二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 21章 撤収 ( No.55 )
日時: 2011/08/01 20:34
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

フォレスは徐々に地に伏しているイリスとユウナの所へ歩み寄っていく。こんな状態では何もできないので、まさに絶体絶命の大ピンチ。
しかし

「おやめなさい、フォレス」

その時、上空から一匹のポケモンが舞い降りてくる。恐竜のような姿にヤシの葉の翼を持つポケモン、トロピウス。
そしてそのトロピウスに乗るのは、黄色い髪に執事服を着たプラズマ団——7P(セヴンプラズマ)の一人、エレクトロだ。
イリスはまさかPDOの面々がやられたのかと焦るが、エレクトロはそれを察したのか、イリスに言う。
「心配には及びませんよ。私はお恥ずかしながら、戦いを投げ出してきました。負けるとは思いませんが、無益な戦いはしたくないですからね」
エレクトロの言葉を聞き、イリスは不覚にもホッとしてしまう。
「エレクトロ……邪魔すんじゃねえ!」
「アシドが目的に関する書物を手に入れました。もうこの町に用はないので、撤収しますよ」
エレクトロはフォレスの言葉を無視するように言うが、フォレスは噛み付く。
「俺は今すぐこいつらを消さなきゃ腹の虫が収まらねえんだ!」
「フォレス、無益な戦いは自らの手の内を晒す事となり、むしろ有害なものです。それにあなたは前線に立って戦う者ではないでしょう?」
「うぐぅ……いや、そんな事関係ねえ!」
フォレスはやや尻込むが、それでも反抗する。
「あなたとフレイはともかく、私とレイのポケモンは残り一体です。それに……向こうの援軍も来たようですしね」
エレクトロがそう言うと、階段を駆け上がってくる音が聞こえる。そしてその場に現れたのはN、シザンサス、ベルの三人だった。
「ちっ、お前がくどくど言ってるから増えたじゃねえか。まあだが、この程度なら俺一人でも——」
「まだですよ」
フォレスの言葉を遮ってエレクトロは言う。すると今度は、風を切るような音が聞こえてくる。
その音の正体はポケモンの飛行音で、ペガーンに乗ったキリハ、リオ、ザキも現れる。
「お分かりでしょう、フォレス。今のあなた——仮にフレイや私達の戦力を足しても、彼らには勝てません。目的は達したので、引き上げますよ」
「……分かったよ」
フォレスは渋々といった感じでコクジャクの足に掴み、飛び立とうとする。しかしその前に
「レイさん、掴まってください」
レイに手を差し伸べる。
「…………」
レイはそれを冷たい眼で見て、エレクトロの方へと向く。
「エレクトロさん、わたくしをトロピウスに乗せてください」
「承知いたしました。どうぞ」
トロピウスは葉っぱの翼を下げてレイを背に乗せる。
「くっそ、エレクトロの奴……!」
フォレスはエレクトロを睨みつけ、飛び立とうとするが
「フォレスー。置いていかないでー」
地面にうつ伏せになって転がっているフレイがフォレスに呼びかける。
「……しゃあねえな」
フォレスは不承不承といった感じでフレイをおんぶする。
「それでは皆様方、私達はこれにて」
「次会ったときがお前らの最後だ。それまで精々楽しく過ごすんだな」
そう言い残し、プラズマ団は去っていった。



その後はカゴメタウンの復旧工事が執り行われた。幸い負傷はゼロで、被害の規模も大した事はないので明日明後日で復旧は終わるだろうとの事だ。
ただ、カゴメタウン唯一の図書館に保管されていたカゴメの神話等がなくなっていたのが気がかりである。PDOの推測では、その本はプラズマ団達が盗み、また神話レベルの事件を引き起こすのではないかという事らしい。
「でも結局、プラズマ団が何をする気なのか、具体的には分かってないんだよなぁ……」
イリスはカゴメタウンで比較的被害の小さい南側のベンチに座り、一人呟く。
イリスは復旧作業を手伝おうと思ったが、フォレスのコクジャクに喰らった電磁波の影響で筋肉がまだ弛緩しているそうだ。なので握力なんかも通常の七割もない。まあ、普通に生活する上では全く問題ないが、治るまで安静、認められているのはポケモンバトル(ただし一日一回)だけである。
「でも、皆が復旧作業を頑張ってるときに、バトルするのもな……。それ以前に皆忙しいから相手もいないし……」
イリスが無気力にグダグダしてると、不意に影が差す。
「隣、いいかな?」
影の主は若い男性で、髪はやや暗い黄色でぼさぼさだが、顔は精悍な顔立ちで結構格好良い。黒いTシャツの上に青色の上着を着て、黒いズボンを履き、腰にはチェーンが付けてあって洒落ている。
「……どうぞ」
イリスは断る理由もないので、とりあえず許可する。
「ありがとう。……君はここで何をしているんだい?」
「別に何も。昨日の戦いで体がちょっと不調で、休んでいるだけです」
「昨日、君は戦ったのか。勇気ある少年だね」
男声はイリスを称賛する。最終的には地面に伏して今はこの様なので、なんとも言い難かった。
「俺は昨日、逃げる人を誘導していたんだ。中には持病持ちの人もいてね、そんな人の手助けをしていた」
「……あなたの方が、よっぽど良い事してますよ。僕は結局、最後は締まりませんでしたし」
イリスは無気力に空を仰ぐ。
「……似てるね」
男声は不意に呟く。
「君は、昔戦ったトレーナーと、ちょっと似てるよ。ただまあ、今の君はちょっとやる気なさげだけどね」
「……なんか、前にもそんな事言われたような……」
イリスはおぼろげな記憶を探ってみるが、すぐにやめた。面倒くさくなったのだ。
「……少し、俺の話に付き合ってくれるか?」
「まあ、暇ですし良いですよ」
イリスは承諾する。いい暇つぶしになると思ったからだ。
「そうか。俺はデンジ。君は?」
「僕はイリスです」
そして、デンジの話が始まった。



今回はプラズマ団の撤収と、スペシャルゲストのデンジが登場しました。ちなみに7Pのレイは括弧の中に必ず三点リーダ(……←これの事)が入ります。そしてフレイは語尾が必ず伸びます。ではでは、次回はデンジとの……まあ、分かるとは思いますが何かがあります。お楽しみに。