二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 441章 土中 ( No.614 )
- 日時: 2013/01/08 13:55
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「……戻れ、エレキブル」
ザキは戦闘不能となったエレキブルをボールに戻す。ワイルドボルトの反動に耐えられなかったようだ。
これでザキの手持ちは残り二体、半分まで到達してしまった。
「次はお前だ。出て来な、ブーバーン!」
ザキの三番手は、爆炎ポケモン、ブーバーン。暖色の丸っこい体、両肩は燃える炎のようで、両腕はバズーカのような砲口となっている。
「とっとと決めるぞ、ブーバーン。ジオインパクト!」
ブーバーンは片腕を前に突出し、そこから銀色に輝くエネルギーを放射。自身をそれに包み込み、猛烈な勢いでヨノワールへと突っ込む。
「ヨノワール、地震です!」
ヨノワールは咄嗟に地面を揺るがす衝撃波を放つも、無駄だった。
ブーバーンは衝撃波を跳び越してダイブするようにヨノワールに突撃。ヨノワールを吹っ飛ばす。
また地面を削りながら吹き飛ぶヨノワールは、遂に戦闘不能。
「……戻りなさい、ヨノワール」
レイは倒れたヨノワールを一瞥し、ボールに戻した。そして二つのボールを取出し、交互に見つめる。どうやらどちらのポケモンを繰り出すか悩んでいるようだ。
「ブーバーンは炎タイプ、となるとどちらも不利。さて、どうしたものですか……」
目を瞑って長考に沈むレイ。しばらく経つと、片方のボールを収めた。繰り出すポケモンが決まったようだ。
「やはりこちらにしましょうか。多少リスキーでも、有効打があった方がやりやすいでしょう」
言ってレイは、残ったボールを放ってポケモンを繰り出す。
「おいでなさい、テッカニン!」
現れたのは蝉のような姿のポケモン、テッカニン。忍ポケモンと分類されており、特性、加速と合わせた高い機動力が強みのポケモンだ。
「テッカニン、襲撃です!」
テッカニンは目にも止まらぬスピードでブーバーンに接近し、背後から爪の一撃を叩き込む。
「燕返し!」
そしてそのままブーバーンの体を半周し、今度は前面を爪で切り裂く。
「ブーバーン、ダイヤブラスト!」
ブーバーンも負けじと腕の砲口から白色の光線を発射するが、テッカニンはそれを軽く回避。
「燕返しです!」
そしてブーバーンを切り裂く。攻撃が速すぎるため、その姿を視認することすら難しい。
「だが、テッカニンの耐久力は低い。一発ぶち込めれば終いだ。ブーバーン、連続でダイヤブラスト!」
ブーバーンは両腕を構え、四方八方に白色の光線を発射するが、
「テッカニン、全てかわしなさい」
残像が残るような動きで、テッカニンは発射される光線をことごとくかわす。
「くっ、だったらこれだ! ブーバーン、オーバーヒート!」
今度は両腕を揃え、砲口から莫大な火炎を放射する。広範囲に放たれた爆炎は、テッカニンが逃げる隙すら存在しないが、
「テッカニン、潜る!」
テッカニンは隙間を縫ってかわすようなことはせず、地面に突っ込んで地中に身を潜め、オーバーヒートをやり過ごす。そして炎が消えたと見るや否や、すぐに地面から這い出て来てブーバーンに突撃した。
「続けて襲撃です!」
そしてすぐさまブーバーンの背後に回り、爪の一撃を見舞う。
「燕返し!」
そしてすぐさまブーバーンの視界から外れ、体の各所を切り裂いていく。
一撃一撃の威力は低いが、テッカニンが速すぎるために鈍いブーバーンでは捕捉が難しい。加えてテッカニンは小型なため、ブーバーンの体格、及び攻撃方法ではどうしたってテッカニンを捉え切れない。
タイプ相性ではテッカニンが不利だが、種族としての相性ならブーバーンが不利。そして現状、ブーバーンが押されている。
「ブーバーン、ジオインパクトだ!」
ブーバーンは銀色のエネルギーをその身に纏い、意味もなく走り出す。これで一度テッカニンから距離を取って攻撃に移ろうという策であったが、テッカニンには通じない。
「テッカニン、潜る!」
テッカニンは地中に潜って移動し、ブーバーンのジオインパクトが切れた頃合いを見計らって飛び出し、ブーバーンを攻撃する。威力は控えめだが効果は抜群なので、ダメージは大きい。
「燕返しです!」
加速によってどんどん素早さが上昇していくテッカニンのスピードは、もう目で追えるようなものではなかった。残像すら視認できないほど高速で動き回るテッカニンは、ブーバーンの体を刻んでいく。
「くっそ、このままじゃ埒があかねぇ……!」
苛立ちながらザキは呟く。このままテッカニンにスピードを上げられては、そのうち勝ち目がなくなる。後に控えているポケモンも、テッカニンに対抗できるかと言えばそういうわけではない。なのでタイプ相性だけでも有利なブーバーンで、なんとかテッカニンを倒したいところだが——
「テッカニン、襲撃!」
背後に現れたテッカニンの爪がブーバーンに喰い込み、テッカニンはすぐさま姿を消す。
——現状でもテッカニンを倒すのは困難であろう。とにかく速い。それだけで、ザキは相当追い詰められていた。
(畜生が……どうしたもんか。しつこくまとわりついてくるからジオインパクトは使いずらい。ダイヤブラストも当たらない。オーバーヒートは潜るでかわされる……もうどうしようもねぇな、こりゃ)
半ば諦めかけているザキだったが、テッカニンの猛攻は止まらない。もはや残像すら残らない速度まで達しており、そのうち音速どころか光速をも超えそうだ。
「潜る!」
テッカニンは一度地中に身を潜め、すぐさま地上に飛び出してブーバーンに衝突。この潜るも厄介で、弱点を突くだけではなくブーバーンの素早さも下げるため、こちらの動きがますます鈍くなる。しかしテッカニンは時間が経つたびにどんどん速くなっていくので、その差は広げられる一方。追いつくことは叶わない。
だがこの時、ザキはテッカニンを倒しうる可能性のある策を見出していた。
(決まるかどうか分かんねぇし、一度使えば二度目はないような分の悪い賭けになりそうだが……今はこれに頼るしかねぇか)
腹を括り、ザキはブーバーンに指示を出す。
「やるぞブーバーン。オーバーヒート!」
ブーバーンは砲口から凄まじい勢いで爆炎を噴射する。悪巧みを三回使用したヘルガーの火炎放射以上の火力だ。
この莫大な炎に逃げる隙などはない。だが、テッカニンは裏技的な抜け道を知っている。
「当たりませんよ。テッカニン潜るです!」
テッカニンはすぐに地中に潜ってオーバーヒートをやり過ごす。炎が消えるまで、地面の中で身を潜めていれば安全だ。そう思っていたが、しかし、それこそが、ザキの思う壺であった。
「ブーバーン、大地の怒り!」
ブーバーンは大地を震撼させ、その怒りを解き放つかのように大量の土砂を噴射した。そしてそんなことをすれば勿論、地中にいたテッカニンは無理やり地上に引っ張り出されることになる。
テッカニンは飛行タイプも併せ持つためダメージこそ受けないが、土砂と一緒に吹き出されたために身動きが取れない。いや、まったく取れないわけではないが、動きが鈍るのは確かで、そこが隙となる。
そしてその隙を狙っていたのが、他でもないザキ。この一瞬の好機を、逃すはずがない。
「終わりだ! ブーバーン、オーバーヒート!」
ブーバーンは再び大火力の爆炎を放ち、噴き上げた土砂を炎で包み込む。
何分、砂と炎という相性のため、炎は比較的早く鎮火してしまったが、それでもテッカニンを戦闘不能にするのには十分な炎だった。
「ふぅ……戻りなさい、テッカニン」
息を吐いて、レイはテッカニンをボールに戻す。これでレイの手持ちは、残り一体。
「……これで最後、ですか」
レイは残った一つのボールをしばし見つめ、構える。
「それでは。おいでなさい、レジュリア!」
レイの最後のポケモン、レジュリア。スリムな体型の女性的な容姿を持つポケモンだ。
「最後はレジュリアか。なら、ブーバーンが有利、一気に決めるぞ。オーバーヒート!」
ブーバーンは、火力は落ちているものの強力な爆炎を発射。燃え盛る炎がレジュリアに襲い掛かるが、
「レジュリア、アイスバーン!」
手を振り、放たれた冷気の爆発がオーバーヒートを消し去ってしまった。
「なっ……!」
流石にザキも驚きを禁じ得ない。いくらテッカニンを倒すのに使い、火力が半減しているとはいえ、ブーバーンのオーバーヒートを氷技で完全に相殺されるなど。
驚くザキを余所に、レジュリアは動き出す。
「気合球です!」
掌に生成した球体をブーバーン目掛けて発射。潜るで素早さが下がっていたブーバーンは避けられずに直撃を受け、吹っ飛ばされた。
「ブーバーン!」
テッカニン戦で消耗していたこともあり、ブーバーンは戦闘不能となった。
これでザキの手持ちも残り一体となり、この戦いも、もうすぐ幕を降ろす——
今回も前回に引き続き、ザキ対レイです。思えばレイって不遇ですね。殴られたり髪燃やされたり。書いたのは僕ですが。物語もいいところまで来ましたし、人気投票でもやっていいかなーと思ったりしますが、投票数が少なすぎて話にならなさそうなのでやめます。ただ、コメントなどでさりげなく教えて頂けると嬉しいです。さて次回は、また別の誰か……といっても、順番的にはミキ対フレイになるでしょうが。それでは次回もお楽しみに。