二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 426章 恐竜 ( No.577 )
- 日時: 2012/12/29 00:08
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「戻れ、リーテイル」
イリスはリーテイルをボールに戻す。これで残っているポケモンは一体だけとなった。
「相手はバンギラスだし、後に控えているのはたぶん——だったら相性的に、断然エルレイドなんだけど……」
そこでイリスは逡巡する。エルレイドなら、確かに悪タイプ使いのモスギスには有利に戦える。しかし、相手がモスギスだからこそ、一緒に戦いたいポケモンがいる。
どちらが最善か、どちらが自分にとって、強くなるための糧となるか、頭の中で思い巡らせる。そして、
「やっぱりお前しかいないよな。さあ、トリは頼んだぞ! ディザソル!」
イリスの最後のポケモンは、ディザソル。
いつかモスギスと戦った時は、エルレイドとリーテイルがバンギラスの体力を削り、ギリギリのところでアブソルがディザソルに進化したため、バンギラスには勝利することができた。
だが後続のポケモンにはあっさりとやられ、しかも今回はリーテイルだけしかバンギラスの体力を削ってはいない。以前よりも苦しいバトルになることは必至だ。
「でも、ここでリベンジしなきゃ、いくら勝てたってディザソルの気は収まらない。だよね、ディザソル?」
イリスの問いかけに、ディザソルは小さく頷く。
でぃそるのリベンジを果たすためには、まずはバンギラスを倒す。本命はそれからだ。
「行くぞディザソル! 神速!」
ディザソルは神がかったスピードでバンギラスに突撃する。しかし効果はいまひとつ、決定打には乏しいが
「続けてスプラッシュだ!」
そのままディザソルは片足を軸にして、回転するように水流を纏った尻尾をバンギラスに叩き付ける。遠心力も加わった効果抜群の攻撃、これは効いただろう。
「中々の中々で中々な攻撃ですが、まだまだですね。今度バトルする時はどの程度磨かれているかテストさせていただきます。そういうわけで、ペケポン。ストーンエッジ!」
バンギラスも黙って攻撃を喰らいはしない。鋭く尖った岩を無数に発生させ、降り注ぐようにディザソルへと発射する。
「神速で後ろに回り込め!」
しかし正面にしか攻撃が届かないのであれば、恐れることはない。ディザソルは超高速でバンギラスの後ろを取り、体当たりするように激突する。勿論、これだけではダメージは小さいが、
「スプラッシュ!」
続けて放たれる一撃が、水飛沫を散らしながらバンギラスを捉える。さらにディザソルの特性、強運により急所を突く一撃だったため、バンギラスにも相当なダメージが通っているはずだ。
「なんてこった、攻撃が通じません。バンギラス……新聞は……いりま……ツー……ふん……あはい。違いますか? では怒りの炎です」
バンギラスは振り向かずに自分を取り囲むような業火を放ち、ディザソルを引き剥がす。ディザソルもバンギラスから離れ、一度正面に立ち相対する。
「パカーンとストライクです! バンギラス、ぶち壊す!」
「バンギラスの攻撃は大振りだ。ディザソル、かわして辻斬り!」
拳を振りかぶり、凄まじい気迫と共に突き出すバンギラス。対するディザソルは大きく跳び、宙返りをするようにバンギラスの拳を回避する。
そしてディザソルの漆黒の鎌が、バンギラスの頭部から腹部を切り裂いた。
その一撃でバンギラスはバランスを崩し、砂煙をあげながら地に伏す。戦闘不能だ。
「よしっ、よくやったぞディザソル」
とりあえず最初の関門はクリア。問題は、ここからだ。
「もすをここまで追い詰めるとは、流石はイリゼさんの息子さん。モスギスさん、久しぶりに興奮してきちゃいました、えっふん」
よく分からない声を上げながら、モスギスはバンギラスをボールに戻す。そしてそのバンギラスと入れ替わる次のボールを、構えた。
「それでは、行きますよ?」
おどけた調子ではあるが、モスギスと、モスギスがもつモンスターボールから、言いようもない威圧感を感じる。だが、ここで挫けるわけにもいかない。自分自身のためにも、ディザソルのためにも。
モスギスが構えたボールが、今、開かれる。
「テレレレッテレー! ティラノス!」
最後に繰り出されたモスギスのエースポケモン。暴君ポケモン、ティラノス。
バンギラスの三倍を超える褐色の巨躯。如何にも頑強な各部。鋭くも荒々しい眼光。その姿は、見るもの全てを威圧し、ねじ伏せるかのような気迫に溢れている。
しかし、イリスもディザソルも、その姿に恐怖を覚えることはない。その猛々しき恐竜を、倒すと決めたから——
「ティラノス、ぶち壊す!」
「ディザソル、辻斬りだ!」
ティラノスはその巨体からは考えられないようなスピードでディザソルに突貫。ディザソルもその一撃を跳躍して華麗に回避し、ティラノスの急所を的確に切り裂く。
「続けてスプラッシュ!」
地面に降りたディザソルはそのまま体に水流を纏い、飛沫を散らしながらティラノスに突撃する。効果は抜群だが、ティラノスは少し体を揺らすだけで、姿勢は全く揺るがない。
「グランボールダです!」
突如としてディザソルの周囲の地面から、大小様々な岩石が飛び出す。その岩石たちはディザソル目掛け、一直線に襲い掛かるが、
「怒りの炎!」
ディザソルが放った怒れる業火により、襲い掛かってきた岩石はことごとく消し炭にされる。
岩タイプの中でもトップクラスの大技であるグランボールダを燃やし尽くすほどの炎。その存在が、ディザソルのこの戦闘にかける意思の強さを表していた。
「続けて行くぞ、神速!」
ディザソルは燃え尽きた岩石などには目もくれず、神の如き速度でティラノスに突撃する。それも一度ではなく、多角的に何度も何度も、その巨体にぶつかっていく。
「このままでは兄さんに怒られてしまいますねぇ……ティラノス、フレアドライブ!」
突如、ティラノスの巨躯に炎が灯される。そのため、ディザソルもティラノスから距離を取ったが、それがいけなかった。
荒々しい火炎を纏ったティラノスはそのまま凄まじい気迫、覇気、殺気を発しながら、ディザソルへと突撃していく。
「! スプラッシュ!」
中途半端に距離を取ってしまったために、トップスピードに乗ったティラノスから逃れることはできない。ならばと咄嗟に水流を纏ってティラノスの攻撃を受けたが、ディザソルの攻撃力ではティラノスには叶わない。競り合うことなくディザソルは吹っ飛ばされた。
「ディザソル、大丈夫か!?」
むくりと起き上がり、ディザソルは頷く。寸でのところで出来る限り勢いを殺したようだ。流石はディザソルと、イリスは心の中で称賛する。
「直撃でも勢いを殺してダメージを軽減する。これなら行ける……!」
イリスはモスギスとのバトルが決まってからこのティラノスとディザソルのバトルを最初から想定していたのだが、正直、ディザソルが勝てるビジョンがあまり見えてこなかった。
というのも、ティラノスは半端ない攻撃力と、恐らく防御力も高いだろうと踏んでいたからだ。端的に言うと、バンギラスの強化版というような捉え方をしていた。
なので手数で攻める戦法を使おうとしていた、というよりそのような戦い方しかできないのだが、そうなると大きな問題が一つ出て来る。それが、相手からの反撃だ。
当たり前の話だが、相手からの攻撃を受けずに勝利することは、相当難しい。相手の実力が大きく劣っているというのならともかく、相手は四天王モスギス。そう簡単に勝てる相手ではない。
なのでヒット&アウェイ戦法にしても、いつかは反撃を喰らってしまい、その一撃でやられてしまうのではないかと懸念していたのだが、ディザソルが相手の攻撃の勢いを殺して受けてくれるというのなら、勝率はグンと跳ね上がる。
「よし、このまま突っ切るぞ。ディザソル、辻斬り!」
ディザソルは漆黒の鎌の如き刃を黒く煌めかせ、ティラノスへと駆けていく。
「そう簡単に行きますかね? ティラノス、ぶち壊す!」
ティラノスは大きく咆哮し、全てを畏怖させるような凄まじい勢いでディザソルへと突撃する。
悪の力を持つ双方のポケモンが、今、交錯する——
遂に来ました、モスギス戦その五。相手はディザソル因縁の敵、ティラノスです。因縁って言っても、一回しかバトルしてませんが。そういえば書いていて気づきましたが、ディザソルとティラノスって字面似てますよね? 一応さっと見直してはいますが、もしかしたら打ち間違えてるところがあるかもしれません。指摘してくださればその都度修正しておきますので、お申し出ください。まあ、本当は自分で見つけなきゃいけないことなんですけれど。なにはともあれ、モスギス戦もそろそろ決着です。次回はモスギス戦その六、因縁の対決に決着の時です。お楽しみに。