二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 335章 三つ子 ( No.404 )
日時: 2011/10/28 21:41
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「任務は達成か……」
ガイアは戦闘不能のハサーガをボールに戻すと、通信機から聞こえる下っ端の声に、そう呟いた。
「ともすれば、もうここに用はないな」
ガイアはボールからガルダポケモンのガルラーダを出し、フレイを抱える。
「だがしかし、貴様には言っておいたほうがいいな」
ガイアはすぐに撤退するかと思いきや、イリスには何かあるようだ。
「我らがここに来た理由を、貴様に教えておいてやろう」
「ここに来た、理由……?」
「ああ、我らはここに、エネルギーを採取に来た」
ここ、夢の跡地地下は、もとは夢のエネルギー研究所。なら、どんな形であれ膨大なエネルギーが眠っているだろう。
「貴様らから奪った、境界の水晶。あれは混濁の使者、キュレムを復活、操作する事が出来る代物だが、しかし、復活はともかく操作には膨大なエネルギーが必要で、まだ起動していないのだ」
だからそのためのエネルギーを、プラズマ団はこの研究所に取りに来たようだ。
「アシドの見立てでは、冬が明ける頃にはエネルギーは満ち、キュレムの復活、操作ができるようになるそうだ」
冬明けといえば、まだ先だが、それでも近い。
「我らがここに来た理由はそれで全て……それと、これを返そう」
ガイアは軍服のポケットからモンスターボールを一つ取り出し、イリスに投げる。そのボールは、スポッとイリスの掌に収まる。
「これは……?」
「貴様の弟子のポケモンだ」
「ミキちゃんの?」
ガイア曰く、このボールにはミキが一匹だけ奪われたポケモンが入っているようである。
「それを返す。アシドは興味深かったと言っていたぞ。古生代ポケモンの製造も進み、貴様らのことも少なからず理解した。まあしかし、そのポケモンはその代償を負ったがな」
「っ!お前!」
イリスは激昂するが、ガイアは構わず言葉を発する。
「あまり騒ぐな、英雄。そのポケモンは、もうかのポケモンでなくなっただけだ、別に障害を持ったとか、そういうわけではない。だがしかし、世界に広がる無限の可能性と、ポケモンに秘めたる秘密が、明らかになったとでも言おうか。……ガルラーダ、飛べ」
ガイアは全てを話し終えたらしく、ガルラーダに背を掴ませ、飛び立つ。
「待て!」
イリスとアカリはボールを構えるが

「ストータス、煙幕だよー」

いつの間にかフレイはストータスを出しており、ストータスは鼻や甲羅の穴から黒い煙幕を張って、二人の視界を塞ぐ。
「くっ、前が見えない……!」
煙幕が晴れると、ガイア達はもう既に空の彼方へと消えていた。ストータスも、いつの間にかボールに戻されている。
「……取り逃がしてしまいましたね」
「そう、ですね……」
その後、二人は壮絶に迷いながら、夢の跡地地下に広がる研究所から脱出したのであった。



アカリと別れた後、イリスはサンヨウジムを訪れた。
「やあ、久しぶりだねイリス君」
「再び相見えるとは、思いもしませんでした」
「俺はお前と戦ってないけどよ、見るからに強くなったっぽいな」
ジムで待ち構えていたのは、ウエイターの格好をした三人の少年。
一人は緑色の髪に穏やかな雰囲気を醸し出している少年、デント。
一人は水色の髪で右目を隠している知的な少年、コーン。
一人は赤色の髪で熱く元気な少年、ポッド。
サンヨウジムの、三つ子のジムリーダーだ。
何故ジムリーダーが三人いるかというと、このジムは相手のタイプに合わせ、その弱点を突けるようジムリーダーが三人いるのだ。
イリスが最初に制覇したジムでもあり、イリスは草タイプ使いのデントと戦った。
「御三方、お願いがあります」
「何かな?」
デントがニコニコ顔で訊いてくる。
「噛み砕いて言いますが、僕とバトルしてください。ジム戦ではなく、非公式でもいいので」
イリゼとのバトル条件。イッシュのジムリーダー、四天王、チャンピオンを再び全員倒すこと。
それの、最初の一歩だ。
「まあ、今はチャレンジャーもいないし、それは構わないけど……なら、誰と戦う?」
「全員と、戦わせてください」
『!』
イリスの言葉に、三人は驚いたような顔をする。
「……そうか、遂にこの時が来たようだ……」
デントは顔を伏せ、呟く。なんだか怖い。
「いまだかつて誰も成し得なかった偉業、彼ならもしや、達成できるやもしれませんね」
コーンは落ち着いてはいるものの、しかし興奮を隠しきれていない。
「熱いな……熱いな!」
お前がな、とイリスは心の中でツッコむ。
「イリス君、ちょうど君達が僕らと戦った後、僕らは一つ、とある企画を企てたんだ」
「企てたって……」
悪巧みのようだ。
「名付けて『サンヨウジムトライアルバトルフルコース』。このジムで最も過酷なバトル方式です」
長ったらしい名前である。
「このフルコースは、設立してから誰も成功してねぇ、掛け値なしで難関だ。それをやるからには、覚悟しとけよ」
まだやるとは言っていない。
だがしかし、もう三人はやる気満々だ。
「ルールを説明すると、君は僕ら三人と三連続でバトルをするんだ。方式は二対二を三セット。一度でも君が負ければ、その時点で終了だ」
「へぇ、意外と普通ですね」
つまりは勝ち抜き戦というわけか、とイリスは理解するが、デントの説明は終わらない。
「いや、このフルコースが最も難関なのは、そこじゃない」
デントはさも恐ろしい物を見るかのような目で言う。
そしてそれは、本当に恐ろしかった。

「君は、一体もポケモンを戦闘不能にしてはいけないんだ」



今回はバトルのない回でした。ガイアはプラズマ団が境界の水晶のエネルギーを充填するために動いていることを明かし、去っていきます。さらに今回は、なつかしのあの三つ子が登場です。イリスはサンヨウジム最難関のバトル、『トライアルバトルフルコース』を、半強制的にやることとなります。一体もポケモンを戦闘不能にしてはいけない過酷なルールで、イリスはかの三つ子達と再び(なのはデントだけ。他の二人は初めて)バトルを執り行います。ではそのバトルは次回から、お楽しみに。