二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 377章 人質 ( No.474 )
日時: 2011/11/21 18:49
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「ほらほらほら! もっとキビキビ動かないと、あっと言う間にやられちゃうよ! 龍の波動!」
「くっ……!」
イリスはドランの刻印に動揺しながらもとりあえず次のポケモン——今戦っているのはディザソル——を繰り出し、ドラドーンと交戦する。
「エアスラッシュ!」
ドラドーンの空気の刃が放たれ、ディザソルは後ろに下がって回避する。
「ディザソル、辻斬りだ!」
ディザソルはドラドーンに素早く接近し、漆黒の刃でその巨大な体を幾度と切り裂く。
だがドラドーンの耐久力は、体と比例して半端なく高い。なので早々やられたりはしない。
「怒りの炎!」
「効かないよ、ハイドロポンプ!」
ディザソルが怒り狂ったように燃え盛る憤怒の炎を放つと、ドラドーンも超高圧の水を物凄い勢いで噴射する。
炎と水では必然的に水が打ち勝つ。だがもし相性などなくとも、また相性でディザソルが勝っていたとしても、ドラドーンの攻撃を止める事はおろか、相殺すらできないだろう。
それほどに、ドランのドラドーンの攻撃力は高いのだ。
「んー……なーんかつまんないなぁ……」
ドランはイリスの実力に不満があるのか、そんなことを言い出した。
「フレイにエレクトロは君のことを結構買ってたみたいだけど、ドラン的には微妙、というかまるっきり相手にならないかな」
うるさい、とイリスは内心で毒づく。
「んー……なら、こうしよっか」
ドランは余裕綽々で、名案とばかりに口を開く。本当に開いているかは不明だが。
「ドラン達プラズマ団がここ、修行の岩場と呼ばれる場所に来ている理由を今から君に教えるよ。それを教えれば君はきっとドランを倒すことに必死になるし、そうなればドランは君とのバトルが楽しくなる。君はドラン達の情報をゲットできて、ドランは君との戦いを楽しめる。実に画期的なアイデア!」
ビシッと人差し指をイリスに突きつけてドランは言う。
確かにそれはイリスにとって都合の良い話なのだが、それと同時にドランが自分の実力に相当な自信があることも窺える。
まあしかし、何を言おうとドランは止まらない。
「今プラズマ団は、結構てんてこ舞いな状況なんだよ。君がいつぞやの救世主なんかを呼び覚ましちゃったもんだから、あの子らプラズマ団のことを探って探って、いざとなったら攻撃を仕掛けて来るんだよ。そこお陰でイッシュにいくつか散らばってた小さな基地のほとんどが壊滅状態。下っ端も相当数やられちゃって、割とプラズ
マ団はピンチだったりするんだよね」
軽い口調だが、どこか憂鬱な感情が受け取れる発言だった。
「ま、そういうわけで、プラズマ団はその救世主達の対抗策を講じているとこ。その対抗策っていうのが、ベタだけど人質作戦」
「人質?」
「そう、人質。正確にはポケモンだけどね。知ってるかな? 救世主達には弟子がいるらしくてね、その弟子の住処がここ、修行の岩場らしいんだよ」
ドランは後方を指差す。少し前にフォレスが入って行った穴だ。
「だからドラン達はその救世主の弟子を捕獲して、救世主達に突きつける。こうすればあの子らも迂闊に身動きはできない。……ま、ドランが話せるのはこんなとこかな。ドランはただの見張りだから、詳しい作戦とかは知らないんだ」
確かにそれはまごうことなき人質作戦だ。今時ベタなほど単純だ。
だが単純だからこそ、その悪意も理解しやすい。
「どう? やる気でてきた?」
「……ああ、お陰様でな。ディザソル、神速!」
ディザソルは神の如き超スピードでドラドーンに突っ込み、突撃する。
勿論ドラドーンは全く動じず、ディザソルは深追いせずにすぐイリスのもとへと戻る。
「そんなベッタベタのくだらないこと考えてるっていうなら、潰さないわけにはいかない」
「ふーん、そう。まあやる気出してくれたのは感謝感激雨霰、だけど……やっぱ気合だけじゃ実力はどうしようもないか。てんで弱っちいや」
「…………」
それはドランの言う通りで、イリスは何も言い返せない。
実際、ディザソルは今まで何度もドラドーンに攻撃を仕掛けているが、ドラドーンはそれでやられる気配などは微塵も見せなかった。勿論さっきの攻撃でもだ。
「ま、さっきよりかはマシなんだろうけど、結局は大したことない、か。期待外れと言うか何と言うか……英雄って大したことないんだね」
嫌味でも挑発でもない、本心からドランは言う。イリスはたかが敵の言葉と思い、否定はできないが適当に受け止める。
しかし、どうやら否定する者もいたようだ。
「っ!? ドラドーン!?」
不意にどこからか銃弾のような小さな炎がいくらか放たれ、ドラドーンを襲う。
炎技がこのドラドーンにさしたるダメージを与えられるとは思わないが、しかし不意討ちだったためか、その攻撃は予想よりも効果があった。
「その発言は否定せざるを得ないかな。そういうことで、前言撤回を要求するよ」
いきなり放たれた炎の位置と、今し方聞こえてきた少女の声の位置は、同じだった。その方向——岩壁の上——へと視線を移すと、そこには見慣れた風貌の少女。
「ミキちゃん……!?」



今回はイリスとドランのバトルもありましたが、ほとんどは会話でしたね。ドラン曰く、プラズマ団は救世主、つまりコバルオン達の動きを制限するために、コバルオン達の弟子を捕獲して人質(人というかポケモン)にするという今時珍しいベッタベタな作戦です。そしてラストでは、これまた懐かしいと感じるミキの登場。というわけで、次回もお楽しみに。