二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 432章 算木 ( No.597 )
日時: 2013/01/01 22:40
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 イリスやリオがヒオウギで行動している頃、ミキとザキのペアはサンギタウンにて、プラズマ団と交戦していた。
 サンギタウンもヒオウギほどではないがプラズマ団がひしめいており、二人は片っ端から団員たちを蹴散らしている。
「フィニクス、ドラゴンビート!」
「テペトラー、マグナムパンチ!」
 フィニクスは龍の音波を、テペトラーは破壊の拳をそれぞれ繰り出し、プラズマ団をポケモンを吹き飛ばす。しかし、
「うぅ、倒しても倒してもキリがないよ……」
「まったくだ。それに、逐一ぶっ飛ばすのも一苦労だぜ、こりゃ」
 最初の頃は比較的簡単に敵を蹴散らしていた二人だが、途中から強い者を送り込んできたのか、相手が手強くなっている。二人のポケモンでも、一発二発ではなかなか倒れない。
「ったくよ、急に強くなりやがって。しかも周りは女ばっかりだしよ」
「え?」
 ザキの吐き捨てるような何気ない一言に、ミキは反応した。
 マスクをしているので分かりにくかったが、確かに二人を取り囲んでいるのは全て女性団員だ。しかもよく見れば町の住民——恐らくプラズマ団が私服で偽装している——もポケモンを繰り出して、二人を襲っている。
「しっかしこんだけ多けりゃ姦しいどころか喧しいな。なんだって女ばっかりなんだよ」
 苛立ったようなザキの発言。とその時、前方から人の気配を感じ取る。冷たい氷柱のような気配だ。

「女性ばかりなのは当然です……氷霧隊は女性団員のみで構成されていますからね……」
「やっほー。ミキちゃんザッキー、フレイちゃんだよー」

 現れたのは、身長とほぼ同じ長さの青い髪に、水色のワンピース。冷たく突き刺さるような瞳でザキたちを見据える女。7Pレイ。
 そしてレイに抱きかかえられている、赤く長いポニーテールに簡素な薄桃色の浴衣を着た少女。7Pフレイ。
 二人が現れた時にはもう、他の団員たちは皆、敬礼なり頭を下げるなりしていた。この光景から二人が上司としてよく慕われているのが分かるが、その視線はほとんどレイに注がれている。
 ただその光景を目にしたザキは、どこの軍隊だよ胸中でツッコむ。
「氷霧隊……ってことは、師匠が手も足も出なかったって言ってた
あの青い髪のお姉さんが、この人たちを率いてるんだ」
「つーかザッキーって俺のことかよ」
 嫌そうに眉を寄せるザキだが、二人はそんなこと意にも介さず話を進める。
「今の状況から分かると思いますが、あなたがたの相手はわたくしたちが務めます……本来ならこのまま人海戦術で数にものを言わせて押し切れるのですが、そうなれば時間もかかりますし、彼女たちの負担も大きい……それにあなたには私怨もありますしね」
 そう言ってレイはザキを睨み付ける。
「フォレスが最近あたしに冷たくてさー、全然構ってくれないからレイに慰めてもらおうと思ったんだけど、レイも忙しいみたいだしー、だったらミキちゃんと遊びたいなーってねー」
 ミキに視線を向けながら、にへらーと笑うフレイ。
「……まあ、あのまま雑兵相手にしててもつまんねぇし、こっちの方が手っ取り早そうだ。……ミキ」
「うん。私も、大丈夫」
 そういうわけで、対戦相手は決定した。あとはフィールドだ。
「……フレイちゃん、わたくしも解放します……離れていた方がいいでしょう。わたくしも、あなたは巻き込みたくない……」
「はーい、んじゃ場所を移そうかー」
 言ってフレイは軽く袖を振り、ボールを一つ取り出す。そしてそのボールから、メタグロスを繰り出した。
 レイはフレイをそっとメタグロスの上に乗せる。
「そんじゃー、サンギ牧場で待ってるよー。こっから北西、二十番道路を北に抜けたとこだから、道間違えないでねー?」
 そう言い残すと、フレイはメタグロスに乗って去って行ってしまった。
「……じゃあ、兄さん」
「ああ、行ってこい。なんでもあのフレイとかいう奴のエースは、あの野郎ですら叶わなかったって言うじゃねぇか。お前が仇でもなんでも取ってきやがれ」
「うん……行ってきます」
 そしてミキも、フィニクスに乗って北西の方へと飛び立っていく。
 気付けば下っ端団員たちもいなくなっており、この場にいるのはザキとレイだけとなった。
「……あん時は、悪かったな」
「あの時……?」
「P2ラボつったか。あそこで殴ったことだよ」
「ああ……」
 レイは無表情ながらも今ようやく思い出したように声を上げる。
「別に、気にしてません……わたくしの私怨は、もっと別のものです……」
「そんでもけじめはつけとかねぇとな……出て来い、ヘルガー」
 ザキはテペトラーを手早くボールに戻すと、ダークポケモンのヘルガーを繰り出した。
「……おいでなさい、ヤミクラゲ」
 対するレイのポケモンは、水・悪タイプのポケモン、ヤミクラゲ。タイプ的には、攻防共に相性が良い。
 そしてヤミクラゲが場に出た瞬間、レイの両脚の光が漏れる。これでレイも解放状態。
「先制攻撃の権利はくれてやる。リオの昔馴染みだとかいう軽薄眼鏡野郎じゃねぇが、レディーファーストって奴だ。この前の侘びのつもりじゃねぇが、ありがたく受け取れ」
「押し付けがましい権利ですね……ですが頂いておきましょうか。ヤミクラゲ、危険な毒素」
 ヤミクラゲは毒々しい塊を生成し、放物線を描きながらヘルガーへと投げつけた。この一撃は、威力云々以前に当たれば危険だろう。
「ヘルガー、ダークロアー!」
 だがヘルガーは闇の咆哮を上げ、あっさりと毒の塊を粉砕してしまう。さらに、
「悪巧み!」
 ただでさえ狡賢い脳をさらに活性化させ、特攻を高める。
「火炎放射だ!」
 そして放たれる灼熱の火炎。悪巧みで特攻が上がっているので、文字通りの高火力だが
「吹雪です」
 ヤミクラゲが放った凍てつく猛吹雪により、放射された炎が消し飛ばされてしまった。
 風を利用する吹雪とはいえ、氷技で特攻が二段階上がった状態の火炎放射を吹き飛ばす辺り、7Pの強さが現れている。
「まだだ! ヘルガー、放電!」
「ヤミクラゲ、悪の波動です」
 ヘルガーは周囲にまき散らすようにして電撃を放ち、ヤミクラゲは悪意に満ちた波動を放つ。
 広範囲にまき散らされた電撃はヤミクラゲを捉えるが、悪の波動も放電を突き破ってヘルガーに直撃する。互いに一瞬怯むが、すぐに態勢を立て直し、
「悪巧み!」
「させません。悪の波動」
 ヘルガーがさらに特攻を上げようとするも、連続で悪の波動が飛び、またもヘルガーに直撃。悪巧みが中断される。
「危険な毒素です」
 そしてヤミクラゲの連続攻撃、毒々しい有害物質の塊を生成してヘルガーに投げつける。放物線を描く軌道だが、弾速は意外に速い。
「チッ、ダークロアー!」
 ヘルガーは闇の咆哮を放って毒素を粉砕し、
「もう一発ダークロアー!」
 続け様にもう一度ダークロアーを撃ち、ヤミクラゲを攻撃する。悪巧みで特攻が上がっているとはいえ、相手は悪タイプで特防の高いヤミクラゲだ。威力は半減され、ダメージはあまり通っていない。
 けれどその一撃は、確かにヤミクラゲの動きを一瞬だけ止めた。
「今だヘルガー、悪巧み!」
 その一瞬の隙を突いてヘルガーは、脳をさらに活性化させる。これでヘルガーの特攻は四段階上昇。効果いまひとつの技でも、相当な威力になるだろう
「火炎放射!」
 ヘルガーは口から燃え盛る火炎を放つ。まるで火事でも起こっているかのような大火力の炎だ。
「ヤミクラゲ、吹雪です」
 ヤミクラゲは最初と同じように吹雪で消し飛ばそうとするが、今度は流石に火炎放射の火力が上回り、吹雪を突っ切ってヤミクラゲの体を焼き焦がす。
「追撃だ、ダークロアー!」
「重ねてください、悪の波動です」
 ヘルガーは大地を揺るがすほどの破壊力を秘めた咆哮を放ち、ヤミクラゲは複数発の悪の波動を一点にまとめて撃つ。
 咆哮と波動がぶつかり合い、しばし競り合ったが、やがて互いに相殺された。
「もう一発ダークロアーだ!」
「広げて悪の波動」
 連続でダークロアーを放つヘルガー。ヤミクラゲも同じように悪意に満ちた波動を連続発射する。
 しかし今度は、咆哮が確実にヤミクラゲを捉えた。それと同時に、連続で放たれた悪の波動が、一斉にヘルガーを襲う。
「……やってくれるじゃねぇか。前よりも強くなったんじゃねぇの?」
「どうでしょうね。ただ、わたしも根本はあなたがたと同じです。いつまでも同じ場所に立っているはずがありません」
 二人はそれぞれ鋭い目つきで睨み合う。

 PDOザキと、7Pレイ。この二人の因縁も、まだまだ続くのであった。



HAPPY NEW YEAR! もう夜ですが、あけましておめでとうございます。今回は実は作者のお気に入りペアであるミキ&ザキとレイ&フレイの計四人が登場です。いやーにしてもザキのシスコン設定がもう霞んでますね。なんだか口調が荒っぽい不良キャラの道を歩んでいるような気がしてなりません。次回は誰かのバトルを進めるか、もしくはもう一組バトルフラグを立てようか悩んでおります。というわけで次回は未定です。それではみなさん、今年も白黒と『混濁の使者』をよろしくお願いします。目標は今年中に完結することです。次回もお楽しみに。