二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 16章 風習 ( No.42 )
- 日時: 2011/07/31 20:24
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: GSdZuDdd)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
カゴメタウン。
ポケモントレーナーから見れば、ポケモンセンターがあるだけの小さな町だが、この町の人々は昔からの風習を守り、規則正しく生活している。
この町では昔から、夜になると化け物が襲ってくる、という言い伝えがあり、今でもその言い伝えを信じて夜に出歩く人はいない。
「……チェレンに出会った次は、ベルか。どうにも、僕の情報が隠匿されるという事はなさそうだな」
イリスは町のポケモンセンターで幼馴染のベルとばったり出くわし、溜息を吐く。
「で、ベル。君も僕を連れ戻しに来たのかい?」
「ん? いや、あたしは全然そんなつもりはこれっぽちもないよ。ただまた旅に出たくて旅に出て、こうして出くわしただけ」
「そうか、そえならいいや」
ベルは嘘をつかない……いや、嘘を知らないとでも言うべきか。ともかく、ベルの言葉は信用できるのだ。
「それでイリス。そこにいるのってNだよね? それにこの人は?」
「ああ、それは……」
事情説明&自己紹介中
「と、言うわけだ」
「へえ……。いろいろあったんだね」
ベルはどの程度理解しているか分からないが、とりあえず大体のところは大雑把に噛み砕いて理解しただろう。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
その場にいる全員が黙りこくってしまう。
(やる事がない……)
イリスは心の中で呟く。この場に四人もの人がいるというのに、誰もアクションを起こさない。
(何かないのか……?)
イリスはそう思って周りを見渡す。しかしそう都合よく……
「あ」
あったようだ。
イリスはポケモンセンターに備え付けられてある本棚に向かうと、そこから本を一冊抜き取る。
「どうしたんだい、イリス?」
N達がイリスの傍に寄ってくる。
「いや、これ」
イリスが見せたのは、神話だった。だが、神話と言ってもカゴメタウン限定の、どちらかというと歴史書のような物。
「背表紙に『大穴に潜みし氷の龍』って書いてあるのを見て、気になって」
今イリスが開けているページには、こう書いてある。
カゴメの裏の大穴にて、氷の龍封印される。
強き封印は解ける事なし、氷の龍の力及ばず。
だが封印、夜になりて力落ちん。
月より力を吸収される事。
夜になりて外出るものは、氷の龍の妬みに当てられ、怒りを買う。
『我、外界へと出れず。自由なものを凍てつかさん』
氷の龍の心、他者の心身を凍てつかす。
これにより、夜になりて外出たならば、氷の龍の凍てつきに遭う。
カゴメの者は氷の龍に見張られる。
カゴメの者、夜にてその出れば、凍てつく死は免れん。
死を恐れる者、夜になりても外に出るべからず。
出れば最後、氷の龍は怒りけれ。
「……つまり、カゴメタウンの裏には大穴があって、そこには氷の龍が封印されている。その龍は封印されているから外に出れないけども、近くにある町、カゴメタウンを見張っている。そして夜間は氷の龍の封印が弱くなって、カゴメの人が外に出れば、外に出れない氷の龍の妬みと怒りを買って凍らされると。だからカゴメの人は夜には外に出ないように。出た場合は死は免れない、という事らしい」
イリスがサラッと翻訳する。
「この氷の龍がなにか気になるな……他に本はないのか……?」
イリスは神話を戻して新しい本を取り出そうとする。
その時だった。
ズガァン!という爆発音が聞こえ、人々の悲鳴やざわめき声が聞こえてくる。
「!なんだ!?」
四人は慌てて外に出ると、続けて何回か爆発音が響き、町の各所に煙が上がる。
「何があったんですか?」
イリスは逃げ惑う人の中で、比較的落ち着いている男声に訊ねる。
「プラズマ団とかいうおかしな連中がいきなり襲ってきたんだ!」
「君達も早く逃げたほうがいい」と男声は言い残して逃げていった。
そしてここにいる四人は、プラズマ団と聞いて逃げ出すほど臆病ではなく、むしろプラズマ団と聞いては駆けつけずにはいられない。
そういうわけで、四人は人々が逃げるのとは逆の方向に向かっていく。恐らく、そこにプラズマ団がいるだろう。
イリス達はプラズマ団を見つけることができた。しかし、それはただの下っ端の軍勢で、恐らく本隊ではないだろう。
「でも、ここを突破しなきゃ先には進めない……!」
イリスがそう言って歯軋りをすると、N、シザンサス、ベルの三人が前に出る。
「N、シザンさん、ベル……?」
「ここは僕らが受け持つよ」
「イリス君は先に行って」
「あたし達は大丈夫だから」
三人は口々にそう言うと、それぞれポケモンを繰り出した。
Nが繰り出したのは黒い猫のようなポケモン、黒猫ポケモンのシャミネ。
シザンサスが繰り出したのは先端がキノコのようになっているレイピアを持った足の生えた赤いキノコのようなポケモン、キノコポケモンのサムラダケ。
ベルが繰り出したのは全身が液体でできている宇宙人のようなポケモン、液体ポケモンのアクタシ。
「シャミネ、炎の渦!」
「サムラダケ、リーフブレード!」
「アクタシ、熱湯!」
N、シザンサス、ベルの三人は下っ端を蹴散らしていく。三人がかりとは言え、敵の人数はかなり多い。下手すればやられる可能性もある。
しかし、イリスは信じる事にした。
「三人とも……ここは任せた!」
イリスは下っ端の群れを掻き分け、先へと進む。
ふうむ、前回のあとがきで何かの前振りをしましたが、今回出せませんでした。今回はベルが登場し、前作のラストでちょこっと触れた氷の龍も出てきましたね、本の中で。流石に氷の龍がなんなのか、もうお分かりでしょう。では、次回は遂にあの人たちが出てきます。期待しない程度に、お楽しみに。