二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 401章 成功率 ( No.534 )
日時: 2012/07/26 09:14
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: QpE/G9Cv)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「ズルズキン、騙し討ち」
「デンチュラ、エナジーボールで迎撃だ!」
 ズルズキンが拳を構えて駆け込んできたので、デンチュラは自然の力を凝縮した緑色の球体を発射し、ズルズキンを攻撃する。それにより、ズルズキンの攻撃は中断された。
「今がチャンスだ! 雷!」
 デンチュラは超高電圧の電撃をその身の纏い、直後、空中へと放出する。そして放出された電撃は一つの塊となって、ズルズキンへと稲妻を落とす——
「砂かけだ」
 ——が、しかし、結果的にその稲妻は外れた。狙いを定め、さあ落とそうというところで、ズルズキンがデンチュラの眼に砂をかけて外させたのだ。
「突っ込め。諸刃の頭突き」
「っ!? シグナルビーム!」
 ズルズキンは砂が目に入り悶えるデンチュラに向かって、凄まじい気迫を放つ頭突きを繰り出す。デンチュラも咄嗟には避けれそうにもなかったので、色彩を束ねたようなカラフルな光線を発射して、ズルズキンの勢いを削ぐ。
 ズルズキンはデンチュラを吹き飛ばしたが、シグナルビームで威力が落ちていたため、効果抜群でもデンチュラはまだ戦闘不能ではなかった。
「くっ、もうすぐデンチュラの力も尽きる。でもその前に、少しでもズルズキンの体力を削っておかないとな。エナジーボール!」
 デンチュラは緑色の球体を生成し、まっすぐズルズキンへと射出する。
「跳び膝蹴りだ」
 だが、その球体はズルズキンの強烈な飛び膝蹴りによって霧散した。
「騙し討ちだ」
 今度はズルズキンが動く。ズルズキンはふらふらとした動きでデンチュラに近づいて来る。
「デンチュラ、ズルズキンを近づけるな! シグナルビーム!」
 デンチュラはカラフルな光線を放ってズルズキンを近寄らせまいとするが、酔拳のようなつかみどころのない動きで接近するズルズキンを捉えることなどできず、結局はズルズキンの拳を喰らってしまった。
「だったら反撃だ! エナジーボール!」
「効かないぜ。砂かけだ、ズルズキン」
 デンチュラが至近距離のズルズキンに目標を定めると、緑色の球を生成する。そしてそれを発射する寸前、ズルズキンは動いた。
 また地面を蹴って、砂を舞い上げたのだ。しかもその砂はデンチュラの眼に入り込み、驚いたデンチュラはエナジーボールの軌道をずらしてしまう。
「さて、そろそろこのゲームも締めるとしよう。飛び膝蹴り」
 至近距離から零距離まで接近したズルズキンは、デンチュラの腹に強烈な膝蹴りを炸裂させ、遥か上空へと打ち上げる。
「デンチュラ!」
 やがてデンチュラは落下し、地面に叩き付けられる。効果はいまひとつでも、他の攻撃でのダメージが蓄積し、デンチュラは戦闘不能となった。
「くっ、戻れデンチュラ」
 イリスはデンチュラをボールに戻す。
 デンチュラの犠牲で分かったことは一つ。このズルズキンは、攻撃を確実に当て、また確実回避するよう鍛えられている。そんなことができれば苦労はないが、しかしその成功率を格段に上げるための技が、ズルズキンにはあるのだ。
 それが、砂かけだ。
 これは元々、相手の命中率を下げるための技だが、ズルズキンは自分が攻撃する直前、相手が攻撃する直前にこの技を使うことで、相手の動きを一瞬止める。そしてその一瞬の間に攻撃を繰り出すのだ。
 これもこれで厄介な戦術ではあるが、見破ることができれば、対策しようはある。
「さあ次はお前だ。頼むぞ、ウォーグル!」
 イリスの三番手はウォーグルだ。これも、ズルズキン対策のためのチョイスである。
「ビルドアップ!」
 ウォーグルはすぐには動かない。まずは自らの筋肉を増強し、物理能力を高める。
「そう来るか。まったく、時間の稼ぎ方が上手いな。そんなことをされれば、動かないわけにはいかないというのに」
 ギーマはそう呟いてから、ズルズキンに指示を出す。
「諸刃の頭突き」
 ズルズキンは頭を前に突き出し、そのまま凄まじい気迫でウォーグルへと突進する。
 諸刃の頭突きは岩タイプの技。仮にウォーグルがこれを喰らえば、致命傷は免れないのだが、イリスは極めて落ち着いていた。それもそのはず、この攻撃はイリスの予想通りなのだから。
「来たぞ。後ろに回って鋼の翼!」
 ウォーグルはズルズキンをギリギリまで引き寄せると、すぐさま上昇し、すぐさま急降下。一瞬でズルズキンの背後を取り、その背中に鋼鉄の翼を叩き込む。
 その一撃でズルズキンは宙へと打ち上げられ、完全に無防備な状態を晒していた。
「よし。これでとどめだ、ブレイブバード!」
 ウォーグルは全身に燃え盛る炎のような膨大なエネルギーを纏い、超高速で打ち上げられたズルズキンへと突貫する。
 空中では身動きのできないズルズキンは、当然その一撃をまともに喰らい、天井まで吹っ飛ばされ、激突。落下した時には戦闘不能となっていた。
「ふぅ……やれやれ。なかなか強引な攻めだったな。ズルズキン、戻れ。さて——」
 相変わらずのポーカーフェイスで、ギーマはズルズキンを戻す。そして次のボールを取ろうとしたところで、少し思案し、手に取るボールを変えた。
「……そろそろ頃合いだな。次はこの手で攻めよう」
 ギーマはつかみ取ったボールから、次のポケモンを繰り出す。
「ギャンブルオン、バンギラス」
 突如、周囲に猛烈な砂嵐が吹き荒れた。豪奢なシャンデリアや絨毯は、細かい砂粒により傷ついていく。もとよりバトルでボロボロではあったが。
 イリスは砂嵐に目を細めながら、その発生源に目をやる。ギーマの正面に鎮座する、そこに見えるのは巨大な怪獣。鎧ポケモン、バンギラス。その分類通り、体に緑色の鎧を纏った、強力なポケモンだ。
「特性、砂嵐。それにバンギラスか……厄介だな」
 バンギラスは強い。だがそれ以上にイリスが警戒しているのは、ギーマ自身だ。
 今までの二戦。レパルダスもズルズキンも、一回イリスのポケモンがやられてから、ようやっと攻略法が見えて勝てた相手だ。だとすると、このバンギラスもその類と見るのが自然だろう。
 しかし、イリスは見えていなかった。ギーマの手札を。そして、ギーマという一人の勝負師を。



ようやく部活にひと段落が付いたので、久々の更新です。まあ、まだ終わりではないのですけれど。今回はギーマ戦その三です。デンチュラはやられましたが、ウォーグルでズルズキンを下し、ギーマの三番手はバンギラスです。このタイミングでバンギラスが出たとなると、ギーマの手持ちの残る二体も、予想がつくのではないでしょうか。ともかく、ギーマは一筋縄ではいかない相手。イリスとウォーグルはバンギラスを倒せるのか。次回もお楽しみに。