二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 376章 顔面 ( No.473 )
- 日時: 2011/11/21 16:17
- 名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「天空に臨め、ドラドーン!」
ドランの一番手は、初っ端から切り札と思しき大型のドラゴンポケモン、ドラドーン。
その大きさはイリスが今まで見てきたどのポケモンよりも大きい。モスギスのティラノスよりも、ガイアのハサーガよりも、リオのドラドーンよりも、どのポケモンよりも巨大なポケモンだ。
そう、上空に広がる天空を覆い隠してしまうほどに。
「この大きさは反則級だな……リーテイル、やれるか?」
イリスは相性的に不利なリーテイルにそう呼びかけると、リーテイルはコクリと頷いた。不利でも、やる気はあるらしい。
「よし、だったら弱点を攻めていくぞ。ドラゴンビート!」
リーテイルは息を大きく吸い込み、龍の鼓動のような音波を、咆哮としてドラドーンに放つ。
ドラドーンは巨体なため、その音波をかわせず直撃を喰らったのだが
「効いていない……!? いや……」
ドラゴンビートは効いていはいるはずだ。しかしそれをものともしないほどに、ドラドーンが超然としているというだけである。
「ふうん、思ったほどじゃないね」
「っ……リーテイル、もう一度ドラゴンビート!」
リーテイルは再度音波を咆哮として放ち、ドラドーンに直撃させるが、やはりドラドーンは動じない。
「んじゃ、そろそろこっちの番。ドラドーン、ハイドロポンプ!」
ドラドーンは空中からまるで滝のような、しかし滝なんかとは比べものにならないほど激しい水流を噴射する。
「リーテイル、回避だ!」
リーテイルは急いで後ろに跳び、その激しい水流を回避。水流が直撃した所を見てみると、クレーターのような大きな窪みが出来ており、水も溜まっていてまるで滝つぼのようだ。
「そんな破壊力ありかよ……リーテイル、あの攻撃は喰らったらやばい。ここは大技じゃなく、地道に削っていこう。……エアスラッシュ!」
リーテイルは背中の葉っぱを羽ばたかせ、空気の刃を無数に飛ばす。
飛ばされた刃のほとんどはドラドーンを切り裂いたが、それでもやはり、ドラドーンは怯まない。
「ドラドーン、エアスラッシュ!」
ドラドーンも単発の空気の刃を飛ばす。そのスピードはリーテイルのものよりも格段に速い。
「かわせ!」
リーテイルは素早く横に移動し、その刃をかわす。刃はそのまま地面に向かっていき、どこまで行くのか、深々と地面を切り裂いていった。
「一撃一撃の攻撃力高すぎるだろ……リーテイル、もう一度エアスラッシュ!」
「アイスバーン!」
リーテイルは再び空気の刃を無数に飛ばすが、今度の刃は全て、ドラドーンが引き起こした氷の爆発による衝撃波で粉砕されてしまった。
「このまま行くよ、龍の波動!」
そしてドラドーンは口内に龍の力を溜め込み、それを波動としてリーテイルに放つ。
「回避だ、リーテイル!」
リーテイルは後ろに下がってその波動をかわそうとするが
「無駄無駄、そんな簡単にかわさせないよ」
龍の波動は地面に当たって消える——その直前に、軌道を変えた。
「な……っ!?」
軌道が変わったといっても大差はない。ただ後ろに下がったリーテイルを追ってきただけなのだが、回避行動を起こしたばかりのリーテイルでは、さらに回避を行う事もできない。
「くっ、しょうがないか……リーテイル、リーフストーム!」
リーテイルは避けられないなら迎え撃つという考えで、大量の葉っぱを嵐のような怒涛の勢いで向かい来る龍の波動へと放つ。
リーフストームと龍の波動が競り合い、互いに一進一退の押し合いを始める。両方の威力は互角で、この先は気力の勝負となった。
——ということはなく、結果はあっさりとしていた。
リーフストームが、いとも容易く龍の波動に突き破られたのだ。
「……っ! リーテイル!」
そして勿論、リーフストームが突き破られればその波動はリーテイルに向かって行くわけで、リーテイルはその破壊力抜群の波動の直撃を喰らって吹っ飛ばされ——戦闘不能となった。
「リーテイルが……一撃で、戦闘不能……!?」
流石にこの異常なまでの攻撃力に、イリスは驚かざるを得なかった。リーテイルは確かに、高い防御力を持っているとは言えるほど打たれ強くはないが、しかしだからといって、技の一撃で戦闘不能になるほど耐久力が低いわけでもない。
「あっれー? おかしいなー。一撃でやっちゃったら面白くないと思って、本気で手加減したんだけどなー」
イリスを嘲笑うようにくすくすと笑うドラン。顔が見えないので笑っているかどうかは不明だが、笑い声は聞こえる。
「ま、君とドラン達じゃあモチベーションというか、気合の入れようというか……そう、覚悟が違うんだよ」
ドランは笑うのを止めると、真剣な口調で、しかしそれでもどこかおどけた雰囲気で、イリスに語りかける。
「君らがなんでドラン達の邪魔をするのかとか、そーゆーのはよく知らないし知る気もないけど、こっちは全力で、本気で、懸命に取り組んでるんだよ」
「……それは、僕らも同じだ」
負けた手前、強気には出れないのだが、イリスはそう反論する。
「僕らだって、お前らに世界を支配させまいと、本気だ」
「ふうん。君らがどのくらい本気かは知らないけど、そこまで言うんならそうなんだろうね。少なくとも、ドランと同じくらいの覚悟はあるんだよね?」
そう言いながらドランは自分の顔を覆うフードを掴み、ゆっくりと持ち上げた。
つまり、自らの顔を晒した。
「……!」
イリスはドランに刻まれている刻印が、顔にあるだろうことは予測していた。解放する時、フードから光が漏れていたのを見ても分かるだろう。なので頬や額なんかに刻印があるのだろうと思っていたが、違った。というかそもそも、根本から違っていた。
まず、ドランには顔がなかった。
そしてその代わりと言わんばかりに、ドランの顔面には怪物のような顔が、刻まれていた。
顔がないといってもそれは比喩のようなもの。ちゃんと顔に凹凸はあるし、目がある部分には目が、鼻がある部分には鼻が、口がある部分には口が、それぞれある。しかしそれらは全て堅く閉じられており、それを隠すようにそこには各部位の刻印が刻まれている。
言うなれば、刻印が顔、とでも言うのか。
「ま、こんなとこかな」
ドランはフードを下ろしてから、軽い口調で言った。
「さて英雄ちゃん、君にはこれほどの覚悟があるのかな? 忠誠を捧げるために、無理矢理人の形にさせられた龍像が、自らの顔を喪失するほどの覚悟が」
軽い口調のドランの言葉は、イリスに重くのしかかった。
今回はイリス対ドランのバトルですが、ドランのドラドーン、強すぎます。破壊力が半端ないです。そして遂にドランの刻印がある場所が明らかに。結構グロッキーな設定ですが……いや、これ以上言うのは止めよう。ドランの設定については、今後明かしていきます。では次回もイリス対ドランの続きをやるか、もしくは違う場所に移るか……まあ何にせよ、次回もお楽しみに。