二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 465章 大波 ( No.671 )
- 日時: 2013/02/11 18:21
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「気張ってけー、ブルンゲル!」
シズイの最後のポケモンは浮遊ポケモンのブルンゲル。イリスをホエルオーに乗せた個体とは違い、体色は青い。オスなのだろう。
「ブルンゲルは耐久力に優れたポケモン。一気に決めるよ、シェルブレード!」
ダイケンキは両脚からアシガタナを抜き、二刀流でブルンゲルに斬りかかる。しかし、ダメージは少ない。
「やっぱ耐久力が高いな、ブルンゲルは……」
ブルンゲルの長所はその粘り強さ。いくら攻撃しても倒れない耐久力だ。
ならば決定打を持たないダイケンキがこれ以上戦う意義は薄い。リーテイルで戦った方が効率的だし、ダイケンキもダメージを受けている。ここは後退させるのが吉だろう。
「ダイケンキ、戻——」
「ブルンゲル、締め付ける!」
ダイケンキを戻そうとしたその時、ブルンゲルは物凄いスピードでダイケンキに接近し、触手を伸ばしてダイケンキを縛り上げた。するとボールから放たれた光は消滅し、ダイケンキはボールに戻らない。
「なっ……!」
「また悪いの。締め付けるは相手の交代を封じる技じゃ。そんでもって、今のブルンゲルはマンタインの置き土産、追い風がある。素早さもわっせ高くなっとる」
しまった、とイリスは内心呟く。
追い風は効果が持続し、発動したポケモンがいなくなってその効果は続く。ブルンゲルに素早いイメージがなかったので、マンタインを倒して追い風は終わりだと勝手に思い込んでしまった。
「くっ、だったらブルンゲルを引き剥がす! ダイケンキ、吹雪だ!」
ダイケンキは強烈な猛吹雪を至近距離からブルンゲルに吹きつけるが、ブルンゲルはまったく動じない。ギリギリとダイケンキを締め付けている。
「ブルンゲルの特防を舐めたらいけなか。ブルンゲル、ギガドレイン!」
ブルンゲルはダイケンキを締め付けたまま、触手を通してダイケンキの体力を奪っていく。ギガドレインは草タイプの技なので、効果抜群だ。
「やばい……引き剥がすんだ、ダイケンキ! メガホーン!」
ダイケンキはもがき、なんとかブルンゲルを突き飛ばそうとするが、密着しているためなかなか角を突き出せない。
「これでとどめじゃ! ハイドロポンプ!」
ダイケンキがじたばたしているうちに体力を根こそぎ吸い取り、ブルンゲルは一旦離れる。そして大量の水を噴射してダイケンキを吹っ飛ばした。
水面に叩き付けられたダイケンキはやがて浮上するが、動く気配はない。戦闘不能になってしまったのだろう。
「……戻れ、ダイケンキ」
イリスはダイケンキをボールに戻す。これで残るはリーテイル一体。
「なんだか今回のバトルは、やたら君を出したり戻したりしちゃったね。でも、これが最後だ。何としてでも勝つよ、リーテイル!」
イリスはリーテイルを繰り出す。今まで受けたダメージは、全快でこそないがそれなりに回復している。
「タイプではこっちの方が有利だ。一気に攻めるよ、リーフブレード!」
リーテイルは高速で飛行し、一直線にブルンゲルの下へ接近。尻尾の葉っぱで切り裂いた。
マンタインは元のスピードが高かったので追い風で抜かれたが、ブルンゲルの素の素早さは大したことはない。ダイケンキよりは速いようだが、追い風のサポートがあってもリーテイルを追い越すことはできないだろう。
「やりおるな。ブルンゲル、シャドーボール!」
「連続でリーフブレード!」
ブルンゲルは影の球を生成し、リーテイルへと発射。だがリーテイルは尻尾を振るってそれを切り裂き、そのまま突っ込んでブルンゲルにも斬撃を決める。
そこで、異変は起きた。
「っ? リーテイル?」
リーテイルは目を見開き、体を小刻みに震わせている。しばらくするとそれは収まり、リーテイルがダメージを受けたようにも見えない。一体何が起こったのかと、イリスが首を傾げていると、シズイの言葉が飛んでくる。
「ブルンゲルの特性、呪われボディじゃ。呪われボディは相手から攻撃を受けると、その技を封じてしまうんじゃ。おはんのリーテイルは、もうリーフブレードは使えん」
「!」
イリスの額に冷や汗が浮かぶ。
リーフブレードはリーテイルの主力技、それもブルンゲルに対して有効打が打てる技だ。ブルンゲルの弱点を突けるだけでなく、特防の高いブルンゲルによく通る物理技。それが封じられたとなれば、かなり戦いにくくなる。
一応リーフストームがあるが、あの技は使用後に特攻が大きく下がる。もしその一撃で決められなければ、火力が落ち、それ以降のバトルはさらに苦しくなるだろう。
「いや……それでも他の技は等倍ダメージだ。まだやれるはず。リーテイル、エアスラッシュ」
リーテイルは背中の葉っぱを羽ばたかせ、無数の空気の刃を飛ばす。
「薙ぎ払え! ハイドロポンプ!」
しかし刃はすべて、ブルンゲルの放ったハイドロポンプに撃ち落とされてしまう。
「シャドーボール連発じゃ!」
そして続けて影の球が無数に放たれる。ただかわすのは難しそうだ。
「リーフブレードで切り裂け!」
そうイリスは指示するが、リーテイルは困ったような顔でその技を使わない、否、使えない。
イリスもすぐにリーフブレードが封印されたことを思い出し、違う指示を出す。
「しまった……かわせるだけかわして、避けきれない分はドラゴンビートで相殺だ!」
やや遅れたがリーテイルは影の球を回避していき、龍の咆哮も駆使してシャドーボールを捌いていく。が、全て避けきることはできず、何発かは喰らってしまった。
「ハイドロポンプ!」
そこにブルンゲルの高圧水流が飛んでくる。シャドーボールを受けてのけぞっているリーテイルに水流が直撃し、押し飛ばして水中へと叩き込んだ。
「やばっ……リーテイル!」
ディザソル以上にリーテイルは水中に慣れていないだろう。早く浮上しなければまずいことになる。
イリスにとってのピンチは、逆にシズイのチャンス。ブルンゲルはリーテイルを追い、水中へと潜っていった。
「リーテイル、早く浮上するんだ!」
「逃がさん! ブルンゲル、締め付ける!」
上手く動けない水中で必死に手足をばたつかせて浮上しようとするリーテイルを、ブルンゲルは触手で絡め取って縛り上げる。締め付けるは威力は低いが継続してダメージがある。その上リーテイルの動きも封じるので、非常に厄介だ。
「ギガドレインじゃ!」
さらにブルンゲルはリーテイルから体力を吸い取りにかかる。威力はⅣ分の一になるのでダメージも回復量も少ないが、水中にリーテイルを引き留めるには十分だ。
酸素が足りなくなってきたのか、リーテイルの顔が苦痛に歪んでいく。
「ドラゴンビート!」
決死の思いでイリスは技を指示。リーテイルは龍の鼓動のような音波をブルンゲルにぶつける。至近距離から直撃させたのでそれなりに効いているはずだが、ブルンゲルはまったく動じず、離れようとしない。
リーテイルはガボッと口から空気を吐き出し、水面には大量の気泡が浮かぶ。そろそろ限界だろう。
「リーテイル、戻ってきてくれ!」
イリスは叫ぶ。その時リーテイルはカッと目を見開く。そして、
尻尾の葉っぱでブルンゲルの触手をすべて切り裂き、締めつけるの束縛から抜け出した。
「リーテイル……!」
かなりダメージは受けたが、リーテイルは無事水中から脱出できた。リーフブレードの封印が解けたのだ。
束縛から抜け出され、ブルンゲルも浮上してくる。
「呪われボディの金縛りが解けてちょっしもたか。しかし……」
シズイは今まで堪えていたのか、嬉々とした笑みを見せた。
「参ったのう、ピンチなのにワクワクしてたまらんわい! ブルンゲル、シャドーボールじゃ!」
ブルンゲルは影の球を蓮発する。しかし、
「リーテイル、リーフブレードだ! すべて切り裂け!」
リーテイルは高速で飛行し、影の球、そしてブルンゲルもすべて切り裂いた。
「これで決める! リーフストーム!」
「その勝負、受けて立つ! ハイドロポンプ!」
リーテイルは数多の葉っぱを含む嵐を放ち、ブルンゲルは大量の水流を発射。互いの大技が激突する。
だが勝負はすぐに着いた。深緑で強化された嵐が水流と、ブルンゲルを飲み込み無数の葉っぱで切り刻む。
そして、ブルンゲルは海中へと沈んでいった。
「おはん、強そーじゃなくわっせ強いんじゃな! おいもたまげたよ! 流石はイーちゃんの息子じゃ!」
「はあ……」
バトルが終わるなり、シズイは満面の笑みでそんな事を言ってきた。あまりにハイだったのでイリスは曖昧に返す。
「こんなにワクワクするバトルは久しぶりじゃった。これはおいの感謝の気持ちたい」
そして、何かをイリスに手渡す。金の縁取りと三本背が入っており、水色と青色のグラデーションになっている雫のような形のバッジだ。
「最近できたイッシュの新しいバッジ、ウェーブバッジじゃ」
「……はい。ありがとうございます!」
かくして、イリスはシズイに勝利した。そして、十個目のバッジを手に入れたのであった。
シズイ戦その七ですが、ブルンゲルやられるの早っ! アニメでも瞬殺されていましたが、マンタインは二章使ってるのにブルンゲルは一章でやられるとか、どっちがエースなのか分かりませんね。これでイリスは十個目のバッジゲット。次回はあの人登場です。お楽しみに。