二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 431章 実姉 ( No.593 )
- 日時: 2012/12/31 17:56
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
場所は変わって、ヒオウギシティの中心部の広場。ここではPDOヒウン支部統括にして、プラズマ団からも危険人物認定されたトレーナー、リオが幼馴染のアキラを引き連れてプラズマ団を薙ぎ払っていた。
「くっそ、倒しても倒してもキリがねぇ……つーかこいつら、前に戦った時よりなんか強くなってね? 服も違うしよ」
「私が知るわけないでしょ。でも確かに、前までとは違う感じね……!」
アキラはハサーガ、リオはドラドーンを繰り出し、わらわらと湧いてくる下っ端どもを次々と蹴散らしているのだが、その数が異常なほど多い。
「……なぁ、リオ」
「なに——あ、ドラドーン、凍える風!」
アキラの意識がリオに向いた刹那、間が悪いことに下っ端のクロバットが攻撃を仕掛けてきたが、ドラドーンの凍える風により吹き飛ばされた。
「もう、よそ見しない! ただでさえ数が多くて捌くのに手間がかかるのに」
「いや、それについては同感なんだが——ハサーガ、怒りの炎だ! ——こいつら、最初に空から見た時よりも、数多くねぇか?」
「そんなことあるわけ……?」
アキラに言われて、リオもその異変に気付いた。
プラズマ団の数が多いのは納得もできることなのだが、おしくらまんじゅうのように路地裏に密集していたり、民家の屋根の上に立ち並んでいたりして、妙ではあった。
いくらリオが最重要危険人物だとしても、たった二人のトレーナーに対してここまで人員を割くものだろうか。リオやアキラの他にも、ミキやザキだってヒオウギで戦っている。しかし今視界に広がる団員の数と、今まで倒してきた団員の数を合わせれば、その数は相当なもの。そこまでプラズマ団は戦力があるのだと言えばそれまでだが……
「……試してみる価値はありそうね。アキラ、このプラズマ団全員薙ぎ払うから、ハサーガで壁を作って。ドラドーン、ハリケーン!」
「な、ちょ、おいっ!」
アキラの制止も訊かず、リオはドラドーンにハリケーンを指示する。
ドラドーンは強力な暴風を放つ。しかも一方向ではなく、この場所全体を吹き飛ばすかのような荒々しくも強大な爆風だ。
プラズマ団たちは冗談でなくポケモンもろとも空の彼方へと吹き飛ばされていく。リオやアキラはハサーガが壁となって爆風を防いだので、吹っ飛ばされることはない。
プラズマ団は綺麗に一掃されたが、しかし、二つの影がまだそこには残っていた。今まで姿を現さなかった、二人が——
「おやおや、見つかってしまいましたか。少々軽んじて見ていましたが、最重要危険人物の幼馴染というだけあって、なかなか鋭いですね」
「あの軽薄男のことだし、どうせ女団員にでも見惚れてて気付いたんでしょ。買いかぶりすぎよ」
一人は黄色い髪に執事服を身に付けた男。7Pの一人、エレクトロ。
もう一人は緩いウェーブのかかった金髪にチャイナドレスと豪奢な装飾で着飾った女。エレクトロ率いる聖電隊の精鋭であり、リオの実姉、マオ。
そしてその二人の傍に降りてきたのは、幻影ポケモンのファントマだ。
「久しぶりね、リオ。直接会うのは何年振りかしら」
「お姉ちゃん……!」
全てを見下すような態度のマオと、険しい目つきで相対するリオ。しかしリオの瞳は、怒りや困惑よりも悲哀や悲愴で溢れていた。
「何で……昔からプライドは人一倍高かったけど、それでもまっすぐにトレーナーの道を歩んでいたのに、何で……!」
痛切なリオの言葉に対し、マオはあっさりと答える。
「貴女を倒すために決まってるでしょ、リオ。プラズマ団は根性が腐ってるような連中が大半を占める組織だけど、その力の強大さだけは認めるところ。それに、貴女が目障りでしょうがないゲーチスには、私も賛同できる」
ただ姉の言葉を聞くだけで苦しそうに呻くリオと、反対に口を開くだけで勝ち誇ったように晴れ晴れとしたマオ。こうして見れば、まるで正反対だ。
「……さて、恐縮ですが愛憎入り混じった姉妹愛は今は置いといてもらいましょう。我々の役目はあくまで貴方達の足止め、あわよくばここで屠ることです・ご容赦を」
エレクトロは隣でガン飛ばしてくるマオのことなど気にも留めず、話を進めていく。
「夢の時間です、ファントマ」
エレクトロは隣で浮いているファントマを前に送り出す。初手はこのポケモンのようだ。
「……さっきの幻は、そのファントマね」
とりあえずバトルになると気持ちを切り替えたリオが、ファントマを見てそう指摘する。
「ええ、その通りです。以前もお見せしましたが、ファントマは幻影ポケモン、相手に幻を見せることなど容易いのです。あのまま精神的に疲弊したところを襲って、制圧してしまおうと思ったのですが、思いのほか早く気付きましたね。あの時は邪魔が入ってしまいましたが、今回はどうでしょうか?」
丁寧ながらも嘲るようにエレクトロは言う。確かに以前、このファントマと戦った時はシャンデラですら歯が立たなかったほどの強敵だが、もうその対策は出来ている。
「望むところ。今度こそ、そのファントマを撃ち破ってあげる」
リオは一旦ドラドーンを戻し、取り出した新たなボールを握り締めてエレクトロをまっすぐに見る。二人は互いに火花が散るような激しい闘志を放っていた。
「……となると、俺のあいては——」
ことを静観していたアキラは、もうバトルモードに入っているリオとエレクトロから視線をマオに逸らす。
「私としては不満だけど、ここは引き下がってあげる。光栄に思いなさい、アキラ。二度もこの私と勝負できるのだから」
「悪ぃけど、今回ばかりはあんまふざけてられる状況でもないみたいだわ。無鉄砲な幼馴染がすぐそこにいる手前、恰好悪ぃとこ見せらんねぇしな」
アキラはいたって真面目——必至ともとれる顔つきで、ハサーガをボールに戻す。
「……マオ、少し離れていた方がいいでしょう。今日の私は調子が良い。解放状態に加えて九割……いえ、久しぶりに十割の力がだせるかもしれません。その余波を受けたくないのなら、十九番道路辺りで戦うのが賢明でしょう」
アキラとマオも火花を散らす中、エレクトロが手袋を外しながら忠告する。
対してマオは舌打ちし、ボールを一つ取り出した。
「出て来なさいララミンゴ」
マオが出したのは、水鳥ポケモンのララミンゴだ。
マオはララミンゴに肩を掴ませると、そのまま北の方へと飛び去ってしまう。
「って、元から期待はしてなかったが、俺は置いてけぼりかよ。飛べるポケモン連れて来ればよかったぜ」
愚痴るように息を吐いて、アキラもマオが飛んで行った方角へと走り出す。
「アキラ。お姉ちゃんのこと、頼んだよ」
「ああ……任せとけ」
二人は軽く言葉を交わし、アキラはそのまま離れていく。
これでこの場に残されたのは、リオとエレクトロの二人だけとなった。
「……さて、それではプラズマ団の境界を刻みましょう」
エレクトロの手の甲が鈍く光る。その光に照らされるだけで、気圧されるような威圧感があるが、リオは気丈になる。
「負けない。貴方には、絶対に! プリン!」
リオが繰り出したのは、風船ポケモンのプリン。胸の辺りには、ペンダントのように加工された紫色の石が付けてある。
「ほぅ、プリンですか。優秀な特性を持つポケモンですね。それに、進化の輝石……」
エレクトロはプリンが付けている石を見て呟いた。
進化の輝石とは、進化前のポケモンの防御能力を上昇させる道具。この道具の発見により、今までは『弱い』とみなされていた多くの進化前ポケモンが脚光を浴びている。
「ですが、それで私のファントマを倒せますかね。ファントマ、黒い霧です」
最初に動き出したのはファントマだ。技名通り、ファントマは口から黒い霧を大量に吐き出し、プリンとリオの視界を完全に塞ぐ。
「煉獄!」
続け様にファントマの攻撃が繰り出される。黒い霧を破って、燃えたぎる業火がプリンに襲い掛かるが、
「プリン、逆噴射でかわして!」
事前に大きく空気を吸い込んでいたプリンは大きく息を吐き出し、その逆噴射で煉獄を回避する。しかも、それだけではなかった。
「黒い霧が……」
吐き出された空気はその勢いのまま、視界を遮っていた黒い霧を吹き飛ばしてしまう。それによって、ファントマの位置も明確になる。
「地球投げ!」
プリンは勢いを殺さずにファントマに接近し、燃える体をしっかりと掴んで空中へ跳ぶ。そして落下の勢いを合わせ、ファントマを地面に叩き付けた。
7Pのポケモンならば当然レベルも高い。なら、地球投げの威力もそれだけ大きくなり、ファントマはそれなりのダメージを受けた。
「安直な策ですが、やりますね。この前と同じようには行きませんか」
「当然。それに、私のプリンの力は、まだまだこんなものじゃないわよ」
リオとエレクトロ、二人の因縁はまだまだ続く。そしてこのバトルは、そのほんの一部にすぎないのだった。
今回はリオとエレクトロ、アキラとマオのバトルフラグです。なんだか最近バトル描写が少なくなってきて、申し訳ないです。そろそろ英雄サイドとプラズマ団サイドで、各キャラの因縁も出来てきました。では次回はミキとザキについて書こうと思います。まあ急遽変更はよくあることですが。それでは次回もお楽しみに。