二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 444章 星 ( No.623 )
日時: 2013/01/15 00:15
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「ドラピオン、クロスポイズン!」
「オノノクス、地震だ!」
 ムントとドランのバトル、現状のオノノクスとドラピオンの戦いでは、オノノクスが優勢だった。
 オノノクスはヒット&アウェイ戦法を駆使することで、ドラピオン相手に有利に立ち回っている。
「ドラゴンクロー!」
 地震の衝撃で動きを止めたドラピオンに、龍の爪が襲い掛かる。紫色の装甲に深い爪痕が刻まれると同時に、ドラピオンはその場に崩れ落ちた。
「あーあ。ドラピオンも倒されちゃった」
 ドランは戦闘不能となったドラピオンをボールに戻す。
「……戻れ、オノノクス」
 ムントも一旦、オノノクスを戻した。そしてドランが次のボールを取り出す前に、ポケモンを交代させる。
「行くぞ、アーボスク!」
 繰り出されたのは、コブラポケモンのアーボスク。大蛇のような体躯、太くがっしりした胴体には顔のような模様が浮かんでいる。
「ふぅん、アーボスク、ね。大方ドランの最後のポケモンを読んでのチョイスだろうけど、そんじょそこらの鋼タイプじゃ、この子は止められないよ」
 最後のポケモンが入ったボールを握り締め、ドランは強気に出る。
「そんじょそこらの鋼タイプかどうかは、やってみれば分かることだ」
 同じくムントも、クールな立ち振る舞いを崩さず、自信満々に言い返す。
「まーいーけどね。なんにせよ、このポケモンは、ドランの力の全て。エレクトロじゃないけど、ドランも解放するときはなるべく力をセーブしてるんだよ。前に英雄ちゃんと戦ったときは、解放率——解放状態で底上げされる強さの割合——はおおよそ7割、70%くらいだったけど、今回は100%で行くよ」
 言ってドランは、天に供物を捧げるかのように、ボールを構えた。

「天空に臨め、ドラドーン!」

 現れたのは、巨大な龍。
 エレクトロのトロピウスより、モスギスのティラノスより、ガイアのハサーガより、そしてリオのドラドーンより、何よりも巨大な神の如き龍。
 神龍ポケモン、ドラドーン。ドランの全ての力そのものと称される、ドラゴンポケモン。
「大きいでしょ、これで見かけ倒しなんてことはないから安心してね。ちなみに解放率を100%まで引き上げられるのは、エレクトロとドランだけなんだよ。基本的に、解放率の高さは序列に比例する。けれど序列四位のレイが引き上げられる最高率は60%が限度。これで分かるかな? ドランの強さが!」
 子供のように自分の力を誇示するドラン。しかし、このドラドーンの強さは見ただけで分かる。そんじょそこらの鋼タイプどころか、その手のエキスパートが鍛えたポケモンでも、倒すことは難しそうである。
 だが、
「……アーボスク、電磁砲!」
 アーボスクは電磁力を濃縮した球体を生成し、ドラドーン目掛けて発射する。
「アイスバーン!」
 ドラドーンも正面に凍てつく爆発を起こして電磁砲を相殺。
「あくまで戦うつもりなんだ。ま、ドラン的にはそうじゃないと困るけどね。ここで怯えて尻尾撒いて逃げられたんじゃ、たまったもんじゃないよ」
 次の瞬間、ドランの纏う空気が変わった。まるで巨大な龍が咆哮を上げて威嚇するような威圧感が、そこに漂っていた。
「行くよ、ドラドーン。ハイドロ——」

 ピチャン

「んー……?」
「……?」
 ドラドーンが息を吸い込んだ刹那、ポケモンと共にドランが動きを止めた。いや、ドランだけではない、ムントとアーボスクも、その音を聞き、一時停止する。
 聞こえたのは、水の滴るような音。それが何度も何度も鳴り響き、やがて連続した音の集合となる。
 その状況をそのまま言ってしまえば、雨だ。
 突如として、コンビナートは豪雨に包まれた。
「雨だと……!」
 今この状況で雨に降られることは、ムントとしては嬉しいことではない。ポケモンが弱体化するからという理由ではない。むしろ逆だ、ポケモンが強化されるのだ。

 そう、今まさに発射の態勢に入っている、ドラドーンのハイドロポンプが。

「恵みの雨とは正にこのことだね。ドラドーン、やっちゃって! ハイドロポンプ!」
 ドラドーンは大きく吸い込んだ空気と共に、大量の水を噴射する。その速度、水量、勢いは凄まじいの一言に尽き、ともすればイリスの、激流が発動したダイケンキのハイドロカノンに匹敵する威力の水流だ。
「くっ……メタルブラスト!」
 アーボスクも鋼を撃ち出してハイドロポンプにぶつけるが、パワーが違いすぎる。競り合うことなくメタルブラストは水流に押され、アーボスクを吹き飛ばした。
「ヘドロウェーブだ!」
「ハリケーンだよ!」
 アーボスクも負けじと毒液の大波を放つが、ドラドーンが放つ災害級の嵐でヘドロウェーブは全て散らされてしまう。
 さらにハリケーンはそのままアーボスクにも襲い掛かり、コンビナートのタンクへと押し飛ばしてしまう。
 タンクに大きなへこみができ、アーボスクは落下しないまま、戦闘不能となった。
「ぐっ……戻れ、アーボスク」
 ムントはアーボスクをボールに戻す。これでムントの手持ちはあと一体だが、
「残るはオノノクスだね。ドラピオンが与えたダメージが全快してるとは思えないから、同じドラゴンタイプでもドランが有利かな?」
 ドランはそう言うが、この場合は体力や傷がどうこうの話ではない。
 ドラドーンの巨躯もさることながら、今は雨天状態でハイドロポンプの威力が上がり、しかもドラドーンはアイスバーンを覚えている。誰がどう考えても、オノノクスが圧倒的に不利だ。
「行くぞ、オノノクス!」
 しかし、たとえ相性や体格で不利だったとしても、ムントが一度始めた戦いを投げ出すことはない。オノノクスも同様だ。
「やっぱり戦うんだね。言っておくけど、もう君に勝ち目はないよ。だってドランは本気で、ドラドーンもいる。オノノクス一匹じゃ、どう足掻いたって勝てっこない」
「どうだかな……」
 ムントは短く返す。
 ドランの言うことは概ね正しい。オノノクス一体で、13mを超えるほど巨大なドラドーンを倒すのは困難だ。
 しかしそれでも、ムントには勝算がないわけではなかった。
「オノノクス、龍の舞!」
 オノノクスは龍の力を増幅させる舞を舞って、攻撃力と素早さを高める。
「能力を上げて対抗するつもりかな。何度も言うけど無駄だよ、ドランのドラドーンには勝てない。アイスバーン!」
 ドラドーンは凍てつく爆発を引き起こし、冷たい爆風と衝撃波を放つ。ドラゴンタイプのオノノクスが喰らえば一撃でも致命傷になりかねないが、
「龍の舞!」
 龍の舞で能力を上げ、衝撃波をかわす。爆風まではかわせないが、ダメージは少ない。
「ならこれはどう? ハイドロポンプ!」
「龍の舞から地震!」
 続けてドラドーンは大量の水を噴射する。オノノクスには効果はいまひとつでも、相当な威力であることには変わらないので、この攻撃も受けたくない。
 なのでオノノクスは龍の舞で後ろに下がり、地震で地面を隆起させる。追ってくるハイドロポンプを隆起させた岩で防ぐが、すぐに破壊されるのは目に見えているので、
「瓦割り!」
 両手を使った手刀を振り下ろし、なんとか水流を受け切る。
「やるねぇ、じゃ次はこれ! ハリケーン!」
 今度は嵐。雨雲すらも吹き飛ばす勢いで、ドラドーンは激しい突風を放つ。
「龍の舞だ!」
 オノノクスはやはり龍の舞で能力を上げ、三倍に膨れ上がった素早さを存分に生かし、コンビナートを縦横無尽に駆け回り、ハリケーンの隙間を縫うようにかわしていく。
 そして、ハリケーンが止んだ瞬間を狙って、オノノクスも攻撃に転じる。
「オノノクス、ドラゴンクロー!」
 タンクやクレーンの上を跳び、ドラドーンのもとへと一気に跳躍。そして龍の力が込められた爪を振り下ろした。
 効果抜群で二倍、龍の舞で三倍、計六倍に膨れ上がったドラゴンクローは、如何に屈強なドラゴンポケモンでさえも地に降ろす一撃となる——はずだった。
「ふーん、で? おしまい?」
 ドラドーンは通常の六倍の威力にもなる龍の爪を受けてもなお、天に君臨するように飛んでいた。
「なっ……に……!」
 流石のムントも驚きを禁じ得ない。とはいえドラドーンもダメージがないわけではないはずだ、ただ戦闘不能にできなかっただけで。
「それが君の全力? だったら今度は、ドランの全力を見せてあげるよ。……ドラドーン!」
 ドランがその名を呼ぶと、ドラドーンはさらに天高く舞い上がり、そして、持ちうる力の全て、最大限のパワーで最大の攻撃を放つ。

「流星群!」

 天空から降り注ぐのは、無数の流星。この星すらも消し去ってしまうのではないかというくらい大きく、強い星々が、正に星の数ほど降り注ぐ。
 如何に龍の舞で素早さを上げていようと、その一撃——否、無数の連撃をオノノクスがかわせるはずもない。
 よってオノノクスは、数多の星、流星の群れに飲み込まれたのであった。



今回はムントvsドランです。というか、ドランが強すぎる。エレクトロの比じゃないですねこれ。反省します……ともかく、ドラドーンはドランの手持ちの中でもずば抜けた存在なのです。流星群を撃たれたムントのオノノクスがどうなったかはお察しください。それではあとがきはこの辺で。次回もこんな感じで誰かのバトルの続きです。次回もお楽しみに。