二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 443章 雨 ( No.619 )
- 日時: 2013/01/14 16:14
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「マニューラ、泥爆弾!」
「ホムロソク、マインブラスト!」
十九番道路でのアキラとマオのバトルは、相当長引いていた。
「もう一度マインブラストだ!」
「かわして嫌な音!」
とはいえ、戦況は現時点で圧倒的にマオが優勢。というのも、ホムロソクはマニューラのぶち壊すをかわし切れず、かなりの重傷を負っているからだ。それでもアキラはめげずにホムロソクで戦っているが、トレーナーもポケモンも、既に心身ともにかなり疲弊している。そう長くはもたないだろう。
「スターフリーズよ!」
「フラッシュだ!」
マニューラが巨大な星型の氷塊を投げる寸前に、ホムロソクは眩い閃光を発し、スターフリーズの軌道をずらす。
「往生際が悪いというか何というか、必死過ぎてもはや滑稽ね。貴方とのバトルなんてさっさと済ませて戻りたいんだけど、いい加減諦めてくれない?」
有利な立場だからこその余裕だろう。マオの声は、焦燥や苛立ちより、嘲笑、蔑みを含んでいた。
ポケモンともども疲弊しきっているアキラは、しかし気丈に言葉を返す。
「悪ぃけど、俺は頼まれてはいそうですかと退けるほど、素直に育っちゃいないんでね。それに、今あんたをリオのとこに行かせるわけにも、いかないしな……」
アキラは記憶から引き出す。。リオの相手、7P序列三位、エレクトロの姿を。そして初めて見た時に感じた、ただならぬ圧迫感を。
(そんでも、どれだけ敵が強かろうが、あのリオが負けるとは思えない。が、それでも片手間に戦えるような相手じゃないのは俺でも分かる。それに、ホムロソクには悪いがこの状況じゃあもう勝ち目はない。だったらせめて、リオのバトルが終わるまで、この人を足止めしておくのが、今の俺にできる唯一のことだろ……!)
本当なら、ここでマオを倒して一刻でも早くリオのところへと向かいたいのだが、それは恐らく無理だ。だったら、せめて今の自分にできる最大限のことだけでもしておきたい。それが、今のアキラの意地だった。
だが、その意地も、そう長くは続かない。
ピチャッ
「……? 水?」
アキラは自身の額に、冷ややかなものを感じる。それが液体、水であることに気付くのに一瞬、その水が次々とやって来るのに気付くのにもう一瞬、そしてそれが、空から降り注いでいるのに気づくころには、一秒が経過していた。
即ちそれは、雨だ。雨脚は次第に強まっていき、やがて豪雨となる。
「やだ、貴方がだらだら引き伸ばしてるから降ってきちゃったじゃない。最悪」
突然の雨に、マオは一転して不機嫌になる。
対してアキラは、絶望したように、眼を見開いていた。
「ホムロソク……」
雨とは、つまるところ空から水が降ってくる現象だ。水は何に対してつかわれるか、何に対して、強い力を発揮するのか。それはもう明白なことである。
ホムロソクの炎が、弱まっているのだ。
当然のことながら、炎タイプは水に弱い。雨が降りだせば、その力は半減されてしまう。それに則って、ホムロソクの力も衰弱してしまったのだ。
「あーもう、いいわ。これ以上濡れたくないというか、これ以上なく濡れちゃったし、決めちゃいましょう。マニューラ、ぶち壊す!」
マニューラは目にも止まらぬ速度でホムロソクへと駆けて行き、鋭い鉤爪を思い切り突き出す。
「っ! かわせ、ホムロソク!」
ホムロソクも自慢の身のこなしでその攻撃をかわそうとする。実際、いつも通りのホムロソクなら問題なくかわせただろうが、今のホムロソクは満身創痍の上に雨天状態と、これこそこれ以上なくバッドステータスだ。そんなコンディションで、マニューラの攻撃がかわせるはずもない。
マニューラの爪は、ホムロソクに深く食い込み、そのまま地面へとねじ伏せてしまった。
倒れるホムロソクをよそに、マオはすぐさまマニューラをボールに戻し、かわりにララミンゴを出した。
「流石にそろそろ目的の物っていうのも見つかったでしょうし、そろそろ撤収かしら。それにして、この鬱憤は晴らすべきなのか……またエレクトロで発散でもするべきかしら。でもあいつ、妙にすかした態度で逆にムカつくのよね」
などとぼやきながら、ララミンゴに腕を掴ませ、飛び立ってしまうマオ。
そして、一人残されたアキラ。
「……戻れ、ホムロソク」
地面に倒れたままのホムロソクをボールに戻す。
足止めをすると意気込んだ矢先にこれである。運が悪かったと言えばそれまでだが、それでも負けは負けだ。
降り注ぐ雨が、容赦なくアキラをずぶ濡れにする。けれど彼には、そんなことを気にしている余裕はなかった。
「炎タイプは雨に弱い。素直にサンダースを出しておけば良かったんかな……あの人がドレディアを出さなかったから、無駄な意地張っちまったな」
いつもはボールから出しているサンダースだが、今は何が起こるか分からないので、半ば無理やりボールに入れている。そのボールを眺めるように手に取り、立ち尽くす。
(それに、ホムロソクにも悪いことしたな……あんなに疲れてボロボロになって、その上雨まで降って負けさせちまうなんて。リオだったらどうすんのかね、こういう時。あいつとシャンデラなら——)
ふと、アキラの中で何かが繋がった。
炎、水、雨、ホムロソク、敗北、リオ、シャンデラ、エレクトロ、ドルマイン——
「……! まずいっ!」
脳裏に浮かんだ最悪のケース。それが現実にならないことを祈りながら、アキラは焦燥感に駆られて走り出した。
「テペトラー!」
ザキvsレイ。この二人のバトルも、いよいよ大詰め。
戦況は、レイが有利、というより、ほぼ勝ちが確定しているような状況だ。
ザキの最後のポケモンはテペトラー。レイのレジュリアに対しては、攻撃面ならさしたる問題はないのだが、防御に回ると、テペトラーが不利である。
「くっそ、まだだテペトラー! スプラッシュ!」
テペトラーはその身に水流を纏い、水飛沫を上げながらレジュリアへと突っ込んでいくが、
「レジュリア、サイコバーンです」
レジュリアは払うように手を振って念動力の爆発を起こし、テペトラーを吹き飛ばしてしまう。
「……呆れました」
唐突に、レイが口を開く。そして言葉通り、あまり変化のない顔ではあるが、呆れたような表情だ。
「先ほどから、攻撃は突撃ばかり。それも一直線にです。この際なので言ってしまいますが、わたしのレジュリアは真正面からの攻撃には滅法強い、そういう技を覚えさせていますからね。それはあなたも分かると思うのですが、それでも突撃……エレクトロさんやゲーチスさんはあなたのことをそれなりに買っているようでしたが、わしたからすれば、拍子抜けと言いますか、呆れるばかりですね」
「……うるせぇよ」
あまり覇気のこもらない声で、ザキも言い返す。
「いつもだんまりの癖に喋る時だけベラベラ喋りやがって。そもそも俺のテペトラーのバトルスタイルは、ひたすら力押しなんだよ。覚えさせる技も、そのスタイルに合うよう突撃系に重点を置いてる」
「それでも、攻め方を変えることくらいはできるでしょうに……ああ、もういいです。あなたも、英雄さんやその他大勢の人たちと同じということですね。少々型破りなようですが、ただそれだけでしょう。だったらこの場で、わたしが引導を渡すことにします」
「最初にもそんなこと言ってなかったか、お前?」
揚げ足を取るようにザキの発言に、レイはムッとしたように口をつぐんだ。そして、
「……レジュリア、放電です!」
「サイコパンチだ!」
両手を前に突出し、レジュリアの掌から電撃が放たれる。それと同時にテペトラーも念動力の拳を撃ち出すが、その程度で放電を完全に相殺できるはずもなく、テペトラーは激しい電流を浴びてしまった。
「ぐっ……氷柱落とし!」
辛うじて放電を耐えたテペトラーは、地面に拳を叩き付け、虚空からいくつもの氷柱を落とす。そしてその氷柱はレジュリアを包囲し、動きを封じた。
「今だ、ぶっ飛ばせ! テペトラー、マグナムパンチ!」
拳を固め、大砲の如き勢いで突貫するテペトラー。レジュリアは氷柱に包囲されて身動きが取れない。その隙を突く、テペトラーの拳が放たれる——が、
「サイコバーン!」
刹那、氷柱が弾け飛んだ。粉々に粉砕され、氷の破片が四方八方に散る。
テペトラーの拳はレジュリアに到達することなく、念力によって引き起こされた爆風によって遮られてしまう。
「これでとどめです! レジュリア、アイスバーン!」
完全に動きを止めてしまったテペトラーに、新たなる爆風が襲い掛かる。凍てつく氷のような衝撃波がテペトラーの体を蹂躙し、屈強な肉体を吹き飛ばした。
「テペトラー!」
叩き付けられるようにして地面を転がったテペトラーは、起き上がらない。動きが見られない、指一本すらも動かない。
テペトラーは戦闘不能。即ち、ザキの手持ちは全て失われた。
ザキvsレイの勝負は、ザキの敗北で、終了したのであった。
今回はアキラとマオ、ザキとレイのバトルでした。どちらも破れてしまいましたが、まだこれで終わりではありません。唐突に降り出した雨、そして走り出したアキラ。彼はどこに向かったのでしょうか。さて次も、こんな感じで誰かのバトルの続きにしようと思います。では次回もお楽しみに。