二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re 403章 無策 ( No.536 )
- 日時: 2012/11/30 00:08
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: xy6oYM/9)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「ふぅ……頼んだよ、メタゲラス」
イリスはウォーグルを戻し、軽く息を吐くと、四体目のポケモンであるメタゲラスを繰り出す。
「メタゲラスか。パワータイプのポケモンだな。それとも、何か策でもあるのか?」
「いえ、策なんてこれっぽちもないです」
探りを入れるようなギーマの言葉に、イリスは素気なく返す。
「ただ、よくよく考えてみれば、僕って頭でうだうだ考えてバトルをすることが多いんですよ。いつだったかミキちゃん……僕の弟子に言われたことがあるんですよ、『師匠はここぞという時にはゴリ押しなのに、普段は楽しようと考えて結果的に損をすることがおおいですよね』って」
それは、確かにその通りかもしれない。策を巡らせるのは、効率的に勝つため。策略家ギーマは否定するだろうが、それはつまり楽をするということだ。
イリスも今まで力押しに走ったことがないわけではないが、基本的には何か考えながらバトルをしている。しかし、
「今回ばかりは、考えることを完全に放棄します。いやそんなことできるのかって感じですけど、少なくとも、今、この時、この瞬間のことだけを考えて、戦います」
「……そうかい」
イリスの真摯な言葉に、ギーマは短く答えた。
それを皮切りに、トレーナーと、ポケモン達も動き出す。
「メタゲラス、メガホーン!」
「バンギラス、ぶち壊す」
メタゲラスは角を構えて突進。バンギラスは拳を構えてそれを迎撃する。
「ストーンエッジだ!」
「バンギラス、こっちもストーンエッジ」
後ずさったメタゲラスはすぐさま鋭い岩を放って切り返すが、バンギラスも同じように返し手を打つ。
無数に放つとはいえ、点を狙って攻撃するストーンエッジは攻撃の相殺には向かない。それぞれの岩はそれぞれの身体に突き刺さった。
しかし、メタゲラスは防御力が高いうえに鋼・地面タイプなので、ストーンエッジのダメージはほとんどない。
なのでノータイムで、切り返しに対する切り返しを、行える。
「メタルブラスト!」
高密度の鋼エネルギーを発射し、バンギラスに直撃させる。バンギラスの防御が高めとはいえ、効果は抜群。かなりのダメージだ。
「追撃行くぞ! 大地の怒り!」
「そうはさせん。ギガスパーク」
メタゲラスは雄たけびをあげ、大地を揺るがし、大量の土砂を吹き出す。しかしバンギラスもバチバチの弾ける巨大な電気の塊を、盾のように構えてその土砂を受け切る。
「龍の舞だ」
さらにバンギラスは龍のように力強く舞い、自身を鼓舞させる。これでバンギラスの攻撃力、素早さはさらに上昇する。
「ぶち壊す」
そのまま流れるような動きで、バンギラスの鉄拳はメタゲラスに直撃する。ウォーグル戦も含めて三回も龍の舞を使用しているバンギラスの拳は、メタゲラスと言えども小さなダメージにはならない。メタゲラスは苦しそうなうめき声をあげる。
「メタゲラス、耐えろ。今のバンギラスを止められるのは、お前しかいない」
そう。今のバンギラスは攻撃、素早さともに相当な値だ。ウォーグルがやられた現状、リーテイルやフローゼルでもバンギラスを抜くことはできないだろう。とすれば手数での勝負に勝ち目はなく、防御力の最も高いメタゲラスに頼る他ないのだ。
ある意味、絶体絶命の状況である。
「メタゲラス、メガホーン!」
「ストーンエッジ」
角を構えて突貫するメタゲラスに対し、バンギラスは尖った岩を無数に放つ。
「メタゲラス、屈め!」
イリスはメタゲラスにそう指示を出すが、足が短いメタゲラスが屈むことなどできない。精々頭を下げる程度だ。
しかしそれでも、受けるストーンエッジの数を少しだけ減らすことができたようで、メタゲラスは若干低い姿勢のままバンギラスの右足を突き砕く。
「ぶち壊す」
無論、バンギラスの足が本当に砕けるわけもなく、メタゲラスは払うように引き剥がされた。
「メタルブラスト!」
しかしすぐに態勢を立て直すと、鋼エネルギーを放ってバンギラスの右足を攻撃。
「もう一発!」
今度は左足を狙撃する。遠くから弱点を突けるこの技なら、ローリスクで攻撃できると思ったのか、そのまま何発かメタルブラストを連射する。
しかし、そのまま黙っている四天王ではなかった。
「あまり調子に乗っていると、身を滅ぼすぞ。龍の舞」
バンギラスは四度目となる龍の舞を使用し、メタゲラスへと急接近する。
「ぶち壊すだ」
そして拳を振り上げる。ここまで強化されたバンギラスの拳だ。メタゲラスでもあと耐えられるのは二、三発が限度だろう。
だが、ただではやられないのは、イリスも同じである。
「大地の怒り!」
メタゲラスは拳が降り上がった瞬間に、自身の足も振り上げ、地面を揺るがそうとするが、
「そうはさせないさ。バンギラス、打ち上げろ」
バンギラスはすぐにもう一方の拳でメタゲラスを打ち上げる。メタゲラスだって体重は200kg近くあるというのに、バンギラスはボールを投げるようにメタゲラスを空中へと放り出してしまった。
「残念だったな。土壇場で大地の怒りという技のチョイスは良かったが、良かったが故にその手は読みやすい。あの技は、空中に出てはもう使えないだろう。バンギラス、止めだ。ぶち——」
「メタゲラス、大地の怒り!」
ギーマが指示を出すより早く、イリスは叫んだ。
そしてメタゲラスも、この部屋を揺るがすような咆哮をあげる。
「……っ」
突如、部屋に異変が起きる。いや、技の効果なので異変ではないが、少なくともギーマにとっては完全に予想外の出来事だった。
地面から噴き出した大量の土砂が、バンギラスの足元をすくい、盛大に倒したのだ。
「これは……」
「軽くフェイント入れといてよかったです。大地の怒りだからって、地面踏まないと使えないわけじゃないんですよ」
けど、また無駄に考えちゃった、とイリスは肩を竦める。
つまり、メタゲラスの大地の怒りの発動に必要なアクションを、ギーマは地面を踏み鳴らすことだと思った。しかしそれは、メタゲラスが入れたフェイントであり、実際に必要だったのは、咆哮だ。メタゲラスの雄たけびが、大地の怒りを発動するキーなのだ。
「ついでにこの位置なら、バンギラスにとどめを刺せそうですね」
メタゲラスの位置は、倒れたバンギラスの真上。バンギラスがご丁寧に高く打ち上げたため、この位置から落下すれば、その運動エネルギーは相当なものとなるだろう。
「メタゲラス、メガホーンだ!」
メタゲラスは下に角を構え、重力に身を任せて落下する。
200kg近い鋼の角が、鎧を纏う龍の身体に突き刺さる——
とりあえず色々言うべきことはありますが、もう文字数が限界なので、次にします。次回はギーマ戦その六です。お楽しみに。