二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 418章 命懸け ( No.563 )
- 日時: 2012/12/20 01:14
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「出て来いウォーグル!」
イリスが繰り出すのはウォーグル。残り体力が僅かなシュバルゴなら簡単に落とせる。
「まずはこれだ。ビルドアップ!」
ウォーグルはカウンターを警戒し、確実に一撃で決めるために筋肉を増強させる。
「シュバルゴ、アイアンヘッド!」
シュバルゴはもう体力がゼロに等しいというのに、鋼鉄の頭を突き出して果敢に攻めてくる。しかし、
「ウォーグル、ブレイブバード!」
対するウォーグルは青い炎のようなオーラを纏い、シュバルゴと激突する。
多少競り合ったが、すぐにウォーグルがシュバルゴを打ち破り、吹っ飛ばした。
「ここまでか。戻れ、シュバルゴ」
アデクは戦闘不能となったシュバルゴをボールに戻す。これでアデクの手持ちは残り三体だ。
「……ふむ、相手がウォーグルとなると、ちと厳しいな。こいつを使おうか」
シュバルゴを戻したボールと、首にかけているボールを入れ替え、アデクは次なるポケモンを繰り出す。
「忍びし密偵の道を行け! アギルダー!」
アデクの四番手は殻抜けポケモンのアギルダー。ライダーを髣髴とさせる意匠で、クールな印象を与えるポケモンだ。
「ウォーグル相手に虫タイプのアギルダー……何か策でもあるのか……?」
イリスはアデクのチョイスに、露骨に訝しげな表情をする。
「アギルダー、シグナルビーム!」
アギルダーは手の先からカラフルな光線を高速で発射する。
「速い……かわせウォーグル!」
ウォーグルは素早く羽ばたいて急上昇し、光線を回避した。
「鋼の翼!」
そしてそのまま急降下。翼を鋼のように硬化させ、アギルダーに突っ込む。
「かわしてアシッドボム!」
対するアギルダーは跳躍してウォーグルの攻撃をかわし、酸性の爆弾をぶつけて攻撃。
アシッドボムは攻撃と同時に相手の特防を下げる技。これでウォーグルの耐久力は落とされてしまった。
「もう一度、鋼の翼!」
ウォーグルは攻撃されながらも攻撃するが、アギルダーの動きは俊敏で、辛うじて掠ることはあっても、直撃することは皆無だった。
「アギルダー、後退してシグナルビーム!」
アギルダーは大きく距離を取る。そして色彩豊かな光線を発射し、ウォーグルを撃ち抜いた。
だが、ウォーグルへのダメージはさほど大きくない。アシッドボムの効果があるとはいえ、効果いまひとつなのだから大ダメージは期待できないが、それにしても威力が低い。
(もしかしてこのアギルダー……特攻が低いのか?)
そもそもアギルダーというポケモン自体、攻撃能力はそこまで高くない。さらにこのアギルダーは個体として特攻が低いのかもしれない。
とにかくこのアギルダーで気を付けるべきはアシッドボムだということを念頭に置いておく。
「アシッドボム!」
そうこうしているうちに、ウォーグルの顔面に酸性の爆弾が直撃する。さらに、
「シグナルビームだ!」
カラフルな光線が続け様に放たれ、ウォーグルは後退せざるを得なくなる。
しかしウォーグルへのダメージは少ない。やはりアギルダーの特攻は低いようだ。
「一撃でも入れば勝てる、そうでなくても少しずつ削っていけば、動きも鈍くなるはずだ。ウォーグル、鋼の翼!」
ウォーグルは鋼のように硬化させた翼を広げ、アギルダーへと突貫する。
「かわしてアシッドボムだ!」
アギルダーは横に跳んで突っ込んで来るウォーグルの攻撃をかわし、酸性の爆弾を投げつける。
いくらアギルダーの特攻が低いとはいえ、そう何度も特防を下げられてはたまらない。なのでウォーグルは鋼の翼でアシッドボムをシャットアウト。毒タイプ技なので、鋼タイプの技で無効化する。
「もう一度突っ込め!」
ウォーグルは素早く方向転換し、再びアギルダーへと突っ込むが、
「かわせアギルダー! ギガドレイン!」
今度は跳躍して鋼の翼を回避するアギルダー。さらにウォーグルから体力を吸い取り、少量だが減ってしまった体力を回復する。
「回復技もあるのか……!」
歯噛みするイリス。こうなってくると、本当に一撃入れなければならなくなってくる。
「試しにやってみるか……ブレイブバード!」
ウォーグルは全身に燃えるような超高密度のエネルギーを纏い、アギルダーに突撃するが、結果は見えている。
「かわしてシグナルビームだ!」
ウォーグルの全身全霊の突貫は呆気なく回避され、後ろからシグナルビームを直撃される。
「くっ、威力が低くても、何度も受けると厄介——」
そこで、イリスは気付いた。
今は無駄だと分かったが、アギルダーの体力を少しずつ削っていくつもりが、気付けばウォーグルの体力が少しずつ削り取られているではないか。
タイプ上有利なウォーグルなら、特攻が低いアギルダーの攻撃を喰らっても大丈夫、そう思い込んでいた。
小さなダメージも蓄積すれば大ダメージになる、それを相手に気付かれぬよう、最初に相手にその考えを植え付けることで、自身の作戦を隠していたのだ。
「危なかった。もう少しで、アデクさんの策略にはまるとこだった……」
流石はチャンピオン。豪快なようでいて、意外と考えているようだ。
「となると、今度は攻撃をかわす方が先決か、いや——」
ここで防御に回れば、それこそアデクの思うつぼだ。ならばここは、確実に決めるために動くべき。
「……浅はかすぎるけど、あの手で行くか」
上手くいくかは分からない、むしろ失敗する確率の方が高そうだが、当たれば勝ちは決定したようなもの。ウォーグルの大技なら、一撃でも入れば決着だ。
「ウォーグル、地面すれすれで鋼の翼!」
ウォーグルは一気に地面近くまで降下し、翼を硬化させながらアギルダーへと突っ込んでいく。
「何度来たところで、儂のアギルダーには当たらんよ。アギルダー、ギガドレイン!」
アギルダーは前方に宙返りしながらウォーグルの攻撃をかわし、体力を吸い取る。
「ウォーグル、方向転換! アギルダーを逃がすな!」
ウォーグルは素早く方向転換し、鋼の翼を繰り出すが、アギルダーには当たらない。
「距離を取ってシグナルビーム!」
アギルダーは後方に大きく跳び、カラフルな光線を発射してウォーグルを攻撃する。
攻撃中のアギルダーは無防備、しかも動きも完全に止まっている。しかけるなら、ここだ。
「今だウォーグル、ブレイククロー!」
ウォーグルは頑強な爪を構え、大きく振るう。しかし、それはアギルダーにではない。すぐ下の、神殿を形作っている足元の岩だ。
爪で岩を抉り、引っくり返すようにして岩の塊をアギルダーへと投げつける。
「おぉ……!? これはたまげた、この神殿の岩を抉り取ってしまうとはな。アギルダー、アシッドボムで溶かしてしまえ!」
アギルダーはその岩をかわそうとせず、強酸の爆弾をぶつけて溶解する。
だが、そこに襲い来る影が一つ。
「ブレイブバード!」
高密度のエネルギーを纏ったウォーグルが、アギルダーに向かって突っ込んできた。
「だからどうした。アギルダー、かわしてシグナルビーム!」
アデクの指示通り、アギルダーは横に跳んでブレイブバードの機動からずれようとした。が、しかし、
突如、アギルダーは石の礫に襲われて弾き戻されてしまう。
「なぬっ!」
アデクは目を見開いて声を上げた。
ウォーグルはブレイブバードで突っ込みながら、翼を地面に差し込むように飛行している。それによって神殿の床が削られて砂煙が立ち込め、同時に削られた石が礫となって前方に飛ばされているのだ。
「砂煙と石礫でアギルダーの退路を断つ、か。よくもまあ、そんな成功しそうにないことをしでかすものだ」
呆れるように、しかし同時に感心するように、アデクは呟く。
そして、ウォーグルがアギルダーへと迫る。この一撃が決まればアギルダーは間違いなく戦闘不能となる——
「アギルダー、命懸け!」
ウォーグルがアギルダーへと到達する直前、アギルダーが動き出した。
凄まじい気迫を纏い、命を懸けているような覇気を放ち、突っ込んで来るウォーグルと激突する。そして、
「なっ……ウォーグル!」
ウォーグルは、戦闘不能となっていた。
同じようにアギルダーも戦闘不能だ。
「い、今のは……」
「命懸けだよ」
アデクは言った。
「文字通り命を懸けて、相手を攻撃する技だ。自分が瀕死になる代わりに、自分の体力と同じダメージを相手に与えるのだ」
アギルダーの体力はギガドレインで回復していたこともあってほぼ満タン。確かにそれなら、ウォーグルを倒すだけのダメージを与えられるだろう。
「……戻れ、ウォーグル」
イリスはウォーグルをボールの戻す。アデクも同じように、アギルダーを戻し、首のボールと入れ替える。
「さあ、やっと勝負も楽しくなってきたところだ。盛大に行こうではないか!」
アデクはボールを握りしめ、そう叫ぶのだった。
さあさアデク戦もついに大詰め、互いの手持ちは残り二体です。にしても、本当にアデクはどんでん返しが好きですね。絶対零度、カウンターに続いて命懸けです。流石にもうお分かりでしょうが、アデクの手持ちはBWのものと全く同じです。では次回はアデク戦その五。五番目のあいつの特性はどうしようかと悩んでおります。では次回をお楽しみに。