二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 409章 空間 ( No.549 )
日時: 2012/12/10 13:40
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「瞑想です」
 ディザソルと距離を取ってから、フォリキーは再び目を瞑り、精神を研ぎ澄ます。
 だがそんな能力上昇なんかよりも、イリスには気がかりなことがある。
(さっきのフォリキーのダメージの少なさは、どう考えてもおかしい。決まりが浅かったとか、咄嗟に防御したとか、そんなレベルで片付けられるようなダメージ量じゃなかった。ほとんどノーダメージだ)
 兎にも角にも、その謎を解明しなければ、ディザソルに勝ち目はない。
「ディザソル、神速だ!」
 ディザソルは地面を蹴り、神がかった超スピードで突貫、フォリキーに激突するが、初撃よりも遥かに効き目は薄い。まるで防御力が上がっているようだ。
「辻斬り!」
 そのままディザソルは鎌でフォリキーを切り裂くが、やはりこちらもあまり効いていない。それも、さっきの辻斬りよりも効き目が薄いように見える。
「ハイパーボイス」
 フォリキーは大音量の声による衝撃波で、ディザソルを引き剥がす。
(なんだ、まるで瞑想で防御力を上げているみたいに効き目が薄いじゃない……か……?)
 そこで、イリスは気付いた。いや、一つの仮説に辿りついたと言うべきか。
「まさか……!」
「気付きましたか」
 焦るようなイリスとは対照的に、カトレアは静かに言葉を発する。
「フォリキーが先ほど使用した技は、ワンダールーム。空間を歪め、しばしの間、互いのポケモン防御と特防を入れ替えます」
 つまり、現在フォリキーは瞑想で特殊防御を高めている。しかしそれは、ワンダールームの効果で物理防御と入れ替わっているため、今のフォリキーは物理防御が上がっている状態となる。どうりで物理技の辻斬りや神速が効かないわけだ。
 しかし、からくりが分かればもう対処できる。
「ディザソル、交代だ。休んでてくれ」
 イリスはディザソルを戻し、別のボールを構えた。
「成程、確かにエスパータイプは特防より防御が低いポケモンが多い。それを積み技と変化技で補うなんて、凄い発想です。でもその作戦には穴がある」
 自信満々にボールを突き出したイリスは、そのボールを投げ、次なるポケモンを繰り出さんとする。
「それは、それで補えるのは物理防御だけだということ。一度入れ替えれば、しばらくはリセット不可能なはず。なら、今度は特殊技で攻めるだけです。出て来い、デンリュウ!」
 繰り出されたのは、出番は少ないものの、イリスの手持ちで一位二位の特殊攻撃力を誇るポケモン、デンリュウだ。
「フォリキーは今、防御は高いけど特防はそのままの状態なはず。だったら、高火力の特殊技で攻め落とす! デンリュウ、雷だ!」
 デンリュウは上空へと電撃を放ち、そこから轟く稲妻を、フォリキーへと落とす。
 当のフォリキーは鳴り響く轟音に驚いているのかなんなのか、黒い頭の尻尾をガチガチと鳴らし、数歩後退しただけだった。
 そして雷が、激しい稲妻が、フォリキーへと突き刺さる。
(もしこれで倒せないにしても、フォリキーは相当なダメージを喰らうはず。激流や深緑が発動したダイケンキとリーテイルには叶わないけど、それを除けばデンリュウの雷はは僕のポケモンの技の中で最も高火力な特殊技だ。そう簡単に耐えられるはずがない)
 そう思い、イリスはデンリュウに二撃目を放つ準備をさせていたのだが、しかし、イリスの予想はことごとく外れていく。

 突如、大量の水流が飛び、デンリュウを押し流した。

「なっ……デンリュウ!」
 その虚を突くような攻撃に、デンリュウはかなりのダメージを受けてしまう。瞑想で特攻を底上げしているのだから、当然と言えば当然だが。
「いや、それより、なんで……!?」
 そう、そんなことより、重要なのはさっきの攻撃だ。あんな精密かつ高威力の技を、すぐに切り替えして撃てるはずがない。デンリュウの雷の直撃を受けて、無事でいられるはずがない。そう思っていたのに、なぜかフォリキーは、ほとんどダメージなど受けていないかのようにピンピンしていた。
「な、なんでだ……」
「特別にお教えしましょうか」
 もはや絶望とも言えるような状況のイリスに対し、、カトレアはまるで、眠気を飛ばすためのお喋りをするように、言葉を発する。
「フォリキーの尻尾の頭は、闇をも喰らう。空間を削り取る口を有しています。それがあれば、歪んだ空間の一部を、元の状態に戻すことも簡単でしょう」
 それはつまり、フォリキーは自身が発生させたワンダールームを、自分の尻尾に喰わせて、一部分だけ削り取ったのだ。そして雷が当たる直前にその元に戻った空間に移動し、攻撃を受ける。戻った空間では、入れ替わった防御と特防も元に戻る。つまり特防が高い状態になるため、雷によるダメージは軽減された。
 雷が当たる直前に尻尾の口をガチガチさせたり、数歩だけ後ろに下がったのは、そのためだったようだ。
「ってことは、物理技も、特殊技も、効かないのか……!?」
 実際は全く効かないわけではないが、効果が薄いことは確かだろう。しかもフォリキーが使用する瞑想は、特攻も高める。そして攻撃能力はワンダールームの効果に干渉しないため、特攻が高まった状態で攻撃を撃てる。理解すれば、なんと恐ろしい作戦だろうか。
 ポケモンの特徴と技の効果を最大限に生かした戦術。心理的な読み合い長け、それを利用するギーマは勝負師としては超一流だが、それになぞらえて言えば、カトレアはトレーナーとして超一流だった。
「ふゎ……」
 カトレアは話を終えた後に、大きく欠伸をする。まるで、勝負に退屈しているかのように。
「……舐められっぱなしってのも、癪だよなぁ」
 そんなカトレアの姿を見て、イリスは静かに拳を握りしめるのだった。



四天王カトレア戦その四ですが、まだ二番手すら倒せていません。この戦い、意外と長引きそうです。というか今回、戦闘描写少ないな……それはともかく、フォリキー強くないですか? というかもう瞑想三回積んでるから、この時点でももう既にヤバいのに、ワンダールームとフォリキー自身のコンボで物理も特殊もダメージが通りにくい状況となっています。……こいつどうやって倒すんだろ……。まあ、彼のことだから、なんとか機転利かせて頑張ってくれるでしょう。そんな強敵フォリキー攻略は次回、カトレア戦その五です。お楽しみに。