二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 455章 毒蛇 ( No.657 )
日時: 2013/02/03 02:55
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 砂煙が晴れた時、そこには地面に仰向けになっているクロバットの姿があった。ビルドアップの二回掛けを得たウォーグルのブレイブバードに耐え切れず、戦闘不能だ。
 そしてウォーグルもしばし羽ばたいていたが少しずつ下降していき、やがて地に落ちる。クロバットの連撃と毒のダメージで削られ続け、ブレイブバードの反動で遂に体力が尽きたようだ。
「燃えたよ空中戦。戻りな、クロバット」
「よくやってくれたよ、ウォーグル。戻ってくれ」
 互いにポケモンをボールに戻し、三体目のポケモンが繰り出される。
「いよいよバトルも間奏に入って来たね。このままAメロBメロ突っ走って、ガンガン盛り上げていくよッ! 爆裂ッ! ハブネーク!」
 ホミカの三番手は牙蛇ポケモン、ハブネーク。ハブのような長い胴体には金色の模様が規則的に並んでおり、尻尾の先端は刀のように鋭い。
「…………」
 対してイリスはポケモンを繰り出さない。ジッとハブネークを見据え、なにか思索を巡らせているようだ。
(まさかこんなに早くメタゲラスとウォーグルが倒されるなんて……あと残ってる飛行タイプはリーテイルだけど、ハブネークは毒単タイプだから相性は悪い。あまり出したくないな)
 予想外に早く毒菱の影響を受けない二体がやられてしまったため、イリスは繰り出すポケモンが制限されてしまった。毒菱のことだけを考えるならリーテイルを出すが、ハブネークがどんな技を使うか分からない以上、無闇やたらに出したくはない。
 しばし考えた末、イリスはボールを一つ握り込んだ。
「しょうがない、リーテイルはもう少し見送るか」
 とりあえずリーテイルはまだ出さず、猛毒状態になる覚悟で次のポケモンを繰り出す。
「速攻で決めるよ、エルレイド!」
 イリスの三番手は、毒タイプの弱点を突けるエルレイド。
 エルレイドはフィールドに立った瞬間、顔を歪ませ、苦しそうに体を小刻みに震わす。二回掛けされた毒菱の効果で、猛毒状態になったのだ。
「今度はエスパータイプで来たね。もう毒菱の効かないポケモンがいなくなったのか、それとも別の意図があるのか。なんにしても、エスパータイプにむざむざと負ける、あたしのポケモンじゃないよ」
 それは分かっている。ホミカのバトルを最初に見た時、ホミカはエスパータイプのポケモンを容易く下していた。おそらく彼女は、毒タイプ使いであるが故に、エスパータイプのポケモンとのバトルに慣れているのだろう。
(ドガースもシャドーボールを覚えてたし、きっとエスパータイプ対策はきっちりしてるんだろうな)
 しかしハブネークは防御が低い。エルレイドの火力で攻めれば、倒せない相手ではないはずだ。
「そんじゃあトークはこの辺にして、バトル再開だ。ハブネーク、ヘドロウェーブ!」
 ハブネークは顎が外れているのではないかと思うくらい大きく口を開き、大量の毒液を津波のように放つ。
「エルレイド、サイコバレットで相殺だ!」
 エルレイドもすぐに念動力で生成した弾丸を乱射し、毒液の波を散らす。
 サイコバレットは自身を火傷状態にしかねないリスクのある技だが、猛毒状態の今、そのリスクは働かない。代わりに時間が経過するたびにどんどん体力を削られてしまうので、短期決戦に持ち込む。
「影討ち!」
 エルレイドは影に入り込んでハブネークの背後を取る。そこに鋭い肘の刃を振り下ろすが、
「後ろからなら当たると思った? 甘いね! アイアンテール!」
 ハブネークは振り返らずに尻尾を後方に突出し、刺すようにエルレイドを押し飛ばした。
「噛み砕く!」
 そして今度は振り返り、鋭い深紅の牙を剥いてエルレイドにかぶりつく。
「エルレイド、引き剥がせ! マグナムパンチ!」
 エルレイドも大砲の如き勢いで拳を繰り出すが、ハブネークはなかなか離れず、しっかりとエルレイドに喰らいついている。
「そのまま離すんじゃないよ! ハブネーク、火炎放射!」
 ハブネークはエルレイドに噛みついたまま、燃え盛る炎を放つ。そうなれば当然、エルレイドは零距離で炎の直撃を喰らうこととなり、大ダメージを受ける。
「ぐぅ……アイスブレード!」
 エルレイドは比較的特防が高めだが、それでもこんな距離で火炎放射を喰らい続ければまずいことになる。毒でも体力を削られるのでなおさらだ。なのでエルレイドは両肘の刃を氷結させ、ハブネークの胴体を切り裂いた。
 するとハブネークは、バッと飛び退ってエルレイドから距離を取る。案外あっさり離れたものだが、イリスにとっては好都合だ。
「いまのうちに攻めるぞ! エルレイド、サイコバレット!」
「甘い甘い! ヘドロウェーブだ!」
 エルレイドは念力を固めて銃弾を生成し、機関銃のように乱射する。しかしハブネークもすぐさま毒液の波を放ち、弾丸を全て飲み込んでしまう。
「もう一発ヘドロウェーブ!」
 続け様に放たれる毒液の津波。サイコバレットを撃った直後であったこともあり、相殺する暇もなくエルレイドは毒液に飲まれてしまった。
「エルレイド!」
 ヘドロウェーブに飲み込まれたものの、エルレイドはまだ戦闘不能ではない。両肘の刃を構え、攻撃の意志を見せる。
「ヘドロウェーブをモロに喰らっても意気消沈しないその姿勢、好感が持てるよ。あんたたちの勝ちたいってエネルギー、ビンビン伝わって来る。こっちも本気も本気、ガチガチのガチで行くよ! ハブネーク、アイアンテール!」
 ハブネークは跳び上がり、鋼鉄の如く硬化させた尻尾を太刀のように振り下ろす。
「アイスブレードで迎え撃て!」
 エルレイドも氷結させた刃で尻尾を受け止めるが、その一撃はかなり重い。片腕では支えきれず、両腕を交差させるようにしてなんとか受け切る。
「火炎放射!」
 しかしそこに灼熱の炎が放たれ、エルレイドの姿勢は崩れてしまい、ハブネークの尻尾に切り裂かれる。
「まだまだ! アイアンテール!」
 今度は横から薙ぐような軌道のアイアンテールが繰り出された。
「アイスブレードで受け止めろ!」
 薙ぎ払いなら振り下ろすよりも威力が低くなるため、今度は片腕でもなんとか受け止めることができ、そのままもう片方の刃でハブネークに切りかかるが、
「っ! 逃げられたか……」
 ハブネークは素早く後退してアイスブレードを回避。エルレイドの攻撃は空振った。
「ハブネーク、噛み砕く!」
「エルレイド、マグナムパンチ!」
 牙を剥くハブネークを、エルレイドは大砲の如き拳で殴り飛ばす。直撃はしたが効果はいまひとつ、きれいに受け身も取ったので、ハブネークへのダメージはさほど大きくない。
「アイアンテールだ!」
 またしてもハブネークはアイアンテールを繰り出す。今度は斜めからの袈裟懸けのような軌道で襲い掛かってきた。
「かわしてマグナムパンチ!」
 エルレイドはサッと身を退いて斬撃のような尻尾をかわすと、握り込んだ拳を勢いよくハブネークへと突き出す。
「火炎放射!」
 だがそこでハブネークは炎を放ち、エルレイドの動きを止めてしまう。
「アイアンテール!」
 その隙にハブネークは態勢を整え、鋼鉄のように硬化させた尻尾の先端をエルレイドに突き刺した。
「くっ、アイスブレード!」
 ひとまず引き剥がそうとエルレイドは両肘の刃を凍結させる。が、するとハブネークはぐるっと回るように後退し、エルレイドから距離を取った。
「……?」
 イリスはそこで違和感を感じる。最初の頃は特になんとも思わなかったが、流石にもう気付いた。
(なんだこのハブネーク、エルレイドの攻撃を……いや、アイスブレードを極端に避けている……?)
 ハブネークはエルレイドがアイスブレードを繰り出そうとすると、ほぼ必ず身を退いている。確かにマグナムパンチは効果いまひとつ、影討ちは威力が低く、サイコバレットは相殺しかないとはいえ、それでもアイスブレードを病的なまでに避けている。イリスには、そのように見える。
「……エルレイド、影討ち!」
 エルレイドは影に潜り込み、ハブネークの背後に回って刃を振るうが、
「ハブネーク、アイアンテール! エルレイドを投げ飛ばしな!」
 刃はハブネークの尻尾に防がれ、そのまま絡め取られて投げ飛ばされた。
「アイアンテール、GO!」
 蛇行しながら迫ってくるハブネークは、足首を刈るように低い姿勢で鋼鉄の尻尾を薙ぎ払う。
「跳んでサイコバレット!」
 エルレイドはジャンプでアイアンテールをかわすと、念力の弾丸を連射し、ハブネークを攻撃するが、
「ヘドロウェーブ!」
 毒液の波に飲まれ、弾丸は全て相殺されてしまう。
「エルレイド、アイスブレード!」
 そこでエルレイドは凍てつく刃を構え、落下の勢いも合わせてハブネークに切りかかる。
 しかしハブネークはまたしても大きく後退し、エルレイドの斬撃はかわされる。が、これでイリスは確信に至った。
(分かった……!)
 攻撃範囲を自在に切り替える難敵、ハブネーク。イリスはその攻略法を、見つけた——



ホミカ戦その四、相手はハブネークです。個人的にハブネークはわりと好きです、あの尻尾が格好良いので。毒と連撃で追い詰められるエルレイドですが、そこでイリスが見つけたハブネークの攻略法とは。まあ、普通に読んでいれば分からなくもなさそうですがね。ヒントはハブです。それでは、次回をお楽しみに。