二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 446章 雷電 ( No.628 )
- 日時: 2013/01/19 04:44
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
リオは戦闘不能となったドラドーンをボールに戻し、最後に残ったポケモンが入っているボールを、ネックレスから外す。
「やっぱり、最後はあなたに頼ることになるか……みんなの分まで、頼んだよ」
そして力強く握り込み、そのポケモンを、繰り出す。
「さあ出て来て、シャンデラ!」
リオの最後のポケモンは、誘いポケモン、シャンデラ。シャンデリアのような体に紫色のを灯す、リオのエースポケモン。
「遂に来ましたか……」
エレクトロもシャンデラの姿を見て、少しだけ怯むような表情を見せる。静かな炎ではあるが、シャンデラの灯火にはえも言われぬような威圧感を放っているのがひしひしと伝わってくる。
「しかし、そのシャンデラは我々のマークしておくべきポケモンの一体。対策は怠っていませんし、私のトロピウスにはこの技があります。ハイドロポンプ!」
トロピウスは大きく息を吸い込み、空気と共に大量の水を発射する。しかし、
「シャンデラ、サイコキネシス!」
シャンデラは念動力を放って対抗する。しかも軌道を逸らすような中途半端なことはせず、真正面からその水流を打ち消した。
「続いてスタープリズム!」
シャンデラは無数のガラス球を虚空より降り注ぎ、内包される冷気と共にトロピウスを襲う。
「トロピウス、ハリケーンです!」
トロピウスは翼を大きく羽ばたかせてガラス球と冷気を吹き飛ばし、攻撃を回避したが、
「シャンデラ、大文字!」
間髪入れずにシャンデラは大の字の巨大な炎を放つ。その炎は相当な大きさで、しかも念動力の補助により誘導性を持つ。トロピウスでもかわすのは難しそうだ。
「ハリケーン!」
ならばとトロピウスは突風を吹かすが、ガラス球とはわけが違う。多少炎を飛ばしはしたものの全てを吹き飛ばすことは叶わず、トロピウスはシャンデラの炎に燃やされてしまった。
「一撃ですか。私の見立てでは一度なら直撃にも耐えられるはずだったのですが、どうやら以前戦った時よりも火力が増しているようですね」
焼かれ地に落ちたトロピウスを戻しつつ、エレクトロはシャンデラの成長を指摘する。
「当然よ。私もシャンデラも、他のみんなも、いつまでも同じ位置に立ち続けたりはいない。いつだって前に進んでるよ」
「そうですか。それならば、私も全力を出せるというものです。とはいえ、現状での全力、ですがね」
エレクトロも最後のボールを構えつつ言葉を紡ぐ。
「どうにも私は、力をセーブし過ぎてしまっているきらいがあるようでして、ここぞという時に本当の全力を出せないことが多いのです。今も100%の力というわけではありません……やはり、たまに力を出し切って全力を出す感覚を掴むことが重要なのでしょうね」
スポーツでもなんでも、常に全力を出すことは難しい。生物の体力は無限に続くものではないから、適度に力を抜くことが大切だ。しかしかといって、常に力を抑えていれば、いざという時、重要な場面で全力が出せない時が出て来てしまう。
そもそも全力を出すということ自体言うほど簡単なことではないのだ。だから日常的に全力を出し慣れておかなければ、大事な局面で全力を出すことなどできない。それが、7Pエレクトロだ。
「それでは、最後の戦いを始めましょう」
言ってエレクトロは、最後のポケモン、彼の切り札を繰り出す。
「終焉の時です、ドルマイン!」
エレクトロのエース、ボールポケモン、ドルマイン。
マスターボールに似た姿で、球状の体からは稲妻型と、円錐状の突起がある。
「泣いても笑ってもこれで最後。我々の戦いはまだ続きますが、せめて、私と貴女の戦いは、ここで決着をつけても良いでしょう」
「そうね。貴方は7Pの三位。つまり貴方を倒せば、少なくとも四位以下相手に私が遅れを取ることはそうないだろうし、残る二人にしたって、十分相手取れるはずよね」
「私を倒せれば、ですがね」
互いに言葉で牽制し合う二人。シャンデラも、ドルマインも、じっと相手を見据え、睨み合う時間が続く。その時だった。
ピチャン
「おや?」
「……?」
どこからか水の滴る音が鳴る。それも一回ではなく、ピチャン、ピチャンと、連続して。
音を聞き、空を見上げ、リオはその現象を理解する。そして同時に、絶望に満ちたように青ざめる。
「嘘……雨……!?」
降り出した雨、豪雨。曇天の群雲から注がれる無数の水滴は、リオも、エレクトロも、シャンデラもドルマインも濡らしていく。
そしてその雨粒に最も影響を受けたのは、シャンデラだった。
シャンデラの炎は目に見えて弱まっている。見る者を圧倒する静かな炎は、弱化し、今やなんの圧力も感じない。
「この雨は……自然現象ではないようですね。雨乞いか、誰かが雨降らしの特性を持つポケモンを出したか、というところでしょう。いやしかし——」
エレクトロは微かに笑う。小さな笑みだが、その笑みは勝利を確信した笑みだった。
理由が何であれ、突然降り出した雨でシャンデラとドルマイン、双方の拮抗していた力の差は崩壊した。
アキラのホムロソクがそうであったように、炎タイプは雨に弱い。いくらリオのシャンデラと言えど、それは例外ではない。伝説のポケモンでもない限り、天候を無視できるポケモンは限られてくる。
「——これはもう、私の勝ちで確定でしょう。私はあまり断定的な物言いは好きではないのですが、それでもこの豪雨では、貴女のシャンデラはその力を半分も発揮できないでしょう。しかし逆に、私のドルマインはこの雨の恩恵を受けます」
勝利を確信した笑みを浮かべたまま、エレクトロはドルマインに指示を出す。
「ドルマイン、雷です!」
稲光が煌めき、雷電が轟く。豪雨の中、天より放たれた稲妻が、一直線にシャンデラへと襲い掛かる。
「うっ……サイコキネシス!」
シャンデラは咄嗟に念動力で稲妻を止めようとするが、破壊力が凄まじい。稲妻は念動力を貫通し、シャンデラに突き刺さった。
「シャンデラ!」
全身に電撃を浴びたシャンデラは、まだ戦闘不能ではないが、運悪く麻痺してしまう。しかも雷のダメージも決して少なくはない。
「今の威力、サイコキネシスで止められないなら、大文字しかない。けど……」
大文字の火力は、豪雨によって半減されてしまう。そんな半端な火力ではドルマインの雷を防ぐことは出来ないだろう。しかし雨天状態の今、雷は必中。確実にシャンデラに襲い掛かってくるため、避けることも困難だ。
「私のドルマインが恩恵を受けられるのが、雷だけだと思ったら大間違いですよ。ドルマイン、アクアボルト!」
ドルマインは雷に続き、電気を帯びた水流を発射した。その水流も、雨によって勢いが増している。
「シャンデラ、サイコキネシス!」
念動力で水流の軌道を逸らそうとするが、その途中で身体が痺れてしまい、水流を完全に避けることは出来なかった。直撃でこそないが、雨で威力が強化されているので、ダメージは大きい。
「くっ、シャドーボム!」
それでもシャンデラの闘志はまだ消えてはいない。影から生成した爆弾を、ドルマインへと発射する。
「シグナルビームで撃ち落としなさい!」
しかしドルマインの放つ光線が、爆弾を全て撃ち落とし、シャンデラの攻撃が届くことはなかった。
「雷!」
「サイコキネシス!」
再び落ちる稲妻に、シャンデラも同じように念動力を放つ。今度は真正面からは受けず、軌道をずらして避けるか、せめてダメージを減らそうとしたが、無駄であった。
ドルマインの雷は念動力を突き破る。ずらすこともできず、盾にもならない。全てを貫き、確実に仕留める神鎗の如く、シャンデラも射貫く。
「まだ倒れませんか。ならば攻めましょう、ドルマイン。アクアボルトです!」
ドルマインは電気を帯びた激しい水流を発射。雷ほどではないが勢いよく一直線にシャンデラへと向かっていく。
「シャンデラ、もう一度サイコキネシス!」
シャンデラは今度こそ水流の軌道をずらすことに成功したが、かなりギリギリだった。雷やアクアボルトで削られたダメージと雨の影響が強く出ているようだ。
「シャンデラ、シャドーボム!」
「シグナルビームです!」
なんとかシャンデラは影の爆弾を放つも、ドルマインの光線で撃ち落とされてしまう。
「さて、この雨の中バトルが長引いてしまってはいけません。これが貴女に捧げるせめてもの手向けです。ドルマイン——」
ドルマインは黄色い突起に電気を蓄積させる。どうやらこの一撃で決めるようだ。
電撃が最大限まで溜まり、フルパワーになったその時、ドルマインは力を解き放つ。
「——雷!」
雷光煌めき、雷電轟く。眩い閃光と共に天地を振るわす轟音が鳴り響き、稲妻の槍が落とされる。
威力も速度も気迫も段違いの雷は、一直線にシャンデラに襲い掛かり、その身を貫く。
予告通り、今回はリオ対エレクトロです。他でもあったようにここでも雨が降り、シャンデラの力は半減、逆にドルマインは強化された状態でのバトルとなりました。ちなみにエレクトロの手持ちにはあまり関連性はありません。せいぜいドルマインくらいで、残りは走攻守のバランスで決めました。まあ、ハッサムは硬いですし、トロピウスは鈍足ですが。さて次回は今回の続きにしようと思っています。次回もお楽しみに。