二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 458章 中毒 ( No.662 )
- 日時: 2013/02/09 04:57
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
ホミカはダイケンキの攻略法が分かったと豪語するが、しかしイリスはさほど気にしていなかった。ホなぜならミカは相手の弱点を突くスタイルより、パワーでゴリ押すか、自分の作戦に相手を引き込むスタイルとイリスは読んだからだ。
ホミカは自信満々な叫ぶと、すぐに行動に移った。
「ダストダス、ドレインパンチ、ラッシュ!」
ダストダスは両腕を伸ばし、四方八方から怒涛の拳を繰り出すが、
「シェルブレード!」
ダイケンキの操るアシガタナに斬られ、弾かれ、防がれ、絡め取られて、全ての拳は捌かれてしまう。
が、それでもダストダスは止まらなかった。ダイケンキがアシガタナを切り上げた、その時。
「そこだダストダス! 刀を奪い取れ!」
ダストダスの片腕がアシガタナに巻き付き、強引にダイケンキから奪い取ってしまった。
「なっ、しまった……!」
今までアシガタナを弾かれたことはあっても、ここまで露骨に奪われたことはなかった。取り落とさないように気を付けてはいたが、能動的に奪われるのは予想外だったので、対応できなかった。
「まだまだラッシュだ! ドレインパンチ!」
ダストダスは奪い取ったアシガタナを、ダイケンキから離れた場所に放り投げ、ラッシュを再開する。四方八方から行われる乱打は、アシガタナ一本では捌ききれず、何発かまともに喰らう。しかも、
「ほらそこだよ! もう一本貰いッ!」
ドレイパンチを警戒するあまり、アシガタナへの意識が薄れた瞬間、残る一振りもダストダスに奪われ、明後日の方向に投げ飛ばされる。
これでダイケンキの武器は全てなくなった。もうシェルブレードは使えない。
「くっそ……!」
ダイケンキのバトルにおいて中核をなすのが、接近攻撃かつダイケンキの技の中で最も応用と小回りの利くシェルブレード。それが使用不可となれば、ダイケンキはその力を半分も生かすことは出来ない。
ダストダス相手には有利なダイケンキだったが、これで形勢逆転されてしまった。
「猛毒もあるし、ガンガン攻めて決めるよ! ダストダス、ベノムショック!」
「ダイケンキ、吹雪だ!」
ダストダスの構えた指先から毒液が噴射されるが、ダイケンキは素早く猛吹雪を放って毒液を凍らせ、ダストダスも攻撃する。
ベノムショックはどうしたって喰らいたくない技なので、念のためにと吹雪も使えるダイケンキにしておいて正解だったと、イリスは胸を撫で下ろす。
だがベノムショックを封じたところで、ダストダスの攻撃は止まらない。
「ロックブラスト!」
照準をそのままに、ダストダスの指先から無数の岩石が射出される。アシガタナはないので、弾くことは出来ない。
「くっ、吹雪!」
またしても猛吹雪で岩石を押し返す。ダストダスへのダメージも見込めるが、決定打になるほどではない。
「ふぅん、刀なくてもそこまで戦えるんだ。だったこれでどう? サイコキネシス!」
今度は強力な念動力を、破壊力を持つ念波に変えて撃ち出してきた。流石にこれは、吹雪では打ち消せない。
「ダイケンキ、防御だ!」
体を屈めて姿勢を低くし、できるだけ鎧で体を隠すようにダイケンキは防御の態勢を取る。そのため、念波は直撃したがダイケンキへのダメージはある程度抑えられた。
(アシガタナがなくてもある程度はやれるけど、やっぱり攻撃に移りづらい……向こうが本格的に攻めて来る前に決めないと)
こちらには猛毒もあるので、手をこまねいてはいられない。攻める時は攻める。
「ダイケンキ、メガホーン!」
ダイケンキは法螺貝のような雄々しき角を構えて突貫する。
「ダストダス、かわしてサイコキネシス!」
対してダストダスは大きく跳躍し、ダイケンキの上を取る。そしてそのまま念波を放ってダイケンキの背中に直撃させた。
「ロックブラスト!」
「一か八か……シェルブレード!」
ダストダスは地面に降り立つと、今度は背後から岩石の射撃を行う。が、そこに水のエネルギーを纏ったアシガタナが飛び、その射撃を阻止する。
「な、なにこれ!?」
アシガタナはダイケンキの一部。ゆえにシェルブレードに反応して遠くからでも動かすことができる……が、あまりに使う機会が少ないため精密な動作は出来ず、たまに失敗するという欠陥のある技術だ。今回は運よく成功したが。
「よし、いいぞ。そのまま引き寄せろ!」
ダストダス突き刺さったものは置いておき、ダイケンキはもう一振りのアシガタナも操作し、自らの手中へと呼び戻すとするが、
「させないよ! ダストダス、食い止めろ!」
ダストダスは素早く腕を伸ばしてアシガタナを掴み取り、思い切り投げ飛ばして壁へと深く突き刺した。こうなってしまえば、簡単には呼び戻せない。
「もう一本も投げ飛ばしな」
さらに体に突き刺さっているアシガタナも引っこ抜き、投げ飛ばして遠くの地面に突き刺す。こちらも深々と刺さっており、そう簡単には抜けそうにない。
「く、失敗か……」
逆転に繋がる一手だったが、あと少しのところで阻まれてしまった。このダストダス、攻めるだけが脳かと思えば、意外と器用だ。
「もうそろそろネタ切れでしょ。決めるよダストダス、ドレイパンチ!」
「防御だ!」
ダストダスは全方位から怒涛の乱打を繰り出して身を縮こまらせているダイケンキを殴打する。そして、
「ベノムショック!」
足を払うようにして放たれた一撃で、ダイケンキの態勢が少しだけ崩れる。その隙を狙って指先から毒液を噴射し、ダイケンキへと浴びせた。
「しまった……ダイケンキ!」
ダイケンキは耳を塞ぎたくなるような声で絶叫し、完全に態勢を崩してしまう。まだ辛うじて体力が残っているようだが、もう放っておくだけで戦闘不能になるほど削られている。
「……あんたはかなり頑張った方だよ。あたしのガチメンバーがここまで追い込まれるなんて、過去滅多にない。猛毒状態の中、よくやったさ」
でも、とホミカは続ける。
「毒を受けたままじゃあ本気の超マックスのあたしたちは倒せない。それはしゃーないさ。さーて、今度こそ決めるよダストダス! ベノムショック!」
ダストダスはダイケンキに接近すると、至近距離から確実に決めるつもりなのか、指先をダイケンキに押し付け、毒液を発射する準備に入る。
回避も防御もできないこの状況。しかしそれでも、まだ突破口は存在する。最後の可能性に賭け、イリスはダイケンキに指示を出す。
「ダイケンキ、シェルブレード!」
刹那、ホミカとダストダスは驚愕しながらアシガタナが飛ばされた方向に振り返った。
「なにぃ!?」
あそこまで深く突き刺さったアシガタナが抜けるはずないと高を括っていたので、ここでシェルブレードが飛んでくるのはまずい。そう思ってちゃんと確認する前にダストダスは腕を伸ばしたが、
「え、あれ……?」
アシガタナは動いてなかった。水のエネルギーこそ纏っているものの、突き刺さった状態のままだ。
そこで遂に、ホミカはイリスの作戦に気付く。ダストダスと一緒に慌ててダイケンキの方に向き直るが、
「ハイドロカノン!」
ダイケンキは既に巨大な水の弾丸を生成し、発射準備を終えていた。
詰まるところ、ホミカの敗因はシェルブレードを意識し過ぎたことだ。ダストダスの技をほぼ全て防いでしまうのだから警戒して当然だが、警戒するあまり、ベノムショックを撃つのとシェルブレードが襲ってくるのと、どちらが早く、また優先度が高いかを、正確に判断できなかった。そこをイリスに狙われたのだ。
しかも確実に決めようと接近したのも裏目に出た。目と鼻の先にいる相手に向けて放たれるハイドロカノン、特性、激流によって途轍もない威力となって、ダストダスに襲い掛かる。
「ダストダス!」
激流の弾丸に撃たれたダストダスは吹き飛ばされ、壁に激突。そして、戦闘不能になった。
バトルが終わると、しばしの間静寂に包まれる。が、
「オーマイガッ! ダストダス戦闘不能ッ! ダイケンキの勝ち! よって勝者、イリスだあぁぁぁぁぁぁぁ!」
審判のハイテンションな叫びに呼応するかのように、観客たちも沸き上がった。
その様子を呆然と見ていると、イリスのもとにホミカが歩み寄って来る。
「あーあ、負けちった。でもま、全力出し切って清々しーし、楽しかったよ」
「はい。僕も楽しかったです」
今までたくさんのバトルをしてきた。だがその多くは、負けられない戦い。しかし今の戦いは、心の底から楽しいと思える、そんなバトルだった。
「そうだ、これあげる。あたしに勝った記念さ」
そう言って手渡して来たのは、紫色の縁が縦に連なっていて、一番上の円には四つの白い指のようなもの。そして金色の真珠が埋め込まれている。
「トキシックバッジ。あんたには必要ないと思うけど、受け取って」
「……ありがとうございます!」
かくしてイリスは、ホミカに勝利し、九つ目のバッジを手に入れた。
そして、ポケモンバトルの楽しさを再認識し、プラズマ団と戦う決意を固めるのだった——
ホミカ戦、決着です。アシガタナを奪われて追い込まれたダイケンキですが、フェイントをかまして見事勝利を収めました。そしてこれでイリスのバッジは九個、まあ金銀では十六個あったので無問題です。では次回は、あの男登場です。お楽しみに。