二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 435章 牧場 ( No.600 )
- 日時: 2013/01/04 01:02
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
サンギ牧場。
ここは元々草原だった場所で、自然とポケモンや人間が集まり、今のような牧場となった。
北側には広い雑木林となっており、その奥の奥に、二人の少女が向かい合っていた。ミキとフレイだ。
「二人っきりになったからもうぶっちゃけちゃうけどさー、あたしね、実は君のこと注目してるんだよー?」
「……注目?」
ミキは訝しげな視線をフレイに向けるが、構わずフレイは続けた。
「そそー。波長が合うっていうのかなー? なーんか君を一目見た時から、友達になれそうな感じがするんだよねー」
「……残念だけど、少なくとも私はプラズマ団とは友達にはなれないよ。それは、兄さんやリオさんや、師匠たちの意志に背くことだから」
「そっかー……でも、そーいうところが好きなんだなーあたしはねー」
フレイはここまで乗ってきたメタグロスの上でゴロゴロしつつ、袖から出したボールを掴む。
「フォレスはいつもあたしのことをトロいとかノロマとか言うからさー、今回はちゃんと本気で戦おうと思うんだー……対戦形式も、手っ取り早く三対三にしようよー」
言いながら、フレイの右腕が鈍く光る。その光景にミキは少し怯んだが、すぐに気を取り直してボールを握り込む。
「まーまー、そんじゃあプラズマ団の境界を刻んでいくよー。ニートン、出番だよー」
フレイが繰り出したのは、怠けポケモンのニートン。人型でぷっくりとしたぬいぐるみのような体型はフレイと対照的だが、気だるげなオーラは似通っている。
「ニートンはゴーストタイプ。なら、出て来て、カミギリー!」
対してミキが繰り出したのは、悪・虫の複合タイプをもつカミギリー。タイプ相性では有利なポケモンだ。
「先手はあげるよ、というよりニートンは動く気ないっぽいから、そっちから来てくれないと困っちゃうなー」
フレイはいつもの調子で先制権を譲る。どうやら解放すると、テンションも安定するようだ。
「それじゃあお言葉に甘えて。カミギリー、辻斬り!」
カミギリーは二対の腕を構えてニートンに突っ込み、通り間際に四度切り裂いた。
「跳び膝蹴り」
が、しかしすぐにニートンの反撃が繰り出される。ニートンは振り向き様に膝を突きだし、カミギリーを蹴り飛ばした。
「っ! カミギリー、サイコカッターだよ!」
吹っ飛びながらもカミギリーは、空中で態勢を立て直して念動力を固めた刃を飛ばすが、
「ウッドハンマー」
樹木の力を込めたニートンの拳で、刃を粉々に粉砕される。
「まだまだこれから、シャドーパンチだよー」
さらにニートンは拳を振るい、ロケットパンチのように影の拳を発射。必中技であるためこれをカミギリーは避けられず、直撃を喰らう。
効果はいま一つのはずだが、予想以上のダメージを受けた。
「これが、師匠の言ってた解放状態か……やっぱり強い。カミギリー、鋼の翼!」
カミギリーは薄い翅を開くと、それを鋼のように硬化させてニートンに突撃する。
「迎え撃ってー、跳び膝蹴り」
ニートンもカミギリーが突っ込んで来るのに合わせて強烈な膝蹴りを繰り出すが、カミギリーは膝蹴りの瞬間に高度を上げてその一撃を回避した。すると、
「おぉ!?」
ニートンは勢い余って地面に激突してしまう。
跳び膝蹴りは攻撃が失敗した時にダメージを受けてしまう技。そのためニートンは、自ら手痛いダメージを被ってしまった。
しかもその直後、カミギリーの鋼の翼がクリーンヒット。ニートンは体力をごっそり削られてしまった。
「まだまだ! サイコカッター!」
「きっついなー。ウッドハンマー」
カミギリーが飛ばす二つの刃を、ニートンは樹木の力を込めた両腕を振るって粉砕する。
「シャドーパンチ」
そして続け様に影を纏った拳を放つ。シャドーパンチは高速でカミギリーに向かっていく。
「辻斬りで斬って!」
しかしその拳は、カミギリーの爪で切り裂かれてしまう。さらにカミギリーはそのままニートンに向かっていく。
「今度はさっきみたいなヘマはしないよー。ニートン、ウッドハンマー」
ニートンは拳に樹木の力を込めて振るう。その一撃はカミギリーの爪とぶつかり合い、そのまま吹っ飛ばす——
「カミギリー、襲撃!」
——かと思いきや、カミギリーはすぐに身を退いてニートンの背後に移動。四つの腕をフルに使った連撃を叩き込む。
「続けて辻斬り!」
「そう何度もやらせないよ。ウッドハンマー」
ニートンは樹木の力が宿った拳で反撃しようとするが、如何せん動きが鈍い。背後に拳が届く頃には、カミギリーの斬撃と回避行動は既に終わっていた。
「うーん。やっぱりニートンじゃきっついなー。まーそれはしょうがないかなー?」
体力もかなり削られて劣勢となっているニートンを見て、フレイはそう呟いた。
「カミギリー、鋼の翼!」
しかしカミギリーの猛攻は止まらない。薄い翅を硬化させ、ニートンへと突っ込んでいく。
「跳び膝蹴りじゃあよけられるし、ウッドハンマーも同じかなー? シャドーパンチだと効き目が薄い……じゃ、この辺でいきますかー」
フレイはゴロゴロ転がって仰向けになり、バトルが始まってからほとんどその場から動いていないニートンに指示を出す。
「ニートン、大欠伸!」
突撃してくるカミギリーに向かって、ニートンが取った行動は、欠伸である。それも大口を開けた欠伸で、傍から見れば間抜けなところを晒していると同時に、隙だらけである。
しかし、そんな隙はこの技にとっては些末なもの。なぜなら、ニートンがその欠伸をした次の瞬間、カミギリーは地面に落下したのだから。
「え……カミギリー!?」
カミギリーは目を閉じて地面に横たわっている。眠り状態になってしまったようだ。
ミキが困惑する中、フレイはいつものゆるい調子で口を開く。
「大欠伸は相手を眠り状態にしちゃう技だよ。そんでもって、眠り状態はポケモンが最も無防備な状態の一つ……ニートン、跳び膝蹴り!」
ニートンはゆっくりとした歩調でカミギリーに歩み寄ると、首根っこを掴んで空中に放り投げる。そして片足で跳び上がると、もう片方の足の膝をカミギリーの腹に突き込んだ。
「さーてお次は、シャドーパンチだよ」
空中に打ち上がったカミギリーに、ニートンはさらに影の拳を放つ。
「ウッドハンマー」
次にニートンは大きくジャンプし、樹木の力を宿した両拳を合わせ、振り下ろす。
カミギリーはその一撃を喰らい、地面にめり込むほど叩き付けられる。しかし、まだこれだけでは終わらなかった。
「これでフィニッシュ、跳び膝蹴り!」
ニートンは空中で片膝を下に向けて折り曲げ、着地点をカミギリーに定めて落下する。
落下の勢いが加わった跳び膝蹴りをまとに受け、カミギリーはさらに地面にめり込んだ。もう起き上がる気配はなく、完全に戦闘不能だった。
「うぅ……戻って、カミギリー」
ミキは苦い表情をしつつ、カミギリーをボールに戻す。
対してフレイは、にへらーと笑いながらメタグロスの上でゴロゴロしていた。
「いやー、あんまり落ち込まなくてもいいよー? 君のカミギリーも結構強かったしさ。まー、大欠伸が上手くはまったから勝てたようなもんだしー、あんま気負わないでー」
なぜか敵に慰められてしまうミキ。フレイの口調からは本気で慰めているのか、それともただからかっているだけなのかは判断つかないが、しかしミキの矜持に傷がついたのだけは確かだ。
(相手は七人中の六番目。兄さんは四番の人と戦ってるんだ……師匠も二番の人に奮戦してた。まだ、負けてられない……!)
ミキの胸中で一つの思いが駆け回り、次のボールを強く握り込んだ。
ここはタチワキシティ北部に位置する、イッシュ唯一の映画レジャー施設。その名もポケウッド。
昼夜を問わず映画作成、鑑賞のために賑わっているこの施設の中、仏頂面で闊歩する一人の少女がいた。
厚底のブーツを履いてもなお小柄な体躯、黒いタンクトップの上に青と紫の肩だしワンピース。短めの銀髪は前髪を頭頂部付近で縛っており、背中には黒と紫を基調とした毒々しいデザインのワーロックベース。
少女は不機嫌そうに唇を尖らせている。
「ったく、あのオヤジ……いつもいつも船長の仕事ほっぱらかして。一度シメないと分からなのかっての」
そんな誰かのことを毒づきながら歩を進めていくと、不意に腕のライブキャラスターから着信音が鳴った。
彼女は苛立ちながら回線を開くと、そこには焦げ茶色の髪をポニーテールにした少女……のような顔をした男。イリゼだった。
少女はイリゼの顔を見るや否や、パァッと表情が明るくなっていく。
「おー、なに、イリゼじゃん? どーしたのさ急に。ここ最近まったく音沙汰なかったけど」
『悪いが、ちっと急ぎの用だ。お前に頼みごとがある』
「イリゼの頼みなら大抵のことは引き受けるけど、なに?」
『詳しくは後でメール入れるが、まあ簡単に言うとだな』
イリゼは少し間をおいて、
『俺の息子をぶっ飛ばしてくれ』
今回はミキ対フレイ、そして人気急上昇中の彼女の登場です。かなり短くなってしまいましたが、文字数がやばいのでご了承ください。さてもう予告に入りますが、次回も今回のように誰かのバトルを入れつつ、伏線を張る感じになります。では次回もお楽しみに。