二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 378章 撤回 ( No.480 )
日時: 2011/11/22 00:05
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「話は聞いたよ。師匠の酷評は弟子の酷評。今の発言は聞き捨てならない」
岩壁の上にいるのはイリスの弟子でもあるミキ。そしてドラドーンを攻撃したのは、その側で飛行しているゴルドーだ。
ミキは慣れた動きで傾斜になっている岩壁を滑り降りる。
「えーっと……確か英雄ちゃんのお弟子ちゃんだっけ? フレイが何か言ってた気がするなー……」
「そんなことはどうでもいいよ。私の要求はただ一つ、さっきの発言を撤回して欲しい。それだけ」
「さっきって?」
「『ま、さっきよりかはマシなんだろうけど、結局は大したことない、か。期待外れと言うか何と言うか……英雄って大したことないんだね』……この中の主に、『英雄って大したことないんだね』の部分かな」
ミキは一言一句、口調までも再現して言う。
「撤回ねぇ……まあ教育指導の行き届いてない悪ガキよろしくの精神で撤回するのは簡単そうだけど、それじゃあ許してくれないよね?」
おどけた調子でドランは言う。
「いやはや英雄ちゃんも割と勝ち組だねぇ、フォレスとは大違いだ。大分この可愛いお弟子ちゃんに好かれてるっぽいじゃん。尊敬、敬愛……さらにその上かな?」
「弟子が師匠を尊敬するは当たり前。その師匠が罵倒されたっていうなら、それを撤回するまで私はあなたを許さないよ」
「ふーん。だったら、どうするの?」
ミキはドランの言葉に、行動で答えた。
イリスとドランの間に割って入り、ゴルドーに構えさせる。つまり、臨戦態勢。
「……師匠、行ってください。もし今の状況で救世主達が無力化されては、圧倒的に私達が不利になります。それにその人質は私達にも有効でしょう。この7Pの相手は私がしますから。だから、師匠は行ってください」
「断る」
イリスは即答し、ミキを押しのけて前に出る。
「こ、断るって……」
「ああ、断る。不許可だ。こいつの相手は僕がやるから、行くなら君が行ってくれ」
「でも——」
ミキが言葉を発しようとするのを、イリスは手で制す。
「ここは僕にやらせてくれよ。弟子に励まされるなんて格好悪いとこ見せちゃったわけだし、その清算くらいはさせてくれ。ここは僕の顔を立てると思ってさ」
そう言われてしまえば、弟子であるミキは何も言い返せない。
だがミキは後退するでも前進するでもなく立ち尽くしている。まだ納得していないのだろうか。
しかしイリスはここでもう一押し、言葉を発する。
「じゃあ、お願いだ。もしくは師匠命令だ。先に行って、救世主の弟子を救出しに行ってくれ」
「……!」
イリスの最後の言葉でミキは駆け出し、一気に修行の岩場の入口に到達。さらに速度を緩める事無く走り続け、やがて闇に消えていく。
「……止めないのな」
「まあねー。プラズマ団は絶対主義者じゃなくて快楽主義者の集まりなんだ。だから皆、不必要な警備なんかで暇してるだろうし、ドランも君と戦いたいし。だから止めないの」
つまり、中にいる他のプラズマ団はバトルがなく暇だから。そしてドラン自身もイリスと戦いたいため、あえて止めないと。
「というかさ、弟子の心配も分かるけどまずは自分の心配したら? このままだとドランとドラドーンが一気に押し切っちゃうよ?」
ドランの言葉に、イリスは嘲笑するように笑った。
「その心配こそ不要だね。弟子に励まされて友情が高まったと思ったら今度は矜持が痛く傷ついた。それを取り戻すためにも、僕は絶対に負けないよ」
イリスはさらにもう一歩踏み出し、ディザソルもそれに続く。
「……そう。なら、見せてもらおうかな、英雄の力ってやつを」



ドランは内部状況について特に何も言わなかったが、だからと言って中に誰もいないわけではない。
この場合の『誰もいない』の誰かは、勿論プラズマ団のことではなく、プラズマ団と敵対する者——そう、例えばPDOの隊員などだ。
「シャンデラ、サイコキネシス!」
強力な念動力が放たれ、そこらじゅうにはびこっていたプラズマ団の下っ端達が一斉に吹っ飛ぶ。ある者は地面に伏し、ある者は壁に叩きつけられ、ある者は水中に身を沈められる。
「ふぅ……下っ端ばっかり無駄に多いのはなんでかな……やっぱ層が浅いから?」
下っ端を蹴散らして自問自答するのは、PDOのリオ。言うに及ばず、イリス達の味方だ。
そしてその傍らに浮遊するのは誘いポケモンのシャンデラ。シャンデリアのような姿のポケモンで、その姿は霊的だが、どこか愛嬌がある。
「ここにいるはずなんだけどなぁ……呼んでも応答ないし。寝てるのかな……?」
リオは首に掛けているネックレスに目を落とす。その目線の先は、ネックレスに吊るされている水色と赤色の毛。見た感じポケモンの毛のようだが、しかしどのポケモンかの判別は、それだけではできない。
「まあ何にせよ、こんな状況になってるなら助けなきゃだけど……」
リオは周囲を見渡す。岩場と称した洞窟内は薄暗く、視界が悪い。さらに地底湖が広がっていて、足場が悪く入り組んでいる。
そんな所に地図もなしに(元より存在しないが)入れば、その構造を把握できず、最終的に自分の現在地も分からなくなるのは当然。
まあつまり何が言いたいかと言うと
リオは道に迷った。
「参ったなぁ……どうやって出ようか。もしくは最奥部に行こうか」
シャンデラの炎が照らす怪しげな灯火を頼りに先に進んでいくと、見慣れた人影が映る。

「道に迷っているのでしたら、私がエスコートして差し上げてもよろしいですが、いかが致しましょうか?」

灯火に照らされて映るのは、7P、エレクトロ。そしてその傍らには、シャンデラほどではないが辺りを照らしている幽霊のようなポケモン、ファントマ。
「……結構よ。道案内なら、この子で事足りるわ」
「左様でございますか。しかしシャンデラは冥界へと誘うポケモン。そのまま人生の最奥部に逝ってしまうのでは?」
「もしそうだとしても、それならあなたも一緒よ!」
リオの叫びとともに、シャンデラの炎がエレクトロへと襲い掛かる。
「おやおや、これはまた、激しい宣戦布告ですね」
しかしその炎はエレクトロを捕らえない。エレクトロはいつの間にかリオの背後に立っていて、さっきまでエレクトロがいた場所は、幻影のような歪みが残っているだけだった。
「ファントマは幻影ポケモン。このように相手を惑わす技が特徴です。いきなり攻撃などという乱暴な所業はせず、手順を踏み、正式な順序で戦おうではないですか」
エレクトロは一歩下がり、ファントマは逆に一歩分前に出る。
そしてそれと同時に、リオはシャンデラとともに、一歩、前へと進む。



なんかエレクトロのキャラが変わってる気がする……久しぶりに書いたので、彼のキャラが思い出せない……まあいいか。今回は色々あってミキが岩場に突入、さらにリオとエレクトロのバトルフラグです。今回は本編が長いのであとがきはこの辺で。次回もお楽しみに。