二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 332章 大穴 ( No.401 )
- 日時: 2011/10/28 00:05
- 名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「父さん、お願いがある」
ある日、某所のポケモンセンターにて、イリスは父イリゼと向かい合い、単刀直入にそう言った。
「何だ?」
イリスはいつも通り、軽い感じではあるが、どこかどっしりとした声でそう返す。
そして
「僕とバトルをして欲しいんだ!」
「断る」
ズバッと
イリスのお願いは一刀両断にされた。
「な、何でだよ!」
流石のイリスも、怒鳴らずにはいられない。まさかこんな即答で断られるとは微塵も思っていなかった。
「お前が俺と戦うなんざ、百万光年早いわ」
古典的な間違いをするイリゼ。
だがイリスはツッコまない。今、話の腰を折ってはいけないからだ。
「で、でも、僕だって相当強くなってるはずだ。だから勝てるかどうかは置いておくにしても、いい勝負にはなるんじゃないかな?」
「……はっ」
鼻で笑われた。
「お前が強くなったのは認めるが、俺だって今も成長してんだぜ?」
「身長は全く伸びてないけどね」
見事な幼児体型。いやまあ、男なのだが。
「お前は強い、だが俺はもっと強い。同じペースで強くなってたら、絶対に俺が勝つ。そんなのも分からずに勝負を挑むなんて、笑止千万だぜ」
イリゼはいつになく厳しい口調で言う。だからか、イリスは声も出ない。
「……まあでも、それで挑戦権を完全に剥奪することもないな」
イリゼは仕方ない、と言わんばかりに言う。
「イッシュのジムリーダー十人。四天王四人。チャンピオン一人」
イリゼは唐突に、そんなことを言い出す。
「こいつら全員倒せ」
「……へ?」
イリスは間抜けな声を出してしまう。
「全員倒せって……四天王やチャンピオンはともかく、ジムリーダーは全員倒して——」
「バーカ」
イリゼはイリスの言葉を遮り、罵倒する。
「ジムリーダーだって日々強くなってんだ。お前が戦った頃より、今は断然強い。だからこそ再戦すんだろうが」
イリゼの言っていることはもっともで、イリスも成程と頷く。
「……うん、つまり、今父さんが言った人達を全員倒せばいいんだね?」
「そういうこった」
かくして、イリスはイリゼと戦う権利を得るため、再度ジムリーダーと戦う事となった。
しゃりん!
と、そんな音が鳴り響いた。
場所はサンヨウシティ。イリスはまずこの街のジムリーダーと戦おうとしたのだが、なんだか懐かしい街なので、なんとなく夢の跡地の方へ向かっていたら、辻斬りされた。
イリスは、なんだか前にもこんなことがあったなぁ、とか思いながら反射的に身を退く。
「……ああ、またやっちゃった……」
イリスは以前にもそんな台詞を聞いた気がすると思いつつ、刀の先、刀の持ち主へと視線を動かす。
そこには、イリスよりも少し背の低い少女。
「……アカリさん?」
「……イリスさん、ですか?」
そこにいたのは、一年前も辻斬りを受け知り合ったトレーナー、アカリだった。
「お久しぶりです。えーっと、一年くらいでしょうか」
辻斬りを通じて再会したイリスとアカリは、夢の跡地にて適当に雑談していた。
「イリスさんはお変わりないようで」
「それを言ったらあなたもです……まあ僕は、ここ最近の生活が様変わりしましたけどね」
「……プラズマ団、ですか?」
アカリはズバリ言った。
「そうですね。奴ら、最近めきめきと力をつけてきて、正直、かなり苦しい状況です」
プラズマ団は現在、キュレムを復活、操作することが出来るアイテム、境界の水晶を所持している。さらにミキのポケモンも一体奪われ、さらには古生代ポケモンとやらも製造している。
「……私も、下っ端くらいならこここ最近戦ったりしていましたが、どうやら話を聞く限り、敵は幹部が基本的に動いているようですね」
「そのようです。僕も行く先々で幹部とばかり戦っています……ああでも、まだ二人ほど戦っていない奴がいましたね」
会った事、見た事はあったが、戦ってはいない。
アシド、フレイ、フォレス、レイ、エレクトロ。この五人、序列七位から三位までの下位五人の幹部と、イリスは戦った。
「でもまだ二人、奇怪な言葉を話す人外っぽいのと、もう一人——」
バゴォン!
と、その時、破砕音が轟く。
「っ!何事ですか!」
アカリはサッと立ち上がり、腰の刀に手を伸ばす。臨戦態勢に入っているようだ。
破砕音は轟音だけでなく地響きも生み、地面が揺れる。イリス達は立っているだけで精一杯だ。
「……収まった……か?」
イリスはゆっくりと立ち上がる。どうやら地響きは収まったようだ。
「一体、何が——」
イリスは辺りを見回すと、とんでもないものを見てしまった。
「こ、これは……!」
「なんて事……」
夢のエネルギーが眠る場所、夢の跡地。
その地面には巨大な穴が開けられ、中には荒廃した研究施設が覗いていた。
「まさか、ここの地下にこんな場所が——」
バシュバシュッ!
ギギンッ!
最初の音は、放たれる音。小さな鉄の塊が飛び出す音。
次の音は、小さな鉄の塊が、他の鉄に高速でぶつかって弾かれる音。
まどろっこしい描写など抜きにすれば、その音は、拳銃による発砲音と、その飛来する弾丸を刀で弾き飛ばした音だ。
さらにそれに人物も付加させれば、何者かが拳銃を発砲し、その弾丸をアカリが居合い抜きの要領で弾き飛ばした。
「……まさか、弾くなんて思いもしませんでしたね」
近くの草薮から、一人の人間が現れる。
軍服に自動式揮拳銃を携えているその者は、プラズマ団のサーシャだ。
「お前は——」
「まあですが、私の役目はこれで終わりです」
サーシャはイリスの言葉を遮り、拳銃をホルスターに収める。
「さようなら」
『っ!?』
次の瞬間、イリスとアカリは目に見えない力に、突き飛ばされた。
そしてその先は、深き穴。
二人は夢の跡地に眠っていた地下へと、落ちていく。
「……よくやりましたよ、サーシャ」
草薮からもう一人の人物と、ポケモンが出て来る。
それは7Pのレイと、そのポケモンヨノワール。さっきイリス達を突き飛ばしたのは、サイコキネシスだ。
「いえ、私は任務を遂行しただけです」
サーシャは事務的に、しかし少々嬉しそうに言う。
「……偶然とはいえ、ここに英雄さんが来たのは彼らにとっては幸運でしたね」
レイは冷たい氷柱のような声で言う。
「監視の私達の務めはこれで終了。あとはフレイちゃんと、ガイアさんに任せるとしましょうか……」
さて、色々書きたいことはありますが、本編が長いので伝えることだけを言います。まずは黒影さん、アカリを登場させて頂きました。キャラ崩壊などの不備があればお申し付けください。さて次回は夢の跡地の地下です。ゲームクリア後に行けるあそこですね。まあそんなに長くはならないでしょう。次回もお楽しみに。