二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 423章 借用 ( No.572 )
日時: 2012/12/25 02:26
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「テレレレッテレー! マニューラ!」
 モスギスの二番手は鉤爪ポケモンのマニューラ。直立した黒猫のような姿で、頭部や首回りの赤い飾りは扇状になっている。
「悪と氷タイプのマニューラか。だったらお前にお任せようかな。出て来い、ズルズキン!」
 イリスが繰り出すのはズルズキン。マニューラと同じく悪タイプ持ちで、格闘タイプでもある。
「一気に行くぞ。ズルズキン、諸刃の頭突き!」
 ズルズキンを頭を突き出し、凄まじい気迫を伴い突進する。
 しかしマニューラは跳躍し、容易くその攻撃をかわしてしまった。モスギスの個体に限ったことではないが、このマニューラ、かなり素早い。
「おおっと危ない、厄介がバーゲンセール。奥さん奥さん、こっちにもいいものありますよ、スターフリーズ!」
 空中で攻撃態勢に入ったマニューラは、巨大な星型の氷塊を作り出し、ズルズキンへと投げつける。
「マグナムパンチ!」
 大砲のような勢いの拳を突き出し、ズルズキンは氷塊を破壊。そのままマニューラにも迫るが、
「キラーンとキラリン、するっと辻斬り!」
 マニューラの見事な足捌きでかわされ、鋭い鉤爪で切り裂かれる。
「くっ、もう一度マグナムパンチ!」
「シザークロス!」
 振り向いて拳を突き出すが、マニューラは屈んでおの攻撃を回避。切り上げるようにして交差した爪でズルズキンを切り裂いた
「お次のびっくり、辻斬りです!」
 さらにそのままズルズキンの脇をすり抜けて背後に回り、背中を切り裂く。通り間際にも切り裂かれたので、気付けば二連続で攻撃を受けていた。
 ズルズキンの攻撃がまともに入れば、耐久力の低いマニューラならほぼ一発で瀕死になるだろう。しかし、この素早さは厄介だ。ズルズキンの攻撃をことごとく回避し、その後の僅かな隙を狙って攻撃してくる。ダメージ量が少ないのがせめてもの救いか。
「くぅ、なんとしてでも一撃入れるぞ! ズルズキン、ブレイズキック!」
 振り向き様にズルズキンは炎を灯した足による回し蹴りを繰り出すが、マニューラはまたしてもジャンプで回避し、ズルズキンの頭の上に着地した。
 とんでもない位置に着地したマニューラに、イリスもズルズキンも驚きを隠せない。そのせいでマニューラの右腕が天に向けられているのに、一瞬だけ遅れた。その掌の周辺の空気は、ペキペキと凍り始めている。
「君もいつかは輝く星となる、きらきら光るお星さま。そうもすのように! スターフリーズ!」
 マニューラは左手でズルズキンの頭を押さえ、形成された星型の氷塊と入れ替わるようにそれを振り下ろす。
「ズルズキン!」
 流石にこの一撃は避けられず、ズルズキンはスターフリーズの直撃を脳天に喰らってしまった。今のは大きなダメージとなっただろう。
「まだだズルズキン! マニューラは空中、今がチャンスだ! マグナムパンチ!」
 ズルズキンは拳を固め、滞空状態にあるマニューラに向かって大砲の如き勢いの拳を繰り出す。しかし、
「おおぅ、またしてももすの下へと来るとは……モスギスさん感激! そんな君は応募者全員サービスをプレゼント! シザークロス!」
 マニューラの巧みな手腕により、ズルズキンの腕は交差した爪で受け流され、マニューラはそのままズルズキンの背中を滑るように地面へと降りていく。途中で攻撃することも、勿論忘れてはいない。
「うふふ! モスギスさん、うふふのふ! スターフリーズ!」
 マニューラは巨大な星型の氷塊を作り出し、ズルズキンへと投げつける。
「諸刃の頭突きで突っ込め!」
 対するズルズキンは頭を突き出し、物凄い勢いで突撃。氷塊を粉々に砕いてそのまま直進し、マニューラへと迫る。
「ぎょぎょっ! いつぞやのおかまさんですかっ!? あっ、おかまはお構いなくでしたね。てへっ、モスギスさんうっかり」
 とかふざけたこと言いながらも、マニューラはズルズキンの猛進をひらりとかわしてしまう。本当にズルズキンのことなど構っていないような動きだ。
「まだまだ! ブレイズキック!」
 ズルズキンは諸刃の頭突きの勢いを全て殺すことなく、むしろそれを利用するるように折り返し、その勢いのまま炎を灯した足で前蹴りを放つ。
 だがこれも、マニューラは軽くバックステップするだけで回避する。
「ぐっ、だったら連続だ! ブレイズキック!」
 続けて連続でブレイズキックを繰り出すも、マニューラは横にずれたり、後ろに退いたり、軽く跳んだりしてズルズキンの攻撃を全てかわす。
「もっすもすもすもす! その程度の攻撃では、もすの屍は超えられない! このもすを、超えてみるのです! スターフリーズ!」
 マニューラは突然大きく距離を取ったかと思うと、そのまま星型の氷塊を投げ飛ばす。
「! ブレイズキックだ!」
 寸でのところでズルズキンの蹴りが決まり、氷塊を粉砕する。
「まだだ、もっと攻めるぞ! ズルズキン、マグナムパンチも織り交ぜろ!」
 ズルズキンは炎を灯した足をそのままに、大砲とはいかずとも拳銃から射出される銃弾のように鋭い拳を繰り出し、マニューラを攻撃。
 キックとパンチが絶妙なタイミング、コンビネーションで繰り出される中、しかしマニューラはそれらの攻撃を全て捌き切っていた。
「なんて身のこなしだ、なら……ズルズキン、噛み砕く!」
 ズルズキンはここであえて頭を突き出すように前のめりになり、大口を開けて歯を剥き出しにする。
「もっす!?」
 モスギスも、わざとなのかどうか判断がつかないが、驚いたような声を上げる。
 それもそうだろう。このタイミングで噛み砕くという立直の短い技を使用する必要性は薄い、というよりほとんどないと言っていいだろう。しかも悪タイプの技は同じ悪タイプのマニューラには効果いまひとつ。
 予想外のこの攻撃に、マニューラも驚いて隙ができる。イリスはそう思ったのだが、
「マニューラ、ぬこ——もとい猫の手です!」
 マニューラはその無数の歯から逃げようとはせず、むしろズルズキンの口の中にその手を突っ込んだ。すると次の瞬間、マニューラの手は光る。
 かと思えばさらに次の瞬間、盛大に水飛沫を上げてズルズキンが吹っ飛ばされた。
「! ズルズキン!」
 背中から強かに地面に打ち付けられたズルズキン。だが、ズルズキンの防御は結構高い。手数で攻めるマニューラの攻撃では、そう簡単にやられたりはしない。
「今の技は、スプラッシュか」
 水飛沫が飛んだし、マニューラも腕に付いた水を振り落している。
「猫の手……確か、手持ちにいる他のポケモンの技を使用する技だっけ」
 となると、モスギスの手持ちにはスプラッシュを使うポケモンが最低でも一匹はいることになる。水技が弱点のメタゲラスはもう戦闘不能なので、炎技を使う時は気を付けるようにしようと、イリスは頭の片隅にその情報を残しておく。
「ズルズキン、あのマニューラの猫の手は少し厄介かもしれない。何が出て来るか分からない」
 技はランダムで選ばれるのでモスギスも使いどころは選ぶだろうが、こちらの弱点を突かれる大技や、能力を下げる技、後続を支援、もしくは妨害する技、極端なものでは一撃必殺の技なんかも飛び出るかもしれない。
 変幻自在に戦況をコントロールする悪タイプの力は、ギーマとのバトルで嫌というほど思い知らされた。
「でも、慎重になりすぎてもいけないな。ここは攻めるぞ、マグナムパンチ!」
 ズルズキンは拳を固め、大砲の如き勢いでマニューラへと突貫する。
(あれ? 避けないのか……?)
 だが、マニューラに動く気配がない。というか、構えてすらいない。避けるでも防ぐでも、構えを取らなければ動作が遅れるので、一瞬の差で攻撃がクリーンヒットすることだってままある。だがこのマニューラは、ここに来て構えすらしなくなった。
(構えなくても見切れるっていうのか? ならそれはそれで恐ろしいものだが……)
 何か嫌な予感がする。
 しかしズルズキンは止まらない。イリスが制止しようにも、マニューラにその拳が届くまでもう一歩というところまで来てしまっている。今更攻撃を中止することは出来ない。
 逆に言えばマニューラは、攻撃があと一歩で届くという距離にいてもなお、動く素振りを見せない——と思ったが、やっと動いた。
 しかしそれはイリスの予想していたものではなく、手を前に突き出しただけだ。
「何をする気——」
 刹那、マニューラの手が光る。それと同時に、イリスの脳でけたたましいアラームが鳴り響いた。

「マニューラ、猫の手です!」

 ズルズキンの拳が、マニューラを捉えた。身代わりでも影分身でもない本物の体に、力強い拳がめり込んだ。
 威力が四倍以上に膨れ上がったズルズキンのマグナムパンチを、マニューラが耐えられるはずもない。耐えられないのだが、それは耐える必要がないからだ。
 マニューラがドサッとその場に崩れ落ちる。

 同時に、ズルズキンも倒れ込んだ。



モスギス戦その二です。今回の終わりは、いつもとちょっと変えてみました。ズルズキンが倒れた理由は、次回明らかとなります。今回も文字数がギリギリなのであとがきはこの辺で。次回はモスギス戦その三です。お楽しみに。