゾウは今まで——恐らくホワイトフォレストでイリス達と出会った時は既に化けていたのだろう——Nに化け、イリス達を騙し、仲間と思い込ませて境界の水晶の情報を引き出していた。
プラズマ団の本拠地に乗り込む前日を狙ったのも、自分が水晶を守る振りをして逆に水晶を奪うのも、思惑の一環だろう。
「でも、水晶をキリハさん見つけたか否かは、僕らにも分からなかったはずだ。なのにその情報を引き出すってのは、ちょっと無理がある気がするね」
「なに、元々境界の水晶がどこにあるかの目星は大体ついていたのだ。だから今回は、上手く事が運んだに過ぎない」
そう言いつつ、ハンゾウはボールを取り出す。
「……やるか」
そしてイリスも同じように、ボールを手に取った。
両者睨み合い、今正にバトルが始まる、その時だった。

「ハンゾウ、ストップだよー。君はまだ戦っちゃダメー」

ハンゾウの後方から、やる気のない気の抜けた声が響く。
ハンゾウは後ろを振り返り、イリスもそちらへと目線を移す。
するとそこには、所々が巻き毛になった緑色の髪に、燕尾服を着た少年——に抱えられている、赤く長いポニーテールに浴衣という出で立ちの少女、7Pフレイがいた。
「ん、シャンソン下ろしてー」
「あ、はい。分かりましたフレイさん」
燕尾服の少年、シャンソンは、フレイをそっと床に下ろす。ちなみに床はお世辞にもキレイとは言えない。
「フレイ殿……」
「ハンゾウさー、そんな大切な物持ってんだから、無闇に戦わないのー。だからここはあたしに任せて頂戴なー。これは命令だよー?」
「……承知いたした」
ハンゾウは忠実に、フレイの命令を聞き入れ、通路を音もなく走り去っていく。
「! 待て——」
「おおっとー? 英雄君の相手はこのフレイちゃんだよー?」
フレイはイリスの前に立ち塞がり(立たずに寝転がっているが)、イリスの通行を防ぐ(正直簡単に跨げるが)。
「ここを通りたくばあたしを倒してからにしろ、ってねー。そんじゃー始めますかー。メタグロス、出番だよー」
フレイが繰り出したのは、その声に反して随分ゴツイポケモンだった。
蒼い鋼鉄の体を持つ四足歩行型のロボットのような形状、顔面にはX字型の鉄のプロテクターのような物が取り付けられている。
鉄足ポケモン、メタグロス。鋼・エスパータイプのポケモンだ。
「おいおい……今まで散々気の抜けたポケモン見せ付けといて、この期に及んでこんなゴツイの出すか、普通……?」
イリスはメタグロスの圧倒的な気迫に押されていた。ちなみに気の抜けたポケモンとは、恐らくノコウテイとニートンだろう。
「えへへー。メタグロスは驚異的な演算能力を有していて、そんじょそこらのスパコンなんかよりよっぽど優れたポケモンなんだよー。お陰で仕事がはかどるはかどる……いやー便利だねー」
なんだか宿題を代わりにやる学生のようだった。
「……まあでも、こんだけ強そうなら、その分やる気も出るってもんだ。逃げず臆せず屈せず、真正面から戦ってやるよ」
イリスは再度ボールを強く握り締め、敵を見据える。



今回は、実はNはハンゾウが化けていた姿で、情報が思い切り漏洩していたのが明らかになりました。そして境界の水晶を持っているのはハンゾウです。前回サーシャが持っていると勘違いした人、僕は水晶の箱を持っていると言ったのであって、水晶を持っているとは言ってないです……はい、すいません。完全に屁理屈ですね……ま、まあそれは置いといて。やたら登場してる割にはまだほとんどバトルをしていないフレイが、遂に本格的にバトります。次回になるかどうかは未定ですが、とりあえず次回をお楽しみに。