二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 412章 胎児 ( No.552 )
日時: 2012/12/13 00:37
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「戻れ、エルレイド」
 イリスはムシャーナを下したエルレイドをボールに戻す。
「交代だ、ディザソル!」
 そして再び現れるのは、ディザソル。残りのエスパータイプを一気に抜く作戦だ。
「華麗な時間を頂戴……ランクルス」
 対するカトレアが繰り出すのは、増幅ポケモン、ランクルス。白い胎児のような姿で、それを覆うのは透明な緑色のゲル物質。二つの丸っこい大きな手が特徴だ。
「ランクルス、気合球」
 ランクルスは気合を込めた球体を作り出し、素早く発射する。攻撃速度が速いのは、トリックルームの効果が持続しているからだろう、ランクルスは鈍足なのだ。
「格闘技を隠しもしないか……神速だ! 気合球をかわせ!」
 ディザソルは襲い掛かる球体を超高速の足捌きで回避し、そのままランクルスに突撃。
「辻斬り!」
 加えて尻尾による斬撃も行う。効果抜群なので、かなりダメージはあるはずだ。
「ランクルス、引き剥がしなさい。シャドーボム」
 ランクルスは両手の平にシャドーボールより一回り大きな影の球体を生成すると、叩き付けるように思い切り地面に押し付けた。
 刹那、小規模な爆発が巻き起こり、ディザソルは吹っ飛ばされる。ランクルスの特攻が高いため威力はあったが、効果いまひとつなのでダメージは大きくない。
「続けてシャドーボム」
 ディザソルが態勢を立て直している間に、ランクルスは新たな影の爆弾を二つ発射する。威力は高いが、弾速はシャドーボールより遅いようだ。だがそれでも速い。
「切り裂け、辻斬り!」
 ディザソルは駆け出し、ランクルスへの接近を試みる。途中で影の爆弾が行く手を阻むが、漆黒の鎌のような角と、鋭い尻尾で切り裂く。が、しかし、
「っ!? ディザソル」
 爆弾は切り裂かれると同時に、爆発した。そのためディザソルは爆発をモロに喰らい、大きく姿勢を崩してしまう。
「ただの球体ではなく爆弾なのですから、壊せば暴発するのは当然です。ランクルス、雷」
 ランクルスは地に伏すディザソルに向かって超高電圧の雷を落とすが、寸前でディザソルはその場を離れ、攻撃を回避した。
「一撃一撃が強力、しかも攻撃速度も速い」
 ディザソルだから今までの攻撃はなんとかかわせたが、他のポケモンでは難しかっただろう。
 ランクルスは切り返しの速いカトレアのポケモンの唯一の例外で、基本的には相手からの攻撃を受け、カウンターを決めるタイプだ。しかし今はムシャーナの置き土産とでもいうべきトリックルームが発動しており、カウンターにこだわらなくとも、普通に攻撃を連打できる。
「ディザソル、怒りの炎!」
 ディザソルは雄たけびをあげ、怒り狂ったように轟々と燃え盛る業火を放つ。
「ランクルス、サイコパンチです」
 しかしランクルスは、念動力を纏った拳を放ち、炎を打ち消し、そのままディザソルまで貫通させる。勿論、ディザソルは悪タイプなので、エスパー技のサイコパンチは効果ないが。
「このままでは埒があきませんね……ランクルス、ディザソルを捕まえてください」
 ここで初めて、ランクルスが前に出る。ランクルスは残像が残るようなスピードで、ディザソルへと迫り来る。
「くっ、連続で神速!」
 ディザソルは一直線に向かって来るランクルスに向かって、やや角度を変えて突撃。そしてすぐさま身を退き、また角度を変えて突撃、それを繰り返す。
「ランクルス、雷で囲いなさい」
 しかしそこは耐久力の高いランクルス。神速の連打をものともせず、自身を取り囲むように連続して雷を落とす。
 そしてそんなことをされれば、ディザソルは必然的に足を止めざるを得ない。その動きが止まった、一瞬を狙って、ランクルスは動く。
「気合球」
 気合を凝縮した球体を放ち、高速で発射する。如何にディザソルと言えど、この距離では避けるのは難しい。トリックルームで鈍足となっている今なら尚更だ。だから、
「ディザソル、スプラッシュ!」
 ディザソルは尻尾に水流を纏わせ、向かい来る気合球に叩き付ける。威力は気合球の方が高く、スプラッシュで打ち消すことは出来そうになかったが、軌道を逸らすくらいならできる。
 なんとか気合球の機動をずらし、攻撃を回避したディザソルは、そのまま攻めるため、ランクルスへと走り出す。
「辻斬りだ!」
 漆黒の鎌を二振り構え、鋭き刃で中の胎児ごとランクルスを切り裂く。急所を切り裂く攻撃、そして効果は抜群。これでランクルスは倒した——

 ——かに見えた。

「ランクルス、シャドーボム」

 ランクルスはすぐに後ろを振り返り、ディザソルに向かって影の爆弾を二発撃ち込んだ。
「なにっ!?」
 イリスは、ランクルスの耐久力を少々甘く見ていた。最初のメタグロスのインパクトが強いからしょうがないとはいえ、実はカトレアの手持ちは、タイプ相性を含まない、純粋な耐久力だけならメタグロスよりもランクルスの方が高いのだ。だから、急所を切り裂く効果抜群の辻斬りにも、耐えることができた。
 ディザソルは不意打ちの影の爆弾を喰らい、大きく態勢を崩す。しかもシャドーボムは攻撃を当てるたびに誘爆する粒子が付くため、威力が上がる。効果いまひとつでも、今のは効いただろう。
 そして、ランクルスもまだ、止まらない。
「捕まえなさい、ランクルス」
 ランクルスは攻撃を受けて隙だらけになったディザソルを大きな腕でつかみ、がっちりと固定する。これではもう、逃げられないだろう。
「くっ怒りの炎!」
 無駄だと思いつつも、ディザソルは憤怒の炎で自分ごとランクルスを炎に包むが、しかし体表面をゲル状物質で包むランクルスに、この攻撃は効果が薄い。
「では、これで決めましょう。ランクルス、気合球」
 ランクルスは片腕でディザソルをホールドしたまま、掌に気合を凝縮した球を生成し、ディザソルに思い切り押し付けた。
 同時に爆発が巻き起こり、煙が立ち込める。煙が晴れた時には、悠然と浮かんでいるランクルスと、ぐったりと倒れているディザソルの姿があった。
「ぐっ……戻れ、ディザソル」
 悔しげに、イリスはディザソルをボールに戻す。ここでディザソルがやられたのは痛い。残っているのは、手負いのデンリュウと、ノーダメージだがシャドーボムで弱点を突かれるエルレイド。さあ、どちらを選ぶか。
「……決めた」
 しばしの思考の後、イリスはボールを構えた。
「次はお前だ。頼んだぞ」
 そして、次なるポケモンを、繰り出す。



今回はカトレア戦その七ですが、ランクルス、倒せませんでした。しかも、手負いだったとはいえ、相性が悪く、エースに限りなく近い実力を持つディザソルを下してしまいます。っていうか、これ本当にカトレア戦だけ十回とかになりそうなんですけど……ま、いっか。カトレアだし。というわけで、次回はカトレア戦その八。そろそろカトレアのエースも登場です。お楽しみに。