二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 436章 鋏 ( No.603 )
日時: 2013/01/04 22:54
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 リオとエレクトロのバトルは、現状リオが優勢だった。
 というのも、エレクトロのファントマはリオのプリンと相性が悪かったのだ。
 このファントマは、黒い霧で相手の視界を奪って戦うことが前提となっているため、その霧を吹き飛ばされると実力を発揮できない。
 たとえば煉獄、この技は命中率が低いが、高威力かつ命中すれば確実に相手を火傷状態にする強力な技だが、命中率がかなり低い。しかしファントマは、それを黒い霧で相手の視界を塞ぎ、行動を制限することで間接的に命中率を上げている。
 けれどプリンは吸い込んだ空気を吐き出すことで黒い霧を吹き飛ばすため、その戦法も使えない。
「まともに通るのは神通力ぐらいですか……シャドーボールは効果がありませんし、ここは開放的すぎる。選択を誤りましたか」
 エレクトロが呟いた次の瞬間、ファントマはプリンに投げ飛ばされて地面に激突。そのまま戦闘不能となってしまった。
「お戻りなさい、ファントマ。今回は相手が悪かっただけです、気に病まず」
 慰めるように、エレクトロはファントマをボールに戻した。
「私のファントマを倒したくらいで、いい気になってはいけませんよ。ファントマは私の手持ちでは最弱、加えてフィールドもファントマにとっては不向きな場所でした。次はこうは行きません」
「悪いんだけど、ただの言い訳にしか聞こえないわよ」
「言い訳かどうかは、次のポケモンを見て決めてくだされば結構です」
 言ってエレクトロは次のボールを出し、ポケモンを繰り出す。
「戦の時間です、ハッサム!」
 エレクトロの二番手はハッサムだ。全身を赤い鋼鉄で包み込み、両手は大きなハサミとなっている。
「プリン、地球投げ!」
 プリンはハッサムを投げ飛ばそうと、先手を取って特攻をかけようとするが、
「ハッサム、バレットパンチです」
 プリンが動くよりも速くハッサムはプリンの正面に移動しており、閉じたハサミを拳のように突き出してプリンを殴り飛ばす。
「! プリン!」
「続けてアクロバット!」
 プリンが吹っ飛ばされる中、ハッサムは俊敏な動きでプリンの背後に回り、またもハサミの一撃を叩き込む。
 ハッサムの特性、テクニシャンと、道具を持っていない状態なら威力が倍になるアクロバットの相乗効果で、プリンへのダメージは相当なものとなった。
「くっ、プリン、一旦ハッサムの動きを止めましょう。ベルカント!」
 プリンは息を吸い込み、思わず聞き惚れてしまうような歌声を発する、その直前に、
「させません、バレットパンチ!」
 ハッサムの弾丸のような拳がプリンを捉えた。
 プリンは吹っ飛ばされて地面をバウンドするが、まだ戦闘不能ではない。
「意外と耐えますね。ですがもうすぐ終わりです。ハッサム、虫食い!」
 ハッサムはプリンの下へと駆け、赤いハサミを開いてピンク色の体を喰らうように挟み込む。
「プリン、逃げて! がむしゃら!」
「無駄ですよ。ハッサム、バレットパンチです!」
 プリンが最後の抵抗としてがむしゃらな攻撃を繰り出すが、その前にハッサムはプリンを空中に放り投げる。そしてその直後、弾丸のようなハッサムの拳がプリンを吹き飛ばし、遂にプリンは戦闘不能となった。
「ありがとう、プリン。ゆっくり休んでて……」
 リオはプリンをボールに戻す。結局、ハッサムには一撃も与えることができなかった。
「このハッサムは、私の手持ちの中で最も近接戦闘に優れています。物理技をメインとするポケモンでは、倒せませんよ」
 エレクトロの穏やかな口調の中に、ハッサムの強さに対する信頼がありありと感じられる。それほど自身があるのだろう。
 一方リオは、このハッサムをどう倒すか思案していた。
(相性から考えると圧倒的にシャンデラを出すべきなんだろうけど、ハッサムの残る一つの技が分からないし、相手のエース、ドルマインに対抗できる火力を持つのもシャンデラくらい。なによりここでハッサムを出したのには何か意味があるような気がする……あとはドラドーンか。でも、ドラドーンはもう少し休ませておきたいし、ハッサム相手じゃ小回りが利かなさすぎる。となると——)
 リオは一つのボールを握り締め、次なるポケモンを繰り出す。
「次はこのポケモン。出て来て、リーフィス!」
 リオの二番手は観葉ポケモン、リーフィス。ガラス鉢のような体から緑色の頭と葉っぱが伸びている。タイプは草と水だ。
「ほぅ、リーフィスですか。ここはシャンデラを出すと読んでいたのですが、アテが外れてしまったようです」
 その言い分から察するに、やはりエレクトロはハッサムにシャンデラ対策の技を覚えさせていたようだ。この読み合いは、リオの勝利と言えるだろう。
 だが、
「リーフィスは草と水タイプ。バレットパンチのダメージは半減できますが、こちらには虫食いとアクロバットがあります。さて、防御の高いリーフィスと言えど、どこまで耐えられるでしょうか」
 エレクトロの言うとおりだ。タイプ相性ではリーフィスはハッサムに不利。普通に戦っても倒すことは出来ないだろう。
「……リーフィス、ハイドロポンプ!」
 先に動いたのはリーフィスだ。リーフィスは勢いよく大量の水を噴射する。
「かわしなさい、バレットパンチです」
 ハッサムは弾丸が飛ぶようなスピードでハイドロポンプをかわし、そのままリーフィスを殴りつけた。が、効果はいまひとつなため大きなダメージにはならない。
「大成長!」
「アクロバットです」
 リーフィスはすぐに大量の根っこを呼び出して攻撃するが、ハッサムの俊敏な動きでその攻撃はあっさりかわされる。さらにハッサムのハサミによる一撃が、リーフィスの脳天に叩き込まれる。
「そのまま虫食い」
 さらにハッサムはリーフィスの本体——ガラス鉢に覆われた柔らかい体——にハサミを伸ばす。
「しまっ……! リーフィス、大地の怒り!」
 リーフィスは大地を鳴動させ、大量の土砂を吹き出し、自分もろともハッサムを吹き飛ばした。
 思いもよらぬ奇襲だったにもかかわらず、ハッサムは空中で態勢を整え、静かに着地。逆にリーフィスは、受け身も全く取れず地面に叩き付けられる。
 そのままゆっくりと体を起こすリーフィスの体には既に幾重もの傷がついているが、あのまま弱点にハサミを入れられるよりもずっとマシだろう。肉を切らせて骨を守るというやつだ。
「上手くダメージを軽減しましたね。しかし、そう何度も同じ手は通用しませんよ。ハッサム、アクロバット!」
 瞬時にハッサムの姿が消える。気付いた時にはハッサムはリーフィスの真上におり、ハサミを構えて攻撃の準備をしていた。
「そう何度も喰らったりはしないわ! リーフィス、ハイドロポンプ!」
 ハッサムのハサミが繰り出されるよりも速くリーフィスの水流が発射され、ハッサムを押し飛ばす。
「続いて大成長!」
「毟り取るのです。虫食い!」
 地中から這い出た大量の根っこが怒涛の勢いでハッサムに向かっていくが、ハッサムはガチガチと両手のハサミを鳴らして襲い掛かる根っこを毟り取っていく。
「大地の怒り!」
 地道に根っこを削っているハッサムに、リーフィスの大地の怒りが炸裂。ハッサムは大きく吹っ飛ばされ、宙を舞う。
「チャンスよ、ハイドロポンプ!」
 そこにリーフィスの大量の水流が放たれるが、
「ぶち壊す」
 ハッサムは凄まじい気迫を発しながらハサミを突き出し、全ての水流を四方八方に散らしてしまう。
「ハイドロポンプが……!」
 まさかの一撃にリオは戦慄する。恐らく、今の技がシャンデラ対策なのだろう。一発でリーフィスのハイドロポンプを消し飛ばしてしまうほどの威力なのだから、もしシャンデラが効果抜群となる今の技を受けていたらと思うと、ゾッとする。
「この程度はまだまだ序の口ですよ。ハッサム、バレットパンチです!」
 地に降りたハッサムはそのまま高速でリーフィスに接近し、ガラス鉢の体を殴りつける。
「ぶち壊す!」
 さらに連続してハサミを叩き付ける。一撃一撃がかなり重く、破壊力のある攻撃だ。
「引き剥がしてリーフィス、大地の怒り!」
 このままではまずいと思ったのか、リーフィスは地面から大量の土砂を噴射するが、
「同じ手は通用しないと言ったはずです。ハッサム、アクロバット!」
 ハッサムの俊敏な動きを前では、大地の怒りはハッサムを捉えられない。ハッサムはぐるっとリーフィスの周りを一周すると、同じ位置に戻ってきてハサミの一撃を見舞う。
「虫食いです」
「させない! ハイドロポンプ!」
 ハッサムは続けてハサミを伸ばすが、リーフィスも水流を放って今度こそハッサムを押し退ける。
 ここに来て、リオに焦りが浮かぶ。薄々感づいていたが、このハッサム——
(強い……!)
 ドルマインばかりに目が行っていたが、思わぬ強敵に、リオは歯噛みするのだった。



やべぇ、ハッサム強ぇ……なぜか書いているうちにハッサムがやたら強くなってしまいました。ちなみにアクロバットとテクニシャンは、効果の発動順番が云々でテクニシャンの効果が適用されないそうですが、白黒はよく分からなかったので、本作ではどちらも発動する仕様です。いやー恐ろしい威力ですね。それでは次回も誰かのバトルをする予定です。お楽しみに。