二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 375章 自爆 ( No.472 )
- 日時: 2011/11/18 21:08
- 名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
イッシュ最大のショッピングモール、『アールナイン』が鎮座する9番道路。
その大通りからやや外れた道に、これでもかというスピードで疾駆する影が一つ、二つ、三つ。そしてそれらを追うように四つ目。
「くっそ、中々しぶといぞあいつ……どうするよ!」
「どうもこうもねぇ!全力で振り切るしかないだろ!」
「それができたら、あたし達はこんなに苦労してないと思うけどねー」
最初の三つの影は、何を隠そうプラズマ団。それもその幹部である、7Pと呼ばれる者達だ。
先頭を走るのは紫色の髪に白衣を着た青年、アシド。彼はジバコイルに乗り、その磁力を利用して二つの鉄の棒を楕円の体に引っ付け、それを強く握って振り落とされないようにしている。
次に続くのは緑色の髪の男、フォレス。こちらは普通に飛行タイプのポケモン、コクジャクの足に掴まって飛んでいるのだが、物凄く辛そうだ。
最後尾は赤い髪を長いポニーテールにし、浴衣を着た少女、フレイ。彼女は足を折り畳んで浮遊状態となったメタグロスの体に、うつ伏せでしがみついている。
「ちっ、出遅れたのが不味かったか……」
「最近見なかった英雄に見つかっちまったのが、運の尽きか」
アシドとフォレスがぼやく。
そう、今この三人を追いかけているのは、英雄ことイリス。イリスはリーテイルの背中に乗り、超高速低空飛行で追跡している真っ最中なのだ。
ちなみに彼はあまりの風圧に声をあげられず、目もかなり細めている。
「でもこれ、掛け値なしでやっばいね……アシド、フォレス、もうすぐポイントに着く頃だよー?」
「そいつは好ましくない情報だな……どうするよ、アシド」
「僕に振るな……しゃーない。こうなったらあとは各自でなんとかするってことで、あの雑木林に入るぞ!そこで撒け!」
アシドの提案に二人は異論はないようで、三人は近くの雑木林へと突っ込んでいき、それぞれ別方向に逃げていった。
「なっ……各自で逃げるのか。リーテイル、とりあえず前進!」
イリスも雑木林に入り、風圧がやや小さくなってリーテイルに指示を出す。
リーテイルはその指示通りに全速前進——フレイが逃げた方向へと追跡する。
「わーお、自称天才(笑)のアシドとキャラが微妙に薄くなりつつあるフォレスを差し置いてこの可愛いフレイちゃんを追ってくるなんてー。残念ながらサインはあげられないよー」
「いらないうるさい黙れ止まれ!」
リーテイルは速度を落とさず全力でメタグロスを追うが、しかしメタグロスのスピードも思いの外速く、なかなか追いつけない。
とイリスが思っていたら、ふと目の前に光が——
ドガァン!
そんな轟音が鳴り響き、イリスの目の前には濛々と舞う砂煙。そして崩れた岩肌。
リーテイルは急ブレーキをかけて停止。イリスは地面に降り、状況を整理。要約すれば
フレイが目の前の崖に突っ込んで激突した。
ということになる。
「大丈夫か……?」
いくら敵といえど少々心配である。
砂煙が晴れてくると、まず最初に見えたのはメタグロス。メタグロスは流石というべきか、その鋼鉄の体には傷どころか痣一つない。
だが続けて見えてきたもう片方が、凄い有様になっている。
「おぉ、いつつ……あー、凄い痛いなー」
間延びした口調で、緊張感の欠片もない声だが、しかしその姿は危機的だった。
まず体。全身——見える範囲内でも、腕やら脚やらに無数の擦り傷がある。そして最も重要な頭からは、ドクドクと血が流れていて、今すぐにでも病院に行く必要があるだろう。
「ふぅ、英雄は追ってこないか……ってフレイ!? お前大丈夫か!? かなりグロッキーなことになってるぞ!?」
雑木林から飛び出したのは、イリスが追ってこないと察して出たフォレス。フォレスはすぐにフレイに駆け寄る。
「あーフォレス、エレクトロかガイアか、誰かに言伝一つー」
「な、なんだ?」
「あたしもう帰るー。ちょっとこれはメインヒロインにあってはならない状態だと思うんだよねー」
「いやその状態は誰であってもあってはならないと思うぞ。そして恐らくお前はメインヒロインではない」
「つーわけで、じゃあねー」
フォレスのツッコミを無視して、フレイは去っていった。
初っ端から幹部が一人退場。しかも自爆。
【何事ダ……】
突如として、近くの岸壁に開いていた穴——恐らくは洞窟だろう——から、一つの人影が姿を現す。
いや、それは人の形をしているが、人かどうかを疑うように奇怪な声を発していた。
「おお、ドランか……フレイが帰ったぞ、頭から血を流して」
【ソウカ】
出て来た人影——7Pであるドランは何ということもなくそう返した。
「さっきから次から次へと、忙しい連中だな」
【英雄……】
ドランは顔面が完全に隠れたフードから、イリスを見据える
【『フォレス』、下ガレ】
「あ?」
【状況ヲ察スルニ、英雄ガ攻メ込ンデ来タノダロウ。貴様ハ岩場デ暴レテイル者ドモヲ相手ヲ要求スル】
「別に構いやしないが……大丈夫なのか?」
「全然大丈夫だよ」
突然、ドランの声が変わった。それは少年のような少女のような、どちらにせよまだ変声期を迎えていないような子供の声だった。
そしてもう一つ。ドランの顔を覆うフードの中から、濁った藍色の光が漏れている。
「……解放するってことは、それなりに本気なんだな」
「そういうこと。さあ、ここはドランに任せて、フォレスは行って」
フォレスはドランの言葉に多少踏み留まったが、最終的には洞窟の中へと走り出していった。
「……なーんか、偶然見つけたプラズマ団を追ってみたら、思わぬ大事件に発展しているような気がしなくもないな」
イリスはリーテイルに構えさせ、ドランを睨むように見据える。
これが、救世主達が育てた弟子を巡る戦の、幕開けだった。
さあ、今回はバトルのない回でした。そしてこれを書いていて気付きましたが、最近、どうも7P達の出番が少ないです。まあ最近までずっと再戦シリーズを書いていたからしょうがないのですけど。今回出て来たのは岩壁に激突して負傷し帰ったフレイと、フォレスにアシド。アシドはどこに行ったのやら。もしかしたら忘れ去られるかもしれませんね。そして最後に登場したが、解放までしたドラン。ドランは口調が鬱陶しいので登場頻度が低めですが、解放すればそうでもない。そしてこれがイリスとドランの初バトルですね。というわけで、次回をお楽しみに。