二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 399章 イリスvsギーマ ( No.528 )
日時: 2012/07/11 07:00
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: QpE/G9Cv)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 レンブを倒したイリスは、次なる塔に向かっていた。
 通称『イカサマ賭博場』。その塔は、とにかく内装が豪奢であった。螺旋状に渦巻く赤い絨毯は、パッと見るだけで上等なものだとわかるし、天井に吊るされたシャンデリアもまた同じである。
 イリスは今、自動で上へと向かう絨毯に乗って、ジッとしている。
 やがて最上階まで到着すると、どっかりとソファに座っていた男——四天王ギーマが、ゆっくりと立ち上がり、こちらへ歩んで来る。
「来たな、チャレンジャー。待ちわびてたぜ」
 小さい翼のような独特の黒髪に、燕尾服を着ている。首には黄色いマフラーを巻き、何故か裸足で革靴を履いている。
 イリスの第一印象では、キザっぽい人だと思った。
「英雄と呼ばれているかなんだか知らないが、勝負の場に上がった時点で、そんな肩書は無意味になる。カードもコインも、実力が全てだ。勿論——」
 ギーマは一旦そこで言葉を区切り、イリスを見据える。そして、次の言葉を、紡ぐ。
「ポケモンバトルもな」
 イリスは悟った。ギーマは、今まで戦ってきたどのトレーナーとも違う。この者だけが持つ、何かがあると。
 だが、そのくらいで怯む英雄でもない。
「上等ですよ。実力勝負。いいじゃないですか、分かりやすくて。むしろ純粋に力だけを比べる方が、手っ取り早くて好きですよ、僕は」
「そうか、それは重畳」
 ギーマは務めて冷静に対応する。
「では、始めよう。勝者は全てを手に入れ、敗者は何も得られない。それが勝負の定め。そして私、四天王ギーマ。その役目に従い、お相手するまで」
 サッとボールを取出し、ギーマからポケモンを繰り出す。
「ギャンブルオン、レパルダス」
 ギーマの初手は、冷酷ポケモン、レパルダス。豹のようなしなやかな体つきのポケモンだ。
「レパルダス、悪タイプか。だったらこいつだ。出て来い、ズルズキン!」
 イリスの一番手は、ズルズキン。攻撃面では格闘で弱点を突けるし、こちらも悪タイプを持っているので悪技は効きにくい。
「ほう、ズルズキンか。まあ、悪タイプに対しては堅実な手だが、レパルダスという一枚のカードに対する手としては、読みが甘いな」
「?」
 ギーマの迂遠な表現に、いまいち言っている意味を理解できないイリス。ギーマはそんなイリスに構わず、レパルダスに指示を出す。
「レパルダス、猫騙し」
 レパルダスは瞬時にズルズキンの正面へと移動する。本当にあっという間の出来事で、ズルズキンは反応すらできない。
 そしてレパルダスは、肉球のついた両手を、パンッ、と叩き、衝撃を起こしてズルズキンを怯ませる。
「猫騙しは必ず先制を取り、必ず相手を怯ませる技。初手にしか使えないのが難点だが、この技は序盤の流れを引き寄せてくれる。勝負は最初の流れを掴んだ者の勝率が高い。そのまま燕返し」
 怯むズルズキンに、レパルダス鋭い爪が炸裂する。効果抜群なので、なかなかのダメージだ。
「ズルズキン! ……くっ、読みが甘いって、こういうことか」
 確かに、レパルダスなら燕返しを覚えていても不思議ではない。それに格闘タイプのズルズキンを出したのだ、読みが甘いと言われても仕方ない。
「続けてアイアンテール」
 レパルダスの攻撃はまだ続き、レパルダスは鋼のように硬化させた尻尾をズルズキンに叩き付けた。
「ズルズキン、反撃だ! マグナムパンチ!」
「レパルダス、不意打ちだ」
 ズルズキンは拳を構え、大砲の如き勢いで突き出そうとする。が、しかし、それよりも早くレパルダスの背後からの一撃が炸裂し、攻撃は中断される。
「燕返し」
 加えて燕返しによる追い打ち。ズルズキンの防御力は高いのでまだ戦闘不能ではないが、このまま攻撃を受け続ければいずれやられるだろう。そのまえになんとか反撃しなければならない。
「くっそ、ブレイズキックだ!」
「そう来たか。ならばアイアンテール」
 反撃にズルズキンは炎が灯った蹴りを繰り出し、レパルダスも鋼鉄の尻尾で迎え撃つ。
 だがズルズキンの方が攻撃力が高い。ズルズキンが押し勝ち、レパルダスは吹っ飛ばされる。が、俊敏な身のこなしで華麗に着地した。さほどダメージはないようだ。
「ふむ。最初の流れは元に戻ったか。だが、ここからが勝負師の腕の見せ所だな。レパルダス、燕返し」
「迎え撃つぞ。マグナムパンチ!」
 レパルダスは爪を構えて走り出し、ズルズキンも迎撃しようと拳を構える。
 ズルズキンが拳を繰り出すが、レパルダスを捉えることはできない。あの素早い身のこなしで、軽々とかわされてしまうのだ。
「とりあえず一撃入れるんだ! そうすれば、そこから突破口が開ける! 噛み砕く!」
「不意打ち」
 ズルズキンがレパルダスを噛み砕こうと大口を開けた瞬間、ズルズキンの背後に衝撃が走る。レパルダスの不意打ちによる一撃が入ったのだ。
「続けてアイアンテール」
 さらにレパルダスはその場を軸に体を半回転させ、あろうことか噛み砕くで開けていたズルズキンの口の中に、鋼鉄の尻尾を叩き込んだ。
 さすがにこの一撃は効いたようで、ズルズキンはその場に蹲ってしまう。
「今が勝負どころと見た。レパルダス、燕返し」
 レパルダスは蹲るズルズキンを爪で切り裂き、カウンター防止のためだろう、後ろへと下がった。
 ここまででズルズキンは、レパルダスの攻撃をしこたま喰らってボロボロだ。もうあと一撃喰らうだけで、倒れてしまいそうなほどに。
 対するレパルダスは余裕の表情。まだほとんどダメージを受けていないからだろう。
「こうなったら、大技で行くしかない。ズルズキン、諸刃の頭突き!」
 ズルズキンは頭を下げ、トサカを突き出すような姿勢で、レパルダスへと突貫する。その気迫は、凄まじいの一言に尽きる。
 だが、
「ピンチになっての大博打は、成功しないぜ。勝負をかけるのは、しっかりと勝てるタイミングを見測らなくてはならない。どうやら、まだ勝負というものが分かっていないようだな」
 ふぅ、と嘆息し、ギーマは指示を出す。
「レパルダス、不意打ち」
 突っ込んでくるズルズキンに対し、レパルダスは真正面からは向かわない。むしろ真逆だ。
 レパルダスは跳躍し、ズルズキンの真後ろに着地する。そして、鋭い一撃を、その背中に叩き込んだ。
「ズルズキン!」
 諸刃の頭突きによる勢いが悪い方向へと向いてしまい、ズルズキンは壁に激突、そのまま落下し、戦闘不能だ。
「くっ、戻れズルズキン」
 まさかのズルズキンが負けてしまった。このレパルダスもそうだが、なによりギーマの戦術が厄介だ。
「……よし。なら、次はお前だ。出て来い——」



はい、ついにギーマ戦まで来ました。これで四天王三人目ですね。それにしても、ギーマのレパルダス、強いですね。普通、レパルダスじゃズルズキンは倒せませんよ。まあしかし、その辺は小説の仕様ですから、無問題です。さて次回もギーマ戦、いつになったらこの四天王戦は終わるのか。次回もお楽しみに。