二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 385章 愛弟子 ( No.499 )
日時: 2011/12/08 00:04
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

”くぅ、人間なんかに、負けるなんて……!”
ケルディオは全身に火傷を負いながら、水面に立ち尽くす。その顔は、遺憾に満ちていた。
「ケルディオ、約束だよ。私の話を聞いて」
ミキはそんなケルディオにできる限り近づき、話を始める。
「最初にも言った通り、君の師匠はもう人間と和解してる。かつての戦争と同じような……もしかしたらそれ以上の、人間とポケモンを巻き込む戦争が、また起こるかもしれない。その戦争を起こさないため、もし起こっても鎮めるために、君の師匠は私達に協力している。それに今、君の師匠の一匹は、私を助けて、君を呼びに行かせるために、不利な状況で戦ってる。君は、それを見過ごしていいの?」
”その言葉が、どこまで信用できるのかな? 誰が保障してくれるんだい?”
ケルディオの屁理屈じみた返答に、ミキは怒りを募らせる。
「これは本当のことだよ。信用問題なんてよく知らないけど、信じてもらうしかない。誰も保障はできないかもしれない」
”だったら論外だ。そんなんで、よく僕を説得しようなんて思ったもの——”
プツリと、ミキの中で何かが切れた。
「ああ、もうっ! 何で分かんないのかな! 何で君には自分の師匠が戦って、苦しんで、傷ついてるのが分からないのさ! 紛いなりにも自分の師匠なら、そうでなくても意思疎通ができるのなら、自分の師のことが何で分からないの!?」
ミキは、叫んだ。力の限り、胸中の怒りと感情をぶちまけるように、叫んだ。
「少なくとも私は分かるよ。今、私の師匠は戦ってる。それも凄い強敵と。しかもその理由は、君を守るため。私なんてまだ子供だから、自分の意思が全てで動いてなんかいない。師匠が身体張って君を守ろうとしてるから、私もこうして、身を持って君に協力を仰いでるんだよ」
”…………”
ケルディオは、押し黙った。ミキの剣幕に気圧されたのもあるだろうが、それ以上に反論のしようがない言葉の羅列に、言葉が出ない。
「……まあ、つい勢いで色々言っちゃったけど、私が言いたい事はただ一つ……いや二つかな」
ビッと、二本の指を立ててケルディオに見せつけるミキ。
「一つ、自分の師匠を今から助けに行く。二つ、私達に協力してください」
一つ目は命令、二つ目は懇願という、同じ命令形でありながら位の違う要求を、ミキはした。
”……分かった。一つ目は、君の言う事を信じよう。それで一つ目が本当で、師匠が助かったなら、僕は君らに協力する。それでいいかい?”
不承不承、仕方なくと言った感じで、ぶっきらぼうにケルディオは答えた。
「うん、ありがとう」



「そろそろ、バテてきたね」
”黙せ。お前には関係ない”
「いいや、関係大アリだよ。君の体力が尽きれば、それは即ち僕の勝利だからさ」
ソンブラとコバルオンの戦いは、コバルオンが圧倒的に劣勢だった。
まず相手が悪い。相手は炎タイプを持つフィニクスだ。鋼タイプのコバルオンでは、攻防共に不利である。
さらに悪いのは、種族だ。フィニクスが飛んでいるのに対し、コバルオンは地に足を着けている。生物は基本、上が死角になっているので、つまり上空への攻撃は繰り出しづらいのだ。
以上の要因により、コバルオンは窮地に立たされていた。
「さて、そろそろ終了だ。フィニクス、テラブレイズ!」
フィニクスは翼の炎をより一層燃え上がらせ、灼熱の業火を放つ。
”くっ。我が命、散って絶えども、無にして散らん!”
コバルオンは、要約すれば『ただでは死なぬ』と呟きつつ、鋼の波動を解き放つ。
灼熱の業火と鋼の波動は真正面からぶつかり合い、激しく競り合う。しかしそこは相性の悪さが出た。波動が業火に押されつつある。
”ぐ、うぅ……!”
コバルオンは決死の思いであらん限りの力を放出するが、フィニクスの業火は弱まる気配がない。
このままコバルオンが焼き尽くされる、その時だった。

大量の水がフィニクスに直撃し、業火が消えて波動がフィニクスを貫いた。

「っ!? フィニクス!」
ソンブラは地面に落ち、瀕死寸前のフィニクスの下へと駆け寄る。
”師匠!”
洞窟の奥から、幼い少年のような声が響く。コバルオンは咄嗟にその方向へと首を曲げると、そこには久しい若駒の姿があった。
”ケルディオ……来たか”
コバルオンはあくまでも冷静に振舞っていた。さっきまでの疲労感はおくびにも出さない。
”英雄の弟子よ、すまないな”
「いいって、気にしないで。それより、ほら、私の言ったこと本当だったでしょ?」
”うん、そうみたいだね……”
ミキとケルディオのやり取りに、コバルオンは首を傾げる。
だがすぐに、今は戦闘中なのを思い出し、ソンブラの方へと向き直るが
”むっ、逃げる気か!”
ソンブラはフィニクスをボールに戻し、新たなポケモン、ラプラスを出して水上へと移動していた。
「まあね。流石に三対一で勝てると思うほど、僕は自惚れちゃいないし。それに英雄の弟子が君らに協力しちゃったんじゃ、この作戦は失敗だよ。だったら無駄に長居せず、撤退するよ」
そう言い残すと、ソンブラはラプラスと共に水上を進んでいき、ほどなくして姿が見えなくなった。
”師匠!”
”分かっている。今回はテラキオンとビリジオンも来ている。奴らも相当苦戦しているのだろう……我は洞窟の地を駆けて移動する。お前は水上から奴を追え”
”分かりました!”
「じゃ、私は空から動くとしようか。フィニクス」
ケルディオは水面に立ち、ミキはフィニクスの足に掴まる。
コバルオンは地を蹴って洞窟の奥へと消え、ケルディオはミキと共に水面の上を駆ける。



今回はケルディオとの和解、そして師匠その一を救出です。ミキが珍しくキレました。それから、ケルディオがかなり捻くれたキャラになってしまいました。ケルディオ好きの皆さん、ごめんなさい。さて次回はテラキオンとビリジオンの救出。そしてあわよくば、あの人も出てくるかもしれません。では、次回もお楽しみに。