二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 415章 イリスvsアデク ( No.560 )
- 日時: 2012/12/17 00:27
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
ポケモンリーグ、最後の試練。
四天王達が守護する四つの塔の中央にある像から下へ降りていくと、目の前に広がるのは広大と言うべき長く広い階段。そしてその先に構えるのは、聖なる神殿。
その神殿の内部にて、イリスは一人の男と向かい合っている。
「……お久しぶりです、アデクさん」
「ああ。ちゃんと会ったのは、ゲーチスとの戦い以来だな」
その男は、威風堂々とした佇まいで、言葉を発する。
燃える太陽のような髪、年季の入った白いマントと、丈がボロボロのズボンを履いているが、その姿は言い様もない威圧感がある。
「本来ならば、儂を倒したNがチャンピオンになるはずだったのだが……奴はすぐに蒸発してしまったゆえに、儂が今のチャンピオンを務めている」
「まあそうなりますよね……Nは戻ってきましたけど、やっぱりイッシュのチャンピオンは、あなたが似合っていますよ」
「それはチャンピオンに挑む者の台詞ではないだろう」
普通に会話しているようだが、イリスからすれば虚勢を張っているようなものだった。一年前とは違う、空気がピリピリとし、何か喋っていないと押し潰されそうな感覚に陥る。
一年前はイッシュを放浪していたアデクだが、彼もまた、この一年で変わったということか。
「さあ、御託はこのくらいするぞ。どちらが強いか、イッシュのチャンピオンは誰か、この地方の最強は誰なのか、それを決めようではないか」
「……ええ、望む所です」
そして二人は、それぞれボールを構えた。
「凍てつく吹雪の中を行け! バイバニラ!」
アデクの一番手は、ブリザードポケモンのバイバニラ。枝分かれしたアイスクリームのような姿が特徴だ。
「出て来い、エルレイド!」
対するイリスのポケモンはエルレイド。氷タイプに格闘技で弱点が付ける上、特防が高いため特殊技の多いバイバニラには有効的だ。
「ふむ、定石通りに攻めて来るか。お前さんらしい。バイバニラ、吹雪!」
バイバニラは大きく息を吸うと、口から猛烈な吹雪を放った。ブリザードポケモンの名に恥じない、強力な吹雪である。
「エルレイド、サイコバレット!」
対するエルレイドはその吹雪を避けようともせず、念動力によって生成された銃弾を乱射し、吹雪を突っ切ってバイバニラを攻撃。無理やり吹雪を中断させてしまう。
「そこだ、影討ち!」
そしてすぐさま影に入り込み、バイバニラの後ろを取る。そして肘の刃を一閃させるが、
「効かぬよ。バイバニラ、鉄壁!」
バイバニラはエルレイドが刃を振り下ろす直前に体を鋼鉄のように硬化させ、影討ちを防御する。
「っ……ならこれだ。マグナムパンチ!」
「鉄壁だ!」
エルレイドは続けて大砲のような勢いで拳を突き出すが、ゴォン! というドラでも叩いたかのような音が響くだけで、バイバニラは平然としている。
「反撃だ、バイバニラ。ラスターカノン!」
バイバニラはくるりと反転し、光を集束したエネルギー弾を発射する。エルレイドはサッと体を横にずらしてかわし、一旦バイバニラと距離を取る。
距離が出来たところでエルレイドは、拳を痛そうに押さえた。どうやらさっきのバイバニラの硬さは、拳を痛めるほどだったらしい。
「このバイバニラは防御系統を集中して鍛えているのでな、弱点の攻撃を受けても早々落ちはせんよ。まあしかし、攻撃に関しては、少々控えめだがな」
確かに、バイバニラの吹雪は強力なものではあったが、エルレイドはあまりダメージを受けていない。サイコバレットが簡単に突っ切れたこともあるので、アデクの言うことは真実だろう。しかし、
「攻撃が通らないのは厄介だな……エルレイド、サイコバレットだ!」
「鉄壁だ、バイバニラ!」
エルレイドは念動力で生成した銃弾を無数に連射するが、バイバニラはそれらの銃弾を全て弾き飛ばしてしまった。
「ラスターカノン!」
「影討ち!」
バイバニラが放つ光弾を、エルレイドは影に潜り込んで回避。バイバニラの背後に回り込み、刃による一撃を入れるが、やはりダメージはほとんど通っていない。
「吹雪だ!」
「かわしてアイスブレード!」
体を反転させて吹雪を放つバイバニラ。エルレイドはすぐに吹雪の攻撃範囲から脱し、凍てつく刃を振るうが、ダメージはないに等しい。
「くっそ、硬すぎる。どこかに隙はないのか……?」
この時イリスは、フレイのストータスを思い出していた。あのポケモンも、相当な硬さを誇っており、彼女の言うことが正しいのなら、恐らくこのバイバニラよりも硬い。加えてあちらは、攻撃力も高かった。
「バイバニラ、吹雪!」
イリスが思考している間にも、バイバニラは攻撃を行う。口から猛烈な吹雪を放つが、エルレイドは影に潜り込んでやり過ごす。攻撃はあまり意味がなさそうなので、とりあえず時間稼ぎのために影に潜っておく。
「考える時間が欲しいのは分かるが、老いぼれても儂とてトレーナーだ。作戦が立つまで相手を待ってやるほど甘くはないぞ。バイバニラ、ラスターカノン!」
バイバニラは自身の正面に光を集束させ、影に向かって放つ。
すると、影からエルレイドが弾き出された。ダメージはあまり受けていないが、どういう理屈なのか、ラスターカノンで影から引きずり出せるようだ。
「なら、サイコバレット!」
エルレイドはそのまま念動力で生成された銃弾を乱射してバイバニラを攻撃するが、やはり銃弾は全て弾かれてしまう。全くダメージが通っていないわけでもないだろうが、効果が薄いのは確かだ。
「バイバニラ、ラスターカノン!」
「エルレイド、かわしてマグナムパンチ!」
バイバニラの光弾の第三射が放たれる。しかし今度は跳躍して回避され、エルレイドの接近を許してしまう。
バイバニラに近づくことに成功したエルレイドは、大砲のような勢いで拳を振り抜き、バイバニラの顔面を殴りつけるが、三回も鉄壁を使用したバイバニラに有効打をあたえることはない。むしろこちらの拳を痛めてしまう。
「バイバニラ、吹雪で引き剥がせ!」
「エルレイド、後に下がってサイコバレット!」
バイバニラはブリザードのような猛吹雪を放つが、エルレイドへの効果は薄い。むしろエルレイドにその風の勢いを利用されて後ろに下がられ、念動力の銃弾を受けてしまう。
しかしその銃弾も、バイバニラは全て弾き返す。その氷の体は、今は鋼鉄よりも硬い。
「もう一回、サイコバレット!」
エルレイドは懲りずに念動力で生成した銃弾を連射し、バイバニラを攻撃。
「ラスターカノンだ!」
バイバニラも銃弾を弾きながら、光を一点に集約させた光弾を発射する。エルエイドに直撃するが、あまりダメージが通っているようには見えない。
「うーむ……どうにも、お互い決定打に欠けるな。仕方ない、あれを使うか」
ぼそりと、アデクはそんなことを呟く。
バトルに集中しているイリスにアデクの呟きが聞こえるはずもなく、イリスはエルレイドに指示を出す。
「サイコバレット!」
「まだ来るか。吹雪!」
吹き荒れる猛吹雪の中、無数の銃弾がそれに逆らって飛び、氷の体に直撃。しかしいとも容易く弾かれる。
「ラスターカノン!」
バイバニラは自分の正面、その一点に光を集約させ、一発の光弾を発射する。
「影討ちだ!」
エルレイドは影に潜り込んでその光弾をやり過ごし、今度は背後ではなくバイバニラの正面から出て来る。そして、
「上からマグナムパンチ!」
影からぬっと出て来ると、地面を蹴って飛び上がり、バイバニラの頭——ちょうど冷気を放出する角の部分に、大砲の如き思い拳を叩き込む。が、しかし、
「これでもダメか……!」
バイバニラへのダメージは、顔面を殴った時と変わらないように見える。やはり見える位置に弱点はないのか、素直にエルレイドを戻すべきかと、イリスが逡巡したその時、バイバニラは動き出した。
角から尋常じゃない量の冷気を放ち、自分もろともエルレイドを包み込む。そして、
「バイバニラ、絶対零度!」
その瞬間、冷気が覆っていた空間が、凍結した。
「! ……エルレイド!」
エルレイドは完全に凍りつき、ピクリとも動かない。
やがて氷が砕け散ったが、出て来たエルレイドはぐったりとしており、完全に戦闘不能だ。
「絶対零度、一撃必殺か……!」
「その通りだ。あのまま泥仕合を続けていても、面白くなさそうだったのでな」
確かに、互いに決定打がない状況だったのであの調子でバトル続行すれば、いつ終わるか分かったものじゃない。
それに、攻撃能力の低い耐久型に一撃必殺の技を覚えさせるというのも、分からない選択ではない。
「……戻れ、エルレイド」
イリスはエルレイドをボールに戻し、次のボールを手に取る。
「そのバイバニラにはしてられれましたが、次はこうはいきませんよ」
「ああ、全力でかかって来るがいい。こちらも、全力で受け止めよう」
かくして、イリス対アデク、イッシュのチャンピオンを決める戦いは、現チャンピオンのアデクが最初に勝利を収めたのであった。
はい、ついにやってきましたチャンピオン、アデク戦。何気にこの二人のバトルは初めてです。最初のバトルはアデクに取られてしまいましたが、まだまだバトルは続くので、勝負の行方は分かりません。では次回はアデク戦その二です。お楽しみに。