二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 445章 黒煙 ( No.626 )
日時: 2013/01/18 17:05
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 ミキとフレイのバトルは、現状ではほとんど動きがない。しかしストータスの鉄壁無双の防御により、フィニクスの攻撃はことごとく防がれてしまう。
「フィニクス、ドラゴンビート!」
 フィニクスの龍の音波はストータスに直撃する。しかしストータスは微動だにしない。
「その程度じゃあたしのストータスは倒せないよー。ストータス、グランボールダ!」
 ストータスが地面を踏み鳴らすと、地中より大小様々な無数の岩石が飛び出し、フィニクス目掛け飛来する。
「かわしてフィニクス!」
 幸い、襲い掛かってくる岩の速度はそこまで速くはない。普通に動けばフィニクスの機動力なら問題なくかわすことができる。
「エナジーボール!」
 全ての岩をかわし切ると、フィニクスは自然の力を凝縮した球体を生成し、ストータスへと発射するが、
「ジャイロボール!」
 ストータスはその場で高速回転し、エナジーボールを弾き飛ばしてしまう。
「いくらストータスが頑丈でも、まったくノーダメージにはならないからねー。こうやってある程度の攻撃は無効化できるようにしてるんだー」
 さらにミキを追い込むような情報。ただでさえ等倍程度のダメージでは身じろきひとつしないストータスに、こちらの攻撃を防御されてはたまったものではない。まるで、難攻不落の要塞である。
「……フレアバースト!」
「大地の怒り!」
 放たれた炎の銃弾を、ストータスは地面から噴出した土砂でシャットアウト。防御に使える技はジャイロボールだけではないようだ。
「ほらほら、休ませないよ。グランボールダ!」
 二撃目のグランボールダがフィニクスを襲う。
「ハリケーン!」
 ここでフィニクスは大技を放つ。災害の如き大竜巻を発生させ、飛び出た岩石を巻き込み、全て吹き飛ばしてしまう。しかも吹き飛ばされた方向は、ストータスの鎮座する方向だ。
「擬似的な岩タイプの攻撃かー、考えたねー。でもでも、そんなのはあたしにもストータスにも効かないもんねー。大地の怒り!」
 飛来する岩石を、ストータスは地面から噴き出す土砂で防ぐ。土や砂と共に、地中から引っ張り出された岩は再び地面へと戻っていき、
「全力でエナジーボール!」
 次の瞬間、大量のエナジーボールがストータスを襲った。
「おぉっ?」
 自然の球は大きさもさることながら、数も相当数あった。指示通り全力で放ったのだろう、その数は十発を超えるほどであったが、しかしストータスに大打撃を与えられたかというと、そうではなかった。
 やはりストータスは、どっしりと構えたままだ。
「……二つ、分かったよ」
「んー? 何がー?」
 ミキが二本指を立て、フレイはそれに興味深そうに耳を傾ける。
「まずそのストータスの隙。技も絡めて防御行動を能動的に起こすなんて厄介だと思ったけど、そのストータスは一回の攻撃モーションが長く、攻撃の隙も大きい。もしこっちの攻撃がさっきみたいに防御されても、その直後に連続して攻撃すれば、十中八九当たる」
 これはミキが実践したことだ。ハリケーンで返した岩を、ストータスは大地の怒りで防御した。しかしその直後、エナジーボールの直撃を何発も喰らっている。
「そしてもう一つは、そのストータスの行動パターン。というより、体質、なのかな。そのストータスは、限りなく素早さが低い。低すぎて、その場から動けないんだね」
「ん……」
 ミキの言葉に、フレイは少し驚いたような表情をする。ストータスの隙についてはともかく、ストータスの性能に関してはそう簡単に見破られないと思っていたのだろう。
 しかし事実、ストータスはバトルが始まってから一歩も動いていない。グランボールダで地面を踏み鳴らした時も、ジャイロボールで回転した時も、寸分たがわず同じ位置に戻っている。
 それはつまり、ストータスが動けないということ。鈍重であるが故に強固なストータスだが、鈍重過ぎる故に動けないほど重いのだ。
「へぇー、たったこれだけでそこまで見抜くなんて、やるねーやっぱ。つってもだからってどうもしないよー? だってストータスが動けないくらい遅いのは、動く必要がないからなんだ。その分を全部防御に回してるから、動く必要なんてないんだよ。初見でそれを見破ったのはガイアとエレクトロ、レイの三人だけだったもんでちょっと驚いたけど、それが隙になったり、弱点になったりすることはないんだよー」
 これはフレイの言うとおりだ。鈍重なポケモンには鈍重なポケモンの戦い方があり、それにスピードはいらない。速度がないことが前提のスタイルなのだから当然だ。それはストータスが習得しているジャイロボールからも分かるだろう。
「さてと、あんまだらだらしてもしょうがないし、ちゃっちゃと決めちゃってよストータス。グランボールダ!」
 ストータスが咆哮と共に地面を踏み鳴らすと、地中から大小——否、大、特大の大きさの岩石が無数に飛び出し、フィニクスを包囲する。
「どう? これならそのフィニクスでも避けきれないでしょー。数は変わんないけど、大きさをグレードアップ、こうすればハリケーンで飛ばされることもないしー——ね!」
 刹那、数多の岩石がフィニクスへと襲い掛かる。
「っ! 避けて、フィニクス!」
 必死に指示を出すミキだが、それは叶わなかった。すぐにフィニクスは、岩石のドームに閉じ込められてしまう。
「引き寄せて、ストータス」
 ストータスは岩石によって完全に身動きを封じたフィニクスを、自身の頭上——甲羅の上にまで引き寄せた。
「な、なにを……」
「見てれば分かるよー。行こうか、ストータス」
 フレイはうつ伏せのまま息を吸い、彼の持てる最大級の技を指示する。

「噴火!」

 突如、ストータスの甲羅が爆発した。いや、正確には甲羅の中が爆発し、そこから灼熱の石炭が飛び出したのだが。黒煙を吹きながら放たれる灼熱の石炭は、まるで溶岩のように、おぞましい熱気を帯びていた。
 そして岩に囲まれていたとはいえ、フィニクスはその直撃を受けた。焼け石に水にもならない岩を貫き、爆炎はフィニクスを吹き飛ばした。
「フィニクス!」
 空高く舞ったフィニクスは、不死鳥の姿に似つかわしくないほど無様に落下し、地面に叩きつけられる。威力は四分の一まで抑えられているはずなのにこの威力。グランボールダで削られたと言っても、あれは包囲のためであり、攻撃の意味はあまりなかった。つまりそれだけストータスの噴火の威力は凄まじく、それだけストータスの体力は有り余っているということに他ならない。
 要するに、ミキはストータスの体力を、ほとんど削ってはいなかったのである。
「う、うぅ……フィニクス」
 両手と両膝を着き、フィニクスに寄り添うミキ。フィニクスの炎が弱まっているのは、火を見るより明らかだ。
「……ま、悪いけどこれが勝負の世界ってやつだからねー。でもあんまりしょげない方がいいよ。まだ君は伸びる、まだまだ先があるんだから」
 それでもあたしに勝てるかは微妙だけどねー、と最後に付け足して、フレイはストータスをボールに戻した。
 その時。

 ピチャン

「お?」
 唐突に空に雨雲が差し、瞬く間に豪雨となった。ミキとフィニクスにとっては、追い打ちのような雨である。
「うー、雨は嫌いだなー。寒いし濡れるし、この服薄いしー」
 とぶつぶつ言いながらびしょびしょに濡れた浴衣の袖をつまんでいると、フレイの頭上のみ、雨が止んだ。
「お、ハンゾウじゃん。気が利くねー」
 音も気配もなく現れたのは、時代錯誤な忍者装束に身を包んだプラズマ団員、ハンゾウだった。手に赤い番傘を持ち、フレイを雨から守っている。
「遅れて申し訳ござらん。たった今、アシド毒邪隊長殿から連絡がござった。例の物が見つかったと」
「ふーん。じゃ、行こっかー」
 フレイはメタグロスをボールに戻し、ハンゾウにおぶさった。
 ハンゾウは丁寧にフレイを背負うと、視線をミキ蹲ったままのに向ける。
「フレイ殿。あの娘は——」
「あの子に手ぇ出さないで」
 ハンゾウが言い切るより早く、フレイが制した。彼女にしては、珍しくきっぱりとした物言いだった。
「前に一度、辛酸舐めさせられてるのは知ってるけど、あの子はあたしの唯一の光なんだよ。たぶん、あの子じゃなきゃダメだと思う。だから今はそっとしといて。いつか、あたしがケリつけるから」
「……御意」
 フレイの言葉の意味は理解しかねるようだったが、忍とは忠誠心の塊のようなもの。素直に主人の命を聞き入れた。
「じゃあねミキちゃん。次に会う時は、もっと強くなってね。じゃないと、あたし困っちゃうよ。いつまでたっても、ケリがつかないままでね——」
 最後にミキを見遣って、フレイとハンゾウは、その場を去った。
 最後に残ったのは、雨に打たれるミキと、フィニクスだけだった。



今回はミキとフレイのバトルなんですが、ちょっとフレイで意味深なこと書きすぎました。まあでも、彼女は7Pの中でもちょっと特殊な存在ですし、このくらいがちょうどいいかな? ……いやしかし、それいったら、皆がみんなちょっとずつ特殊なんですけどね。それではアキラ、ザキ、ムント、ミキと来て、次はリオとエレクトロのバトルです。時系列的には一番バトルの進行が滞っています。では次回もお楽しみに。