二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 425章 土産 ( No.576 )
- 日時: 2012/12/27 00:53
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「テレレレッテレー! バンギラス!」
トコヤミをボールに戻したモスギスが繰り出したのは、鎧ポケモン、バンギラス。分類通り、頑強な緑色の鎧を纏った怪獣のようなポケモン。
バンギラスは登場と同時に大きく吠え、辺り一面に砂を含む風を発生させる。バンギラスの特性、砂起こしにより天候が砂嵐となったのだ。
「やっぱり来たか、バンギラス……!」
バンギラスは種族としての能力も高い強力なポケモンだが、タイプの相性で言えばダイケンキの方が有利。特性、激流も発動しているので長くは戦えないが、少しでも体力を削いでおきたい。
「鋭いものにはご用心。バンギラス、ストーンエッジです! ……お前もか、ジョニー……」
バンギラスは鋭く尖った岩を無数に浮かべ、それらを一斉に発射する。
「押し返せ! 吹雪!」
ダイケンキは襲い来るストーンエッジに対し、猛吹雪を放って沿い返そうとするが、ストーンエッジは吹雪の中を難なく突き進み、ダイケンキの体に突き刺さった。
「……!」
まさかこうもあっさり突き破られるとは思わなかったので、イリスバンギラスの攻撃力に素直に驚いた。
「もう一度、ストーンエッジ! ……ブルータス、お前までも……」
ストーンエッジの第二射が放たれた。見た感じでは、勢いは普通のストーンエッジに見える。
「今度は弾き返すぞ、シェルブレード!」
ダイケンキは二振りのアシガタナを構え、飛来する鋭き岩石を弾き返そうとする。
しかしどういうわけか、逆に弾こうとしたこちらの得物がストーンエッジによって弾き飛ばされてしまった。
「……?」
ここでイリスは、違和感を覚える。何かがおかしい。漠然としたものなので、何がおかしいとは言えないが……
「まあいい。ダイケンキ、一気に行くぞ! ハイドロカノン!」
ダイケンキは巨大な水の弾丸を生成し、バンギラスに向けて発射する。先ほどのように地面は抉らなかったが、それでもかなりの威力だろう。
だが、しかし、
「ぶち壊す!」
バンギラスが強靭な腕を振るい、強引にハイドロカノンを消し飛ばしてしまった。
流石にイリスも、この異常さには気付く。激流が発動しているダイケンキのハイドロカノンが、バンギラスと言えどもそんな簡単に消し飛ばされるはずがない。
考えられる原因は二つ。一つはバンギラスの攻撃がいつの間にか上がっていたとうこと。しかし、バンギラスの特性は砂起こしで固定、今までの技にしても、攻撃力を上げるような追加効果はない。見たところこのバンギラスは持ち物もない。
となると考えられる原因の二つ目。ダイケンキの攻撃が、下がっているということ。
それにしてもバンギラスが関わっている要素はないのだが、しかしイリスには心当たりがあった。
「まさか、あのトコヤミが……?」
トコヤミはダイケンキにやられる直前に、指を振るを使用していた。もしその時に、ある技が発動していたとすれば、ダイケンキの攻撃能力低下も頷ける。その技は——
「置き土産、ですか」
置き土産。悪タイプの技で、自分の体力を全て失う代わりに、相手の攻撃、特攻を二段階下げる荒業。
トコヤミはやられる直前に指を振るを使うことで、それを発動させていた。
「もうギャンブルとかいうより、無謀だろ……この世界に存在する全ての技の中から、ピンポイントで一つの技を使うなんて……」
本当は道連れにするつもりだったのかもしれないが、しかし置き土産でもダイケンキに大きな損害があることは変わりがない。なので、モスギスの作戦は概ね成功していると言って差し支えないだろう。
「夜中に一人で歩いていると、後から、ぐっさり刺されて、血みどろの中から……どうももすです、モスギスです。ストーンエッジ、グサッ!」
ストーンエッジの第三射が放たれ、容赦なくダイケンキの体に突き刺さる。
その攻撃で遂にダイケンキの体力は尽き、戦闘不能となった。
「戻れ、ダイケンキ。よくやってくれた」
イリスはダイケンキをボールに戻す。
ここまで、モスギスは道連れや置き土産といった、自身を犠牲にする技でこちらの戦力を削いでいった。
となるとこのバンギラスにもその手の技を覚えさせている可能性があるが、イリスはギーマとの戦いで一度失敗している。浅知恵は悪いが、深読みも危険だ。しかし、選ぶポケモンは慎重にならなければならない。
「こいつで行けるか……? 頼んだぞ、リーテイル!」
イリスが繰り出すのはリーテイル。岩技で弱点を突かれるが、こちらにも草技がある。何より機動力が高いので、バンギラスの大技なら大体はかわせるだろう。
「リーテイル、リーフブレード!」
リーテイルは高速でバンギラスに接近し、その巨体を切り裂く。反撃にと拳が飛んできたが、それも軽く回避する。
「もう一度リーフブレード!」
さらに返す刀で切り裂く。効果抜群が二連続なので、バンギラスにもそれなりのダメージが通っているはずなのだが、バンギラスはそのような素振りを一切見せない。
「連続でリーフブレードだ!」
リーテイルはバンギラスの反撃の手をかわしつつ、その鎧の如き体を幾度と切り裂く。バンギラスの周りを旋回するように高速で移動しているので、軽く残像が見えてしまう。
「おおぉ、なんということ。姿が見えません、流石ですね。速い! 美味い! 安い! 怒りの炎!」
ちょこまかと動き回るリーテイルに対し、バンギラスは怒り狂ったように燃え盛る憤怒の炎を放つ。
さしものリーテイルもその炎を掻い潜ることは難しいので、一旦離れて距離を取った。
「ジョニー! お前までも裏切るのか、ストーンエッジ!」
リーテイルを引き剥がすことに成功したバンギラスはそのまま鋭い岩を無数に浮かべ、リーテイルに向けて一斉に射出する。
「ドラゴンビートで打ち砕け!」
リーテイルは龍の鼓動のような強大な音波を放ち、襲い来る岩を全て粉砕してしまう。
「エアスラッシュ!」
そこからさらに空気の刃を飛ばし、バンギラスを怯ませて一気に接近。
「リーフブレードだ!」
そのまま尻尾の葉っぱを刃のように振るい、バンギラスを切り裂く。
ここまででバンギラスもかなりダメージを負っているはずなのだが、正直ダメージを受けているようには見えない。しかし体は傷ついているので、確実にダメージは溜まっているはず、攻撃あるのみだ。
「リーフブレード」
「さあさバンギラス、もすもすっとぶち壊すでスパパパーンです!」
リーテイルが葉っぱを振るうのに合わせてバンギラスも拳を突き出し、リーテイルの動きを牽制する。一撃でも致命傷となるリーテイルからすればバンギラスの攻撃は喰らいたくないので、必然的に体を流してその攻撃を回避するが、
「シュパパパーンとスプラッシュ!」
バンギラスはそのまま腕を振り下ろし、地面に叩き付けて盛大な水飛沫を飛ばしながらリーテイルを吹っ飛ばす。さらに、
「回る—、回るーよ、モスギスさんが回る—、ジェットコースターのように—……はい? ライモンジム? カツレツさん? あはい、美味しそうですね。怒りの炎で焼きましょう」
バンギラスは螺旋するように憤怒の炎を放ち、リーテイルに追撃をかける。
リーテイルは辛うじて態勢を立て直し、その業火を回避する。危ないところだった、今の攻撃を受ければ、ほぼ確実にリーテイルは戦闘不能になっていただろう。
「ストーンエッジ!」
しかしモスギスはリーテイルに休む暇を与えてはくれず、続けてストーンエッジの掃射が始まる。絶対に逃がさないと言わんばかりに広範囲に放たれた尖った岩がリーテイルに襲い掛かる。
「これは避けきれないか……リーテイル、リーフストーム!」
リーテイルは大きく背中の葉っぱを羽ばたかせ、嵐のような竜巻を引き起こす。さらにそれに鋭い葉っぱを加え、ストーンエッジを粉砕しながらバンギラスの巨体を飲み込んでいく。
「どうだ……?」
砂嵐の時だと岩タイプの特防は上昇するが、それを差し引いても今のリーフストームはかなりの高火力となっただろう。普通なら瀕死になっていてもおかしくはないが……
そう思いながらイリスはリーフストームに包まれたバンギラスを見遣る。
次の瞬間、リーフストームが弾け飛んだ。
「バンギラス、ぶち壊す!」
なんと、バンギラスはぶち壊すで葉っぱの嵐を消し飛ばしてしまった。とんでもない攻撃力だとイリスは戦慄するが、そんな暇もなかった。
「ドドーンとぶち壊すデス!」
バンギラスは凄まじい殺気を発しながらリーテイルへと突っ込んで来る。リーテイルはなんとか上昇して回避したが、
「ぐっさりとストーンエッジ!」
地面から飛び出た鋭い岩石がリーテイルの腹に突き刺さる。
「リーテイル!」
効果抜群の直撃を受けてしまい、リーテイルはあえなく戦闘不能になってしまった。
ううむ、なんだか今回はキーの乗りが悪いです。そんなわけでモスギス戦その四がやってきました。今回は遂に強敵、バンギラスの登場です。でも、まだ後にあいつがいますからね……それにしても、モスギスはギーマ以上のギャンブラーですよね。猫の手や指を振るで道連れや置き土産を使用。空恐ろしいです。では次回はモスギス戦その五。たぶん、その六ぐらいで決着になりますかね。次回もお楽しみに。