二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:  404章 熱風 ( No.540 )
日時: 2012/11/30 01:51
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: xy6oYM/9)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「戻れ、バンギラス」
 ギーマはメタゲラスの自由落下からのメガホーンで戦闘不能となったバンギラスをボールに戻し、次なるボールを構えた。
「ギャンブルオン、ドンカラス」
 ギーマの四番手は、大ボスポケモンのドンカラス。全体的に黒い烏のような姿で、頭部はテンガロンハットに酷似しており、胸部から首回りにかけて、白い毛で覆われている。
 ドンカラスはボールから出ると、鋭い眼光で満身創痍のメタゲラスを睨みつけた。
「悪いが、このドンカラスは少々性格が悪くてね。自分より格下と思った相手や、疲弊した相手を見ると、つい好戦的になる」
 そしてギーマも、それを誇張するように挑発する。
「でも、メタゲラスが疲弊しているのは確かだしな……」
 メタゲラスはバンギラスとのバトルで、かなりダメージを受けている。ドンカラスとまともに戦えるだけの体力が残っているとは思えない。
「でも、やるしかない。メタゲラス、ストーンエッジ!」
「ドンカラス、追い風」
 ドンカラスはメタゲラスが尖った岩を連射するのに合わせて、自身の周囲に気流を発生させる。
 追い風はしばらくの間、ポケモンの素早さを上げる技。ドンカラスはその風に乗り、軽々と無数の岩をかわしていく。
「熱風」
 そして大きく翼を羽ばたかせ、灼熱の風を吹き荒ぶ。
「大地の怒りだ!」
 炎タイプの熱風を喰らえば、体力が残りわずかのメタゲラスは確実に倒れる。なので大地を鳴動させ、大量の土砂を噴出し、壁として熱風を防ぐ。
「もう一発ストーンエッジ!」
「当たらんよ。かわして悪の波動」
 ドンカラスは襲い掛かる尖った岩を回避しつつ、悪意に満ちた波動を連続して放つ。波動は岩を砕きながら進んでいき、メタゲラスに直撃する。
「メタゲラス!」
 ついにメタゲラスは陥落する。
 イリスはメタゲラスをボールに戻し、最後のボールを手に取った。
「最後は頼んだ、ディザソル!」
 イリスの最後のポケモンはディザソル。飛行タイプのリーテイルの方がドンカラスとは戦いやすいが、熱風を使用するため、一撃でも喰らうと致命傷になる。まだギーマはポケモンを所持しているので、ここではあまりダメージを受けたくない。そういう観点から、攻撃力と機動力を併せ持つディザソルという選択だ。
「ディザソル、神速!」
 ディザソルは神がかった速度でドンカラスに接近。鋭い一撃を繰り出す。
「続けて辻斬り!」
 そしてそのまま上から下に向けて鎌を振るい、ドンカラスを切り裂く。
「ドンカラス、ドリル嘴だ」
 しかしドンカラスも黙ってはいない。体を高速回転させ、追い風に乗ったスピードでディザソルへと突貫する。
「ディザソル、怒りの炎だ!」
 ディザソルは燃えたぎる火炎を放ち、ドンカラスを止めようとするが、ドンカラスの回転速度が少し落ちた程度で、止まることなくディザソルを掠めていく。
「熱風」
 ドンカラスは方向転換し、熱風で追撃をかける。
「神速で突っ切れ!」
 どうやらギーマは倒すよりもダメージを与えることを重視しているようで、熱風は広範囲に放たれている。なので怒りの炎で相殺するのは難しいと考え、ディザソルは神速で無理やり突っ切ることにした。
 それが功を奏したのか、ディザソルはほぼノーダメージでドンカラスの位置まで接近し、攻撃に成功。ついでに辻斬りで追い打ちをかける。
「くっ……飛べ、ドンカラス」
 ドンカラスは一旦距離を取ろうと、翼を羽ばたかせるが、
「逃がすか! 怒りの炎!」
 ドンカラスを包囲するように放たれた炎により、その退避は失敗に終わる。
「メガホーン!」
 さらに角を突き上げて、ドンカラスの身体を抉るような一撃を見舞う。
「追い風が切れてきたか……ドンカラス、熱風」
 ドンカラスはメガホーンを喰らって出来た距離から、灼熱の風を放ってディザソルを牽制。そこから翼を羽ばたかせ、
「追い風」
 自身の素早さを上昇させる気流を発生させる。
「また素早さが……神速!」
 ディザソルは超高速でドンカラスを攻撃。
 神速は追い風の影響を受けていても必ず先制可能な技。ドンカラスに対してディザソルという選択は正解だったと言えよう。しかし、
「ドンカラス、熱風」
 ドンカラスは翼でディザソルを振り払い、熱風を放つ。
「くっ……」
 ドンカラスの熱風が、思いのほか厄介だった。攻撃力が高く、範囲も広い。攻撃の予備動作も短いので、咄嗟の対応が難しい。
「ドリル嘴」
 ドンカラスは高速回転し、ディザソルへと突っ込む。
「ディザソル、かわして怒りの——」
「悪の波動だ」
 ディザソルが炎を発生させるより早く、途中で回転を中止したドンカラスは黒い波動を連続で放ち、ディザソルの態勢を崩す。
「ドリル嘴」
「くぅ……メガホーン!」
 また回転しての突貫。態勢を崩されたディザソルは対応が遅れたものの、角の間に挟みギリギリ攻撃を受け止めた。
 しかしドンカラスはすぐに角の束縛から脱する。
「ディザソル、メガホーン!」
「残念だったな、熱風」
 ディザソルが動くよりも速く、ドンカラスは灼熱の風を吹き荒ぶ。
 この瞬間、イリスは戦慄する。この近距離で熱風を喰らえば、戦闘不能にはならなくとも、大ダメージになるだろう。今までディザソルの受け身のお陰でダメージはそれほど溜まっていないが、ここで体力を削られると、ギーマの最後のポケモンとのバトルが苦しくなる。
 今からでも神速に切り替えるか、それが可能なのか、イリスは一瞬の間に逡巡するが、結果としてそれは杞憂だった。

 何故なら、ディザソルは荒々しい水流をその身に纏っていたから。

「これは……」
「ディザソル……!?」
 ディザソルはその水流で熱風を完全に無効化し、そのままドンカラスに突撃する。
「スプラッシュ……この局面で新しい技を覚えたか。追い風」
 ドンカラスは素早さが下がってきたところを追い風で補強しようとするが、少し遅かった。
「神速!」
 追い風の発動は間に合ったものの、ディザソルの神がかった速度による追撃で、ついにドンカラスは地へと落ちた。



イリス対ギーマその六です。なんだかギーマ戦だけやたら長くなってしまいましたが、おそらく次で最後になるでしょう。イリスの残る手持ちは手負いのディザソルのみ。対するギーマは切り札が残っています。正直かなり分が悪いですね。まあそこをなんとかするのが主人公クオリティです。次回はイリス対ギーマその七。お楽しみに。