二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 22章 イリスvsデンジ ( No.56 )
日時: 2011/08/01 21:37
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「俺はシンオウ地方のナギサシティという街の出身なんだ。俺はそこでジムリーダーをしていて、つい最近このイッシュに来たんだ」
「へぇ、ジムリーダーですか……。!? ジムリーダー!?」
イリスはサラッと言うデンジの台詞をそのまま流してしまいそうになったが、なんとかツッコミを入れる。
「何でジムリーダーがここに?」
「電子工学を学ぶためさ。イッシュはシンオウと比べて技術の進歩が凄いからね」
「そうなんですか。それも、ジムのためとかですか?」
「いや、趣味だ」
イリスはガクッと首を落とす。
「で、俺がジムリーダーになってから一年くらい経った頃かな。ナギサジムには手応えのあるトレーナーがなかなか来なくて、俺の闘志の炎は燃え尽きてしまった」
イリスは嘆くように語る。
「そこで俺はジムバッジを闘う事無くナギサを訪れたトレーナーに渡していた。そして俺は、趣味の機械弄りに没頭し、ジムを改造していたんだ」
イリスは驚く。闘わずにバッジを渡しているなんて、イリスにはとても信じられる事ではなかったからだ。
「まあ、少し改造に没頭し過ぎて街の電気を大量に使ってしまってね、ナギサシティには大停電が起こってしまったんだ。流石にそれはジムリーダーとしてまずいと思って、すぐに街の端にソーラーパネルを取り付けたり、街のシンボルであるナギサタワーという塔を発電、変電、蓄電施設に改造したりと、いろいろ奮起したものだ」
そして正直こっちの方が驚いた。この人はジムリーダーじゃなくて、電子工学系の仕事に就くべきではないだろうかとも思った。
「で、ある時だ。俺の所に一人のトレーナーが現れた。俺はいつものようにバッジだけ渡して帰ってもらおうとしたが、四天王を勤める俺の親友の紹介で、渋々バトルをしたんだ」
そこから、デンジの表情は変わる。それはもう、大切な思い出を語るような恍惚とした表情だ。
「そのトレーナーは強かった。俺は全力で闘い、負けた。だが、その場トルで俺の闘志に火がつき、また燃え上がった。久々の、熱く燃えるバトルだった」
デンジは一見クールな印象だが、実際は熱い心の持ち主なのだと、イリスは理解した。
「あのトレーナーには感謝している。俺の闘志に火をつけ、熱く燃えるバトルを繰り広げた。……そして君は、そのトレーナーと似ている」
デンジはイリスの顔を見て言う。
「……そういえばあの娘もイッシュから来たって言ってたっけ? ……ちょっと探してみるかな」
デンジの呟きは、イリスには聞こえなかった。
「イリス、お願いがある」
「……何でしょうか?」
イリスは何を言われるか、大方予想していたが、それでも一応聞いてみる。
「俺とバトルしてくれないか?」
やっぱり。



「勝負方式二対二のシングルバトル、勝ち抜き戦でいいね?」
「構いません。何でもいいです」
イリスとデンジはカゴメタウン西に設置されていた屋外バトルフィールドに立ち、ボールを構える。
「それじゃあ俺から行くよ。出て来い、スミロドン!」
デンジが繰り出したのは、水色の体に黄色くて鋭く長い牙を持つ獣のようなポケモン。サーベルポケモンのスミロドンだ。
「化石から復活したポケモンなのか……タイプは岩と電気。珍しい組み合わせだな」
イリスは少し考え、ポケモンを選ぶ。
「ブイゼルだと電気で弱点を突かれるから、やっぱこいつかな。頼むぞ、リーティン!」
イリスが繰り出すのは草タイプのリーティン。スミロドンは岩タイプを持つので、草タイプのリーティンなら闘いやすい。
「いくぞリーティン、マジカルリーフ!」
リーティンは葉っぱを振って念力を帯びた葉っぱを無数に飛ばす。念力を帯びた葉っぱは相手を追尾し、確実に仕留めるのだ。
「スミロドン、シャドークロー!」
スミロドンはマジカルリーフに向かって走り出し、影で作り出した爪で葉っぱを全て切り裂いてしまう。
「スミロドンは攻撃型っぽいな、なら接近戦はまずい。リーティン、かまいたち!」
リーティンは周囲に空気の渦を作り、葉っぱを振って風を切り裂く真空の刃を飛ばす。
「スミロドン、構わず炎の牙!」
スミロドンはかまいたちに切り裂かれながらもリーティンに接近し、炎を纏った牙で噛み付く。
「ヤバイ……リーティン、燕返し!」
リーティンは急いで葉っぱを振って隅ロドンを切り裂き、引き剥がす。
「スミロドン、マッハボルト!」
スミロドンは高速で電撃を撃ち出し、リーティンを攻撃する。効果いまひとつだが、結構効いている。
「リーティン、グラスミキサー!」
「スミロドン、かわして炎の牙!」
リーティンは葉っぱを高速で回転させて木の葉の渦を作り出し、スミロドンをそれに巻き込もうとする。しかしスミロドンは素早い動きで渦をかわし、炎の牙でリーティンに噛み付く。
「くっ、燕返し!」
リーティンは再度燕返しで引き剥がし、スミロドンと距離を取る。
(……あれ? あんまり効いてない……?)
勿論これはスミロドンの事ではない。岩・電気タイプのスミロドンに燕返しがあまり効かないのは百も承知だ。だからスミロドンではなく、リーティンの事である。
見ればリーティンは効果抜群のスミロドンの炎の牙を食らったというのに、そこまでダメージを受けていない。むしろ、さっきの効果いまひとつのマッハボルトの方が効いていたようにも思う。
(どういう事だ……? いや、考えても仕方ないかな)
イリスは気のせい、決まりが浅かったか深かったかの違いだと判断し、バトルに戻る。
しかし、その認識が誤っていたと判断するのは、もう少し先のことである。



今回はデンジとのバトルです。そして初っ端から化石から復活するポケモン、スミロドンが出てきました。僕、実はスミロドンの進化系好きなんですよ。芯構えのスミロドンから既に格好良いし、進化すればさらに……。まあ、一つだけ欠点というか、意外なところがありますがね。それは次回、明らかになるでしょう。では、次回もお楽しみに。