二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 461章 蛸 ( No.665 )
日時: 2013/02/10 16:51
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「デンチュラ、雷!」
 デンチュラは超高電圧の稲妻をオクタンへと落とすが、オクタンは素早く水中に潜って雷をやり過ごす。
「エナジーボールだ!」
「オクタン砲じゃ!」
 続けて放ったエナジーボールも、オクタンの吐き出した墨で打ち消され、さらに残った墨がデンチュラに降りかかる。
 このオクタン、やはり特攻が上がっている。さっきの時もそうだったが、エナジーボールを相殺するだけでなく、貫通してデンチュラにもダメージを与えるまでになった。
「チャージビーム、か」
 オクタンの特攻が上がっている原因。それがチャージビームだ。チャージビームは確実ではないものの、攻撃と同時に特攻を上げる追加効果がある。
 ともあれ、何発撃ったかは覚えていないが、今のオクタンの特攻はかなり上がっているだろう。早めに決着をつけた方がよさそうだ。
 そうイリスが思っていると、動き出したのはシズイとオクタンだった。
「そろそろ決めったい! ぶち撒けぃ、オクタン砲じゃ!」
 オクタンは大きく息を吸うと、口から今まで以上の隅を噴射した。しかしデンチュラには墨はかからず、全てフィールドの撒き散らされた。よって水面は真っ黒に染まっている。
「……? 何をする気だ……?」
 オクタンの謎の奇行に警戒していると、オクタンは次なる行動に入る。それは、イリスが予想だにしない事だった。
「オクタン、火炎放射!」
 オクタンは口から燃え盛る火を吹いた。
 墨はともかく、電撃や酸など色々出すものだと思っていたが、まさか火まで吹くとは思わなかった。
 炎技はデンチュラには効果抜群。とりあえず他の足場に移させようと指示を出そうとするが、炎はデンチュラに向けては放たれておらず、その必要はなかった。いや、できなかった。

 なぜなら、突如として水面が炎上したからだ。

「え……?」
 流石に唖然とするイリス。いくら火炎放射を放ったからといって、水が燃えるわけがない。すぐに消えるのが関の山だ。が、炎はめらめらと燃え盛っており、包囲するように壁を作ってデンチュラの移動を阻害している。
「……そうか! オクタン砲!」
「そうじゃ。よー気付いたの」
 イリスの発見に、シズイは軽く称える。
「おいのオクタンの墨は、よか燃える成分を含んでるったい。水面にぶち撒けて、火ば放っとったら炎の壁ば出来上がる。そいじゃあ次行こーか、オクタン。火炎放射!」
 オクタンは続けて炎を放ち、身動きのとれないデンチュラに直撃させる。
 アシッドボムで特防を下げられ、チャージビームで特攻が上がっていたこともあり、デンチュラはその一撃で戦闘不能となった。
「くっ……戻れ、デンチュラ」
 イリスは倒れたデンチュラをボールに戻す。
 デンチュラがやられたのはかなり痛手だ。早速二体の電気タイプのポケモンがいなくなり、水タイプの弱点が突きにくくなった。まだ草タイプのリーテイルはいるが、水タイプは草対策として氷技を覚えていることが多い。飛行と複合しているリーテイルでは、氷技は一撃で致命傷になるだろう。ゆえにリーテイルは出しづらい。
 加えてオクタンはアシッドボムに火炎放射を持ち、特攻も上がっている。リーテイルを出すのはあまり得策とは言えないが、
「次はお前だ! 出て来い、リーテイル!」
 イリスの三番手はリーテイルだ。
 その相性の悪いチョイスにシズイは少し驚いた顔をする。
「おお? ここで草タイプで来よったか。さっきの炎の壁を見てその選択。面白くなってきよった!」
 笑みを浮かべるシズイとは対照的に、イリスの目は真剣そのものだ。厳しいとも言える。
(特攻の上がったオクタンは脅威。炎の壁は厄介だけど、リーテイルなら突破できるはず。速攻で決める)
 ひとまず、特攻の高いオクタンがこのまま居座って暴れ続けることだけは避けたいので、是が非でもここは取っておきたい。
「リーテイル、エアスラッシュ!」
 リーテイルはまず、空気の刃を無数に飛ばしてオクタンを切り刻んだ。しかしオクタンは全く動じず、
「オクタン砲ったい!」
 さっきよりもさらに多量の墨を噴射して辺り一面を墨の黒で染め上げる。そして、
「火炎放射!」
 口から燃え盛る火炎を放射。辺り一面を火の海に変え、炎の壁を作り出す。しかも今度はオクタンを囲うように放たれたため、近づくことができない。
「どうじゃ! これでオクタンには攻撃できん! さあどうする!?」
 イリスを試すかのようなシズイの発言。イリスはこの時には既に、炎の壁を突破する方法を考えていた。
「リーテイル、リーフブレード!」
 リーテイルは尻尾の葉っぱを構え、炎の壁に守られたオクタンに向かって一直線に突き進む。このままいけば、炎に直撃することは間違いない。
「なにを考えておるのかは知らなかどん、おいとおいのオクタンは真正面から迎え撃つだけじゃい! オクタン、火炎放射!」
 オクタンは炎の壁に囲まれながら、さらに炎を発射してリーテイルの接近を許そうとしないが、その時、リーテイルにも動きが見られた。
「ドラゴンビート、最大出力!」
 オクタンとの距離がかなり近づくと、リーテイルは大きく息を吸い、龍の鼓動のような咆哮を放つ。咆哮は音波となり、オクタンの火炎放射だけでなく、オクタンを守っていた炎の壁すらも吹き飛ばし、オクタンの動きを止めた。
「今だ! リーフブレード!」
 そしてその隙を狙ってオクタンに接近し、尻尾の葉っぱでオクタンを切り裂いた。
 効果抜群に加え、急所を切り裂かれたらしいオクタンはぐったりとその場に倒れ込み、戦闘不能となった。
「オクタンもやられてちょっしもたか。戻っとき」
 ポリポリと頭を掻きながら、シズイはオクタンをボールに戻し、網の中へと放り込む。
「リーテイル、お前も一旦戻れ」
 イリスもリーテイルをボールに戻した。リーテイルは唯一イリスに残っている水タイプの弱点を突けるポケモン。ここぞという時のために温存しておきたい。もし次のポケモンが強敵でも、その時はまた交代させればいいだけだ。
「よし、じゃあ頼んだよ、ディザソル!」
 交代で繰り出すのはディザソルだ。オクタンとのバトルではあまりダメージを受けていないので、まだまだ戦える。
 さて、イリスはシズイの次のポケモンはなにかと身構えているが、シズイは依然として網から次のボールを手に取らない。
「……ポケモン、出さないんですか?」
「ちっと待っとき。もうすぐじゃ」
 シズイはゆっくりと目を閉じ、腕組みをしてじっと動かない。やがてカッと目を見開くと、水面が揺れた。
「来よった」
 刹那、水面が押し上げられ、水中から巨大な生物が浮上する。
 水色の巨体を持つ鯨のようなポケモン。浮き鯨ポケモンのホエルオー。ここセイガイハジムまでイリスとシズイを乗せていた、あのホエルオーだ。どうやら海中を通ってジムの内部まで入り込んだらしい。
「おいの次のポケモンは、このホエルオーったい!」
 シズイはこのホエルオーは普通のホエルオーよりも小柄だと言ったが、それでもこうして相対してみると、かなりの威圧感がある。
「ここで来るか……でも、大丈夫だ。ディザソルはモスギスさんのティラノスを撃ち破っている。あれに比べれば、ホエルオーなんて大人しいものだ」
 大きさはティラノスの方が劣っているが、あちらはかなり攻撃的な性格で、動きも素早かった。しかしこのホエルオーは見るからに鈍重。広い水中のフィールドでも、ホエルオーが自由自在に泳ぎ回れるほどのスペースはないはず。
 そんな風にイリスとディザソルが構えていると、不意に光が差し込んだ。思わず顔を上げると、天井が開き、ジムが吹き抜け構造になった。
「悪いな。こせんとおいのホエルオーはまともに戦えん。そいぎ、こうした方が太陽の光に照らされて気持ちええ。そうじゃろ?」
「え? えっと、そう、ですね……」
 インドアの気があるイリスとしては、若干頷きにくかった。
 ともあれ、ホエルオーとディザソルのバトルが始まった。
「行くよディザソル! 辻斬りだ!」
 ディザソルは漆黒の鎌を構えてホエルオーへと駆けだす。しかし、

「ホエルオー! 滝登り!」

 突如、ホエルオーが消えた。いや、正確には消えたのではなく、跳び上がったのだ。どういうわけなのか、ホエルオーは水を纏ってジャンプし、空高く跳び上がった。天井を開いたのはこのためだったようだ。
 ここで重要なのは、ホエルオーが跳び上がったということだ。あの巨体が、空高く、跳び上がった。それがなにを意味するのか、理解するのに時間はかからなかった。
「ほな行こーかい! どんと一発かますんじゃ、ホエルオー!」



シズイ戦その三です。なんだか最近、上手く書けなくなっているような気がしますが、それはさておき。オクタンは墨を撒いて火炎放射を撃って辺りを文字通りの火の海にする戦法を取り、デンチュラを下しますが、次のリーテイルに突破されて戦闘不能。シズイの三番手はあのホエルオーです。あの巨体が空高く跳び上がれば……どうなるかはもうお分かりでしょう。次回はその辺を書いていきます。では次回をお楽しみに。