二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 417章 騎士 ( No.562 )
日時: 2012/12/19 00:35
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「戻れデスカーン」
 イリスはデスカーンをボールに戻す。
 アデクのクリムガン、予想以上の攻撃力だ。となると、単純に防御が高いだけでは、やられてしまう。体力はデスカーンが削ってくれたので、もうひと押しだろうが——
「……ちょっと早いけど、お前に頼むとするか。出て来い、リーテイル!」
 イリスの三番手はリーテイル。攻撃が高いのならかわせばいい、という判断だ。ドラゴンビートで弱点も突ける。
「ほぅ、しかしクリムガンはダストシュートを覚えているぞ。それも、かわしきるつもりか?」
「当然です。リーテイル、エアスラッシュ!」
 まずは牽制として、背中の葉っぱを羽ばたかせ、大量の空気の刃を飛ばす。
「耐えろクリムガン! ダストシュート!」
 クリムガンは刃に切り裂かれながらも、両手の中でゴミの塊を凝縮させ、攻撃が止むと同時にリーテイルへと投げ飛ばす。
「かわしてエアスラッシュ!」
 放物線を描くように放たれるゴミの塊を軽々と避け、側面からクリムガンに空気の刃を飛ばし、切り裂く。
「ダストシュートだ!」
「エアスラッシュ!」
 クリムガンはダストシュートで反撃しようとするが、それより速く空気の刃がクリムガンを切り裂いたため、攻撃は中断。クリムガンは怯んでしまった。
「そこだ、ドラゴンビート!」
 リーテイルはその隙を見逃さない。龍の鼓動のような音波を放ち、クリムガンを吹っ飛ばす。
 クリムガンは強かに地面に叩き付けられ、目を回し戦闘不能となっていた。
「むぅ、戻れクリムガン」
 アデクはクリムガンをボールに戻し、首にかけているボールの一つと取り換える。
「草・飛行タイプのリーテイルならば、このポケモンが適任か。気高き騎士の道を行け! シュバルゴ!」
 アデクの二番手は騎兵ポケモンシュバルゴ。鋼鉄の甲冑を身に付け、両腕は赤と白のランス、頭に赤い鬣のような飾りがあり、騎士のような出で立ちだ。
「虫・鋼タイプのシュバルゴか。とすると、リーテイルじゃ厳しいか……」
 タイプ相性的に、リーテイルの主力技がほぼ全て半減以下。唯一エアスラッシュは等倍だが、硬いシュバルゴにどこまで通用するか。
「戻れ、リーテイル」
 とそこで、イリスはリーテイルを戻す。
「ほぅ、交代するか。そのまま攻めてくると思ったのだがな」
「流石に相性が悪すぎます。リーテイルの火力は、深緑が発動しないと平均値より少し上程度ですからね」
 言いながら、イリスはボールを構えた。
「頼むぞ、ディザソル!」
 イリスが繰り出したのは、なんとディザソル。悪タイプなので、虫タイプとは相性が悪いが……
「何か企んでおるな……まぁいい。全力で迎え撃つぞ、シュバルゴ! メガホーン!」
 シュバルゴは腕のランスを構え、物凄い勢いで突っ込んで来る。意外と速い。が、しかし、
「その程度のスピードならかわせる。ディザソル、スプラッシュ!」
 ディザソルは突き出されるランスを跳躍してかわし、シュバルゴの脳天に水流を纏った尻尾を叩き付ける。
「しっかし硬いな……」
 そう、シュバルゴはスプラッシュの直撃を受けてもなお、平然としており、再びランスを突き出してくる。
「かわして辻斬り!」
 ディザソルは軽々とその攻撃を避け、漆黒の鎌で鋼鉄の甲冑を切り裂く。
「スプラッシュで吹っ飛ばせ!」
 直後、身体を回転させながらディザソルの尻尾がシュバルゴを捉え、吹っ飛ばした。
 その瞬間、アデクは驚いたように目を見開く。
「今のは、カトレアの……」
「はい。彼女のメタグロスの動きを、真似てみました」
 カトレアのメタグロスは、スプラッシュを放つ際に身体を回転させ、素早く切り返していたが、それと同時に遠心力で攻撃力も増していた。
 その身を持ってあの動きからの攻撃を知っているディザソルなら、それくらいの芸当はできるかと思ってやらせてみたが、上手くいったようだ。
「四天王の技術を真似てしまうとは、なかなかどうして大した奴だ。しかし、儂のシュバルゴはそのくらいではやられんよ。シュバルゴ、アイアンヘッド!」
 シュバルゴは一度態勢を立て直すと、鋼鉄の頭を突き出して突進してくる。
「かわしてスプラッシュ!」
 ディザソルはシュバルゴの攻撃を軽く受け流し、またも足一本を軸として一回転し、尻尾に纏った水流でシュバルゴを吹っ飛ばす。
「続けて辻斬り!」
「燕返し!」
 追い打ちとして鎌のような角を構え駆け出すディザソルだが、シュバルゴも同時に燕返しを繰り出し、互いに切り結ぶ。
「ディザソル、一旦退いて神速!」
 しかしすぐにディザソルは身を退き、シュバルゴの態勢が崩れたところで神速を繰り出し攻撃。
「シュバルゴ、メガホーンだ!」
 直後にシュバルゴのランスが勢いよく突き出されるが、これもディザソルはかわしてしまう。
「ならば燕返し!」
 だがシュバルゴもそこでは止まらい。カトレアに負けず劣らずの切り返しでランスの切っ先を向けて来る。
「それはかわせないな。辻斬りで迎え撃て!」
 ディザソルも同じように鎌を振るい、ランスを受け止める。
「スプラッシュ!」
 そしてすぐにランスを受け流し、体当たりをするように飛沫を散らしながらシュバルゴを大きく後退させる。
「アイアンヘッド!」
 シュバルゴは後退しても頭を突き出してすぐに前進するが、これもかわされる。
 ここまでで、ディザソルはノーダメージ。シュバルゴも大きな傷は負っていないが、少しずつ削られているのは確かだ。この調子で体力を少しずつ削っていけば、いずれシュバルゴも倒れるだろう。
(とはいえ、それまでにディザソルの体力がもつかどうか……なるべく一気に決めたいから、あの技の出しどころは選ぶな)
 しばし逡巡してから、イリスはディザソルに指示を出す。
「ディザソル、辻斬り!」
 漆黒の鎌を煌めかせ、ディザソルは駆ける。そしてシュバルゴの鋼鉄の甲冑の弱点を探しつつ、その身体を切り裂いていく。
「シュバルゴ、一撃でも当てれば奴は倒れるはずだ。狙いを定めて放てぃ、メガホーン!」
 シュバルゴは切り裂かれながらもディザソルの動きをジッと観察し、その足が止まった一瞬を見て、ランスを突き出した。しかし、
「スプラッシュ!」
 紙一重でシュバルゴのランスは外れ、顔面に水流を纏った尻尾を叩き付けられる。どうやら足の動きにフェイントを入れていたようだ。
「もう一発スプラッシュ!」
「シュバルゴ、今度こそ迎え撃て! メガホーン!」
 ディザソルは尻尾に水流を纏わせて振るい、シュバルゴは気合のこもったランスを勢いよく突き出す。だが結果は見えている。
 シュバルゴが攻撃するタイミングに合わせて身を捻り、ディザソルの尻尾がシュバルゴを捉えた。
「続けて辻斬り!」
 加えて漆黒の鎌による斬撃。効果はいまひとつだが、急所に当たれば儲けもの……とはいえ、このシュバルゴの特性はシェルアーマーなので、イリスのその目論見は、完全に失敗しているのだが。
 しかしそれでもシュバルゴにダメージを与えているのには変わりはない。小さなダメージを少しずつ積み重ねていき、来たるべき時に一気に決めるのだ。
「シュバルゴ、メガホーンだ!」
 やけっぱちというか、是が非でも当てたいというような気概で、シュバルゴは両腕のランスを構えた。一本で当たらないのなら二本という考えなのだろうか。流石にそれは浅はかだろうと思いつつ、ディザソルは構える。
 思わず怯んでしまいそうなほどの覇気がこもった二本のランスがディザソルに襲い掛かる。しかしディザソルがそれをかわすのはたやすく、最低限の動きで回避。シュバルゴの後ろを取った。
 しかもシュバルゴは、ランスが二本とも地面に深々と突き刺さってしまい、身動きが取れない状態だ。
 イリスはこれを好機と見、勝負を決める技を指示する。

「ディザソル、怒りの炎!」

 ディザソルは一歩後退し、怒り狂ったように燃え盛る業火を発生させ、無防備なシュバルゴへと放つ。
 業火はみるみるうちにシュバルゴを取り囲み、包み込む。その甲冑は灼熱の炎に焼かれ、炎が消える頃には地面に横たわる一体の騎士の姿が見えるであろう——イリスは、そう思っていた。
 しかし、

「シュバルゴ、カウンター!」

 突如、炎の中からシュバルゴが飛び出す。今までにない覇気、気迫、怒気を露わにし、鋭き大槍を突き出す。
「ディザソル!」
 あまりにいきなり——そうでなくても、四倍弱点の怒りの炎を耐えきるという予想外の事態に驚き、イリスもディザソルも咄嗟に動くことが出来ず、その槍の直撃を受けてしまう。
 ディザソルはこれでもかというくらいに吹っ飛ばされ、壁に叩き付けられて戦闘不能となった。
「怒りの炎を耐えてのカウンター……なんて耐久力だ」
 ディザソルを戻しつつ、イリスは呟く。
 とはいえシュバルゴの体力も残り僅かだろう。先ほどのカウンターの威力が、それを物語っている。
 イリスは少し悩んで、次なるボールを手に取った。
「……よし、次はこいつだ。頼んだぞ」



アデク戦、その三です。アデク強いです。ここまでで一度もイリスに先勝させていません。シュバルゴも最後の最後で逆転しました。こうして見ると、最初のバイバニラと合わせて、アデクは最後に戦況を引っくり返すような戦い方をしますね。クリムガンはそうでもないですが。では次回はアデク戦その四、お楽しみに。