二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re;389章 道連れ ( No.511 )
日時: 2012/06/10 17:02
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: QpE/G9Cv)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 シキミは倒れたロップルに戻し、次なるボールを構えた。
「まさかこうも簡単にやられるとは思いませんでしたよ。一年前よりも、ずっと強くなってますね」
「それはお互い様ですよ。シキミさんも、かなり手強かったですよ。その証拠に、ディザソルもかなり消耗してます」
 確かに、ディザソルはパッと見て分かるほどに体力が削られていた。呼吸が荒く、脂汗も浮かんでいる。
「まあ、それでも大したものです、とだけ言っておきましょう。では、次のポケモン、行きますよ。『かの霊はその姿を無限に変え、虚像として冷ややかな闇へと我らを誘う』……ゲンガー!」
 シキミの三番手は、シャドーポケモンのゲンガー。人型ではあるがずんぐりした体と、紫色の体色、そして赤く光るギョロッとした目が特徴のポケモンだ。
「ゲンガーか……ディザソルは消耗してるし、速攻で決めるか。辻斬り!」
 ディザソルは地面を蹴り、トップスピードのままゲンガーへと接近、飛び込むように漆黒の鎌で斬りかかる。
「ゲンガー、気合球です!」
 しかし、四天王のポケモンもただでやられるほど甘くない。 
 ゲンガーは掌で気合を込めた球体を生成し、ディザソルに切り裂かれ、ディザソルが地面に足を着けた瞬間、その球体を押し付けるようにぶつけた。
 ディザソルはそのまま体勢を崩してしまい、ゲンガーの真正面で隙だらけになってしまう。
「しまっ……ディザソル、退避だ!」
「遅いですよ。危険な毒素!」
 ゲンガーはディザソルがふらついている隙に体内から有害な毒素を集め、それを一点に集中させ、ディザソルへと放った。
 ディザソルはその毒の塊の直撃を受け、数歩後退した後に地面に伏す。
「……よくやった。戻れ、ディザソル」
 イリスはディザソルをボールに戻す。
 シキミのゲンガーは今のやり取りで、攻撃能力が高いことと、若干打たれ強いことが分かった。
 攻撃面はおいておくにしても、防御面は少し厄介だ。単純に力押しをしても、そう簡単に破れそうにはない。
「……だったら、お前だな。出て来い、デスカーン!」
 決心したイリスは二番目のポケモン、デスカーンを繰り出した。棺桶の体と、四つの影の腕を持つポケモンだ。不気味さで言えば、ゲンガーにも負けていない。
「デスカーン、鬼火だ!」
 まずデスカーンは、青白い不気味な人魂をいくつか周囲に浮かべ、それらをゲンガーへと向かわせる。
「ゲンガー、放電で相殺です!」
 だが、ゆらゆらと揺れる火の玉は、全て放出される電撃により消滅した。さらに、
「危険な毒素!」
 ゲンガーは全身から溢れる毒素を一点に集中、デスカーンへと放つ。
「サイコキネシスだ!」
 デスカーンはその毒の塊を念動力で受け止め、そのまま霧散させる。
 さらに新たな念動力を放ち、ゲンガーの動きを止めた。
「地面に叩きつけろ!」
 デスカーンはゲンガーを操作し、地面へと強かに打ち付ける。ゲンガーは苦しそうに呻いたものの、まだ戦闘不能ではない。
「やりますね。ゲンガー、放電です!」
 ゲンガーはすぐさま起き上がると、周囲に向けて電気を放出する。
 デスカーンは鈍重だ。いきなり放たれた電撃を避けることもできず、直撃を受けた。しかし、デスカーンは堅い。なので、そこまでのダメージはない様子だ。
「ゲンガー、危険な毒素!」
「デスカーン、パワーシェアだ!」
 ゲンガーが追撃の毒素を放つ直前に、デスカーンはパワーシェアを行う。
 パワーシェアは、ポケモン同士の力を共有する技。言い換えれば、攻撃力の低いポケモンは攻撃力が高く補正され、逆に攻撃力の高いポケモンは攻撃力が低く補正されてしまう。そんな技だ。
 そしてゲンガーとデスカーンの攻撃能力の差は歴然。ならば、
「デスカーン、シャドーボール!」
 デスカーンは影の球を四つ、それぞれの腕から発射する。そのスピードは中々のものだ。
「ゲンガー、放電で相殺です!」
 ゲンガーも放電で応戦するが、攻撃能力は互角なのだ。デスカーンのタイプ一致のシャドーボールは、中々打ち消せない。
 そうこうしているうちに、さらなる追撃が飛ぶ。
「鬼火だ!」
 デスカーンは青白い不気味な鬼火を放つ。鬼火は放電の間を縫うようにゆらゆらとゲンガーに接近し、その体を燃やしていく。
「ああ、ゲンガー!」
 ゲンガーは火傷を負いながらもシャドーボールを止めていたが、それも限界。ついに影の球に突き破られ、四連撃を喰らう。
 さらに、
「とどめだデスカーン、シャドーボール!」
 ダメ押しのように放たれる四発のシャドーボール受け、ゲンガーはついに戦闘不能となる。
 バタリ、とゲンガーはその場に倒れこみ——

 ダンッ

 ——デスカーンが空中より落下した。
「……!? デスカーン!」
 そう、デスカーンが落下した。慌てて駆け寄ってみると、完全に目を回している。戦闘不能状態だ。
 イリスの脳内でぐるぐると思考が駆け巡る。何故、デスカーンが急に倒れたのか。デスカーンがとどめを刺す途中に、ゲンガーが攻撃した形跡はないはずなのに——
「……!」
「気付きましたか」
 シキミが呟くように言う。それに、イリスも顔を上げた。
「……道連れ、ですか」
「はい」
 道連れ。それは、相手の技によって自分が倒れた時、相手を道連れにして強制的に戦闘不能にする技。どうやらシキミのゲンガーは、やられる直前にそれを使ったようだ。
「……戻れ、デスカーン」
「戻ってください、ゲンガー」
 これでイリスの手持ちは残り三体。対するシキミは、残り二体。数の上ではイリスが勝っているが……
「たぶん、残り二体は強敵だろうな……!」
 シキミは四番手のポケモンが入ったボールを握りしめ、こちらを向いている。その目は、自信に満ちた目だ。
「…いや。思いなら、僕だって負けていない。絶対に、勝つ」
 そう自己暗示のように呟いてから、イリスも次なるボールを手に取った。



やっと更新できました、白黒です。やっぱりしばらく書いていないせいか、腕がなまっていますね。はやく戻さねば。今回は見ての通り、イリス対シキミの四天王戦、その2です。シキミの手持ちは早速残り二体になってますが、そもそもこの四天王戦はさっさと終わらせるつもりです。さて次もシキミとのバトルです。次回をお楽しみに。