二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 422章 イリスvsモスギス ( No.569 )
日時: 2012/12/23 21:05
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 ハイドロカノンの余波で生まれた爆風が消える頃には、ウルガモスは戦闘不能となっていた。
「……戻れ、ウルガモス。今までで最高の戦いっぷりだ、大儀であった」
 アデクはウルガモスをボールに戻す。そしてそれは、アデクの敗北と同時に、イリスの勝利を意味する。
 イッシュ地方のチャンピオンに、勝利したのだ。
「勝った……僕は、勝ったのか……」
 いまだに状況が呑み込み切れないイリスではあったが、徐々にその真実を受け入れていく。
「僕は……アデクさんに勝ったんだ、ダイケンキ!」
 ダイケンキもイリスの言葉に応えるように、大きく逞しく、それでいて優しげな温もりを持った雄叫びを上げる。
「おめでとう、イリスよ。これでお前さんも、今からイッシュ地方のチャンピオンだ」
 パチパチと手を叩きながら、アデクはイリスへと歩み寄って来る。
「これでお前さんは殿堂入りを果たすわけだが——」
 アデクはそこで一旦言葉を切った。だがイリスは、アデクの視線から言わんとしていることが伝わってくる。
「……アデクさん、チャンピオンに勝った今は、僕の方がアデクさんよりも偉いってことですよね?」
「ん? あぁ、まぁ確かにそうなるな」
「だったら、一つお願いしてもいいですか」
 アデクは少しだけ考えてから、申せと促す。そして、

「ゲーチスの野望を打ち砕き、プラズマ団を今度こそ解体させるその時まで、イッシュ地方チャンピオンの代理をお願いします」

 イリスは、宣言するように、言った。
「……お前さんなら、そう言うと思っておったよ。うむ、承った。このアデク、残り短いこの命を持って、汝の代役を務めようぞ」
「はい、よろしくお願いします!」

 かくしてイリスは、アデクを打破し、イッシュ地方のチャンピオンになった。
 しかし彼には、プラズマ団の、ゲーチスの野望を打ち砕くという命がある。選ばれた者、英雄として、イッシュを救う使命がある。
 なので今はまだ、王者の座にはつかない。その玉座に座するのは、英雄としての使命を果たした時だ。



 アデクとの激闘を制したイリスは、ひとまずポケモンリーグから一番近い街、ソウリュウシティの近辺にいた。
「さて、これでイッシュ地方のジムリーダー、四天王、そしてチャンピオンを一通り制覇。これで父さんと勝負できる」
 アデクとの激戦がイリゼとの戦うための踏み台であったと思うと悲しいものがあるが、しかしこれでやっとリベンジができる。
「僕もトレーナーの端くれ、やられっぱなしってのは癪だからな……!」
 静かに燃えながら、ライブキャスターでイリゼを呼び出そうとする、その時だった。

「テレレレッテレー! 呼ばれて飛び出てもすすすのす! どうももすです、モスギスです!」

「…………」
 最悪のタイミングで最悪の人が出て来た、さっきまでの清々しい気分を返してくれ、というかもう無視していいですか……イリスの中で、様々な悪態や懇願が巡り巡る。しかし、言葉には一切出ない。
 自称四天王、モスギス。ふざけた格好と言動と態度がうざ——もとい特徴的な男だ。
「モスギスさん……一体何の用ですか?」
 頭を押さえながら、イリスはモスギスに尋ねるが、
「いやさそろそろモスギスさんの伏線を回収しておかなければ、このままもすは忘れ去られてしまいそうなので。記憶喪失、ダメ、ゼッタイ!」
 やっぱり意味不明な言葉しか返ってこなかった。もうイリスは、モスギスとまともな会話をすることを、というよりコミュニケーション自体を半ば放棄している。
「用がないなら、僕もう行きますよ。父さんと約束があるので」
 そういってその場から立ち去ろうとするとモスギスは、
「そのイリゼさんなのですが」
 比較的真面目な調子で、言葉を投げかけてきた。それも、イリゼのことだ。
「実はモスギスさん、イリゼさんから伝言を、いやさ言づてを、いやいやイリスさんに行って欲しいことがあると頼まれていまして」
「それ、全部一緒です」
 だが、イリゼがモスギスを通して伝言とは。一刻も早くモスギスから解放されたいイリスではあったが、興味はあった。
「……で、その伝言ってなんですか?」
 イリスはそう尋ねるが、しかし相手はあのモスギス。常識の範囲内で通じる言葉が、果たして届くものか——
「その驚きの答えは、ポケモンバトルの後! お楽しみに!」
 ——やっぱり駄目だった。



「テレレレッテレー! モアドガス!」
 そんなこんなでイリスとモスギスのバトルが始まってしまった。
 イリスとしてはイリゼとのバトル前の調整にはなるが、しかしそれがモスギスの奇天烈すぎる言動に付き合うのと釣り合うのか、甚だ疑問ではあった。
 モスギスの一番手はマタドガスの進化系、モアドガス。毒と悪の複合タイプで、頭が三つあり、怒ったような険しい顔をしている。
「モアドガスか……だったらこいつだ、メタゲラス!」
 イリスの初手はメタゲラス。鋼タイプなので毒は無効、悪技も半減となり、逆にこちらは地面技で弱点を突ける。
「一気にくぞ、大地の怒り!」
 メタゲラスは大地を鳴動させ、大量の土砂を噴出する。
「もすもす、もすのモアドガスにそのような攻撃など、無意味! ヘドロウェーブ!」
 モアドガスは大きな毒液の波を放ち、降りかかる土砂を全て溶かして相殺してしまう。
「続いて続きましてはもすすのす、大文字!」
 続けて放たれるのは大の字の巨大な炎だ。かなり大きく、鈍重なメタゲラスでは避けるのは不可能だろう。
「だったら、大地の怒り!」
 再び大地を踏み揺らして土砂を噴射し、炎を鎮火させる。そして、
「ストーンエッジ!」
 鋭く尖った岩を無数に射出し、モアドガスの体に突き刺す。防御の高いモアドガスだが、直撃したのでそこそこダメージはあるだろう。
「続けてメガホーン!」
 今度は地面を蹴ってモアドガスに接近し、頑強な角を突き出し攻撃する。
「ダークリゾルブ!」
 しかし今度の攻撃は通らず、モアドガスを中心として放たれた闇のオーラで阻まれる。
「もすで追撃うふふのふ、大文字です!」
 さらに追撃として、またも大文字が襲い掛かる。
「間に合うか……大地の怒り!」
 メタゲラスは地面から土砂を吹き出して炎を鎮火させようとするが、至近距離で放たれたために完全に炎は消えず、残った炎で焼かれてしまう。
「今度こそ、メガホーン!」
 しかしそこはメタゲラス、攻撃を受けてもすぐに態勢を立て直して突貫。鋼鉄の角でモアドガスを突き飛ばす。
「メタルブラスト!」
 そして追撃に、エネルギー状の鋼鉄をぶつける。この連続攻撃は、モアドガスでも応えるだろう。
「休ませるな! メタルブラスト!」
「メーメー! メーメー! 大、問、題です! モスギスさんピーンチ! ダークリゾルブ!」
 さらに追い打つようにして放たれたメタルブラストを、モアドガスは闇のオーラで相殺。そのままメタゲラスも攻撃する。
「ストーンエッジ!」
「ヘドロウェーブ!」
 メタゲラスは周囲に鋭く尖った岩を浮かべ、一斉に射出。モアドガスも同時にヘドロの波を放って岩を全て融解してしまう。
「続いてお送りしますは、大文字、大文字でございます!」
 モアドガスは大の字の巨大な炎を放つ。しかし、この距離ならその攻撃は通用しない。
「大地の怒りだ!」
 大地を揺るがす振動を引き起こし、地面から大量の土砂を放つ。その土砂が降りかかり、大文字はあえなく鎮火してしまった。
「もう一発、大地の怒り!」
 続けて大地を揺るがし、再度土砂を放つメタゲラス。大文字発車直後で隙のあるモアドガスでは、避けることも相殺することもできない。
 よってモアドガスは大量の土砂の直撃を受け、吹き飛ばされる。クリーンヒットだったので、ほぼ確実に戦闘不能になるだろう。イリスはそう思っていたし、その予想も的中することになる。だが、しかし、

「いつもいつでもどこでも一緒のモスギスさん、死んでもこの手は放さない! 道連れです!」

 吹っ飛ばされるモアドガスから、黒い煙のようなものが飛び出る。その煙は異常なスピードでメタゲラスへと向かっていき、その身体の中へと入り込んだ。

 次の瞬間、メタゲラスは戦闘不能となっていた。

「メタゲラス!」
 今の技は、道連れ。自分が戦闘不能になった時、同時に相手も戦闘不能にする技。名前通り、相手を道連れにするのだ。
「くっ、戻れ、メタゲラス」
 イリスはメタゲラスをボールに戻す。イリスはモスギスの手持ちをある程度把握しているので、そのポケモン達に対抗するためにもメタゲラスは残しておきたかった。
 モスギスもいつの間にかモアドガスをボールに戻しており、二体目のポケモンを繰り出す準備をしている。
「……さてはて、次はどんなポケモンが出て来るのか」
 警戒を見せながらイリスは、ベルトにセットされているボールを一つ、握りしめるのだった。



はい、アデクを倒し晴れてチャンピオンとなったイリスですが、一時辞退。チャンピオンの座に正式に着くのは、プラズマ団との決着がついてからです。そして後半では懐かしのあの人、モスギスの登場です。やっぱり彼の口調を再現するのは難しい……度々出ているモスギスですが、バトルに関しては今回で終了です。強敵モスギス相手に、イリスはどのような立ち回りを見せるのか。次回もお楽しみに。