二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 400章 先制 ( No.529 )
- 日時: 2012/07/13 00:57
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: QpE/G9Cv)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「次はお前だ。出て来い、デンチュラ!」
イリスの二番手はデンチュラだ。虫・電気タイプなので、悪タイプのレパルダスとは相性がよく、ズルズキンのように燕返しで大ダメージも受けない。
「レパルダスは一度見たカードだ。それに対して選んだポケモンなら、当然対策はできているんだろうな?」
「勿論ですよ。デンチュラ、まずは帯電!」
デンチュラは発電した電気を体の表面に帯び、攻撃能力を高める。
「ふむ、そう来るか。レパルダス、燕返し」
レパルダスは鋭い爪を構え、デンチュラへと駆け出す。そのスピードは、流石と言うべきか、かなり速い。
「デンチュラ、迎撃だ! エナジーボール!」
デンチュラは突っ込んでくるレパルダスに向かって、自然のエネルギーを凝縮した緑色の球を発射する。レパルダスは咄嗟にその球を切り裂いてダメージを免れたが、燕返しは切れてしまった。
この瞬間、レパルダスは完全に無防備。そこにデンチュラの一撃が入るかと思いきや、
「デンチュラ、帯電!」
デンチュラは再度、体表面に電気を帯び、攻撃能力を高めるだけだった。
どう考えても攻撃のチャンスだというのに、イリスは攻撃を指示しなかった。傍から見れば疑問を抱くが、ギーマは満足げに息を吐く。
「気付いたか。レパルダスのパターンに」
「ええ、おかげさまで。でもまあ、ズルズキンがやられた時に、やっと気づいたんですけどね」
得意げに言って、イリスは続ける。
「そのレパルダスはスピードが高い。けれど、そのスピードを生かすのはごく短い間。基本行動としては、先制できる技を使って一瞬で敵に接近し、逃がさないよう追撃を連続で浴びせるというパターンです。しかも厄介なことに、初手は猫騙し、それ以降はこっちの攻撃に対しての不意打ちから繋げていきます。こっちから攻撃を仕掛けようとすれば、必ず失敗する。ズルズキンじゃ倒せないわけですよ」
けれど、とイリスは付け加えた。
「その戦略には大きな穴があります。一つ、その作戦は完全に後手に回ってしまいますから、帯電などの積み重ねて能力を上げる技に弱い。二つ、そうなればそっちから攻撃を仕掛けなくてはならないので、攻撃を仕掛けますが、レパルダスの火力の低さによって、迎撃に弱い。以上の二点を抑えれば、そのレパルダスには勝てますよ」
「百点満点だ。素晴らしい」
パチパチと、ギーマは手を叩く。賞賛のつもりらしい。
「だが、それを読み取られる程度のことは想定の範囲内だ。そのくらいで天狗になったりするなよ。レパルダス、燕返し」
「シグナルビーム!」
レパルダスが突っ込んで来るのに対して、デンチュラはカラフルな光線を発射。エナジーボールのように切り裂くわけにもいかず、レパルダスは光線の直撃を受けて吹っ飛び、戦闘不能となった。
「戻れ、レパルダス。お前の役目は終了だ」
ギーマは焦りも何も感じられない、ポーカーフェイスでレパルダスをボールに戻し、次のボールを取り出した。
「さあ、次のゲームといこうか。ギャンブルオン、ズルズキン」
ギーマの二番手は、イリスの初手と同じポケモン、ズルズキン。ただし、イリスは直感的に分かった。このズルズキンは♀だ。
「さあ行くぞ。ズルズキン、諸刃の頭突き」
ズルズキンは初っ端から大技を繰り出してきた。態勢を低くし、腰を屈め、頭を突き出す姿勢で、デンチュラに向かって突っ込んで来る。
「デンチュラ、かわしてシグナルビームだ!」
諸刃の頭突きは強力だが、一直線で来るので避けやすい。デンチュラはジャンプしてその攻撃をかわすと、カラフルな光線を発射してズルズキンを攻撃。効果は等倍だが、帯電で特攻を二段階上げているため、かなりの威力だ。
しかし、ズルズキンの耐久力も並大抵ではない。光線をものともせず、すぐにデンチュラの方へ向き直り、次なる攻撃を繰り出す。
「騙し討ち」
ズルズキンはまた頭を突き出して突貫する。が、何度来ても同じだ。デンチュラは同じ方法で回避するだけ——
「そこだ、ズルズキン」
——しかしズルズキンはすぐに軌道を変更。跳躍したデンチュラのところまで自分も跳び、拳を叩き込む。
「そのまま飛び膝蹴り」
ついでに膝を使った強烈な蹴りも浴びせ、追撃する。ただの膝蹴りで、跳んではいないのだが、まあいいのだろう。
「デンチュラ、大丈夫か?」
デンチュラは地面に着地し、頷いた。わりとダメージは受けているようだが、致命傷ではなかったようだ。
しかし、まさかの騙し討ちではあった。このズルズキン、使う技こそイリスの個体と似通った部分はあるが、バトルスタイルは全く違うようだ。
「おいおいチャレンジャー、この程度で驚くなよ。これは確かに勝負だが、別に真剣勝負ってわけじゃない。騙し討ちでもイカサマでも、なんでもありだ。条件はフェアでも、プレイまではフェアじゃないんだぜ?」
そんなことを言いつつ、ギーマはズルズキンに次の指示を出す。
「行けズルズキン。騙し討ち」
ズルズキンは拳を構えると、それを振りかざしてデンチュラへと駆ける。
「デンチュラ、あれは避けられない。だから迎撃するぞ。シグナルビーム!」
ズルズキンがデンチュラに拳を突き出した直前に、デンチュラは光線を発射した。騙し討ちの欠点としては、相手が攻撃に対してのアクションを起こさないと、成功しないことがあるのだ。そしてさらに、迎撃にも弱い。
なのでギリギリまで引きつけてシグナルビームを発射し、当たると確信していたが、それもギーマの策略により、失敗することになる。
「ズルズキン、砂かけ」
ズルズキンは拳を突き出す寸前、光線が発射される直前に、地面を蹴って砂をデンチュラに振りかけた。
地を這うようなデンチュラの態勢から、当然砂はデンチュラの眼に入り、シグナルビームは外れてしまう。
しかも、目に入った砂に悶えている隙に、ズルズキンの拳がデンチュラを捉える。クリーンヒットしたので、なかなかのダメージだ。
「くっ、砂かけなんて、完全に予想外だ……!」
「当然さ。常に相手の裏をかくのが勝負だからな。それ、もう一度行くぞ。砂かけ」
ズルズキンはまた地面を蹴ってデンチュラに砂をかける。
だが、デンチュラの特性は複眼。多少命中率を下げられた程度では、さしたる問題ではない。なのでイリスはこの時、まだ気付いていなかった。
四天王ギーマの、恐ろしいまでの狡猾な戦略を。
さて、今回は対ギーマ戦その二ですが、それと同時に400章到達です。これまで500以上の返信がありますが、そのうち400は本文、他にも人物紹介などでいろいろつかってますから、お客様からのコメはわりと少ないんですね、この作品……。まあ、それはいいとしましょう。次回はギーマ戦その三です。最後にそれっぽいこと言っていますが、あまり期待しないように。では、次回もお楽しみに。