二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 466章 山路 ( No.672 )
日時: 2013/02/11 19:32
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 ヤマジタウン。
 砂嵐が吹き荒れ、近くに火山もあるため乾燥した猛暑に襲われる悪天候の町。陶器が有名で、イリスの家にもヤマジタウンで作られたたくさんの陶器が置いてある。
「ここか……」
 イリスは滑走路を踏みしめる。
 ヤマジは交通の便がかなり悪いため、サザナミタウンから火山を上るか、フキヨセから飛行機に乗るしかない。今は時間が惜しいため、イリスは飛行機を利用した。
「シズイさんの言うことが本当なら、ここにいるはずだけど……」
 砂嵐に目を細めつつ、イリスはシズイの言葉を回想する——



「あの、シズイさん?」
「ん? なんじゃ?」
 ジム戦後、イリスはイリゼの知り合いだというシズイの話を聞いてみることにした。そもそもセイガイハシティに来たのも、イリゼの手掛かりを探すためなのだ。シズイとバトルすることは想定外だったが、イリゼの親友だという彼なら、イリゼが今どこにいるのか知っているかもしれない。
「シズイさんは、僕の父さんが今どこにいるか、知っていますか?」
 とはいえ、あのイリゼのことだ。行方をくらますことに長けたような人物だ。期待はできるが、高望みはできない。宝くじを買うような気分で聞いたに過ぎない。
「知っちょるよ?」
「そうですか、やっぱり……って、知ってるんですか!?」
 思わずノリツッコミをしてしまうイリス。まさか本当に知っているとは驚きだ。
「おう。そもそもイーちゃんは自分の居場所をおはんに伝えるために、おいをおはんとバトルさせたんじゃ。もしおはんがおいに勝つことができれば、自分の居場所を教えろってな」
「はあ……」
 ますますイリゼの考えが分からない。そんなまどろっこしいことをするくらいなら、最初から連絡に応じればいいものを。
 まあしかし、イリゼの考えなんてイリスには分からない。気にしても仕方ないことだろう。それより今はイリゼの所在だ。
「で、父さんは、どこに?」
「ヤマジタウンじゃ。サザナミタウンからリバースマウンテンを抜けたところにある小さな町じゃ。海がないんで、おいはあんま好かんがな」
 ヤマジタウン。そこに、イリゼはいる。
 となれば善は急げだ。イリスはすぐにセイガイハシティを後にする。
「ありがとうございます。すぐに向かってみます。では」
「おう、そうじゃ。いっと待て」
 イリスが立ち去ろうとすると、シズイが引き留めてきた。
「おいからのアドバイスじゃ。イーちゃんは強い。その強さは、イーちゃんの信念の強さにある。イーちゃんに勝つには、強か信念が必要じゃ。だからおはんも信念を持てよ。そんでもって、自分の信念を、最後まで貫き通せよ」
「……はい」
 言われるまでもないことだ。強い意志を持つこと。それはトレーナーとして強くなるための必須条件。その自覚なら、とうにしている。
 そして今度こそ、イリスはセイガイハシティを後にする。目指すはヤマジタウンだ。



 そして現在。イリスはイリゼ探索のためにヤマジタウンを歩き回る、が、イリゼは見つからない。
「うーん、小さな町だからすぐ見つかると思ったんだけど、いないな……砂嵐が吹いてるから、室内にいるのかな?」
 だが人の家を一軒ずつ回るというのも気が進まない。どうしたものかと頭を悩ませていると、不意に声がかかった。
「やあ、お困りのようだね、少年」
「っ! ロキさん!」
 振り返ると、そこにはミキ、ザキの父、ロキがいた。
「ロキさん、なんでここに……?」
「ちょっと里帰りをね。それと、愚息たちの面倒を」
「へ?」
「いやなに、こっちの話さ。それより、誰か探しているようだったけど」
 言われてイリスは思い出す。ロキはイリゼの親友だと。望みは薄いが、イリゼの所在を尋ねてみると、
「うーん、そうだねえ。馬鹿と煙は高いところが好きっていうだろう。それと同じさ。彼は色々な方面に天賦の才を持っているけど、はっきり言って馬鹿だ。少なくとも僕から見ればね。高い所を探せば見つかると思うよ」
「は?」
 適当過ぎる助言だった。やはりの期待するだけ無駄だったようだ。
「それじゃあ僕はこの辺で。まだやることがあるからね。ばいばい」
 そしてロキはどこかに去って行ってしまう。
「馬鹿と煙は高いところが好きって、そんな適当な……」
 そこでふとイリスの目に留まったのは、町の高台——と言うほど立派なものではないが、少し高くなっている場所だ。
「あそこはまだ探してないな……まあダメ元で行ってみようか」
 そして、イリスは高台へと歩を進めるのだった。



 いた。
 高台にある大きな岩の上に、イリゼは寝そべっていた。
「まさか本当にいるとは……」
 驚きより、感動より、なにより呆れた。まさかロキの言うように、本当に馬鹿なのだろうか。
「んー? お、イリスか」
 イリゼは起き上がり、イリスの存在に気付いた。そして岩から飛び降りると、こちらに歩み寄って来る。そして、
「……チッ」
 舌打ちした。
「お前、本当にホミカとシズイに勝ったのか? 違う方法で俺の場所見つけ出したとかじゃねぇのか?」
「なっ……そんなわけないだろ! ちゃんと勝ったよ、ホミカさんにもシズイさんにも! ほら、これがその証拠だ!」
 イリスはホミカから受け取ったトキシックバッジ、シズイから授かったウェーブバッジをそれぞれイリゼに見せつける。
 するとイリゼは、ますます不機嫌そうな顔をした。
「あの二人を倒して、まだそれかよ……ったく、お前は本当にしょうがねぇ奴だな。出直してこい」
「はぁ!? なんだよそれ! 再戦するって約束しただろ! どれだけすっぽかすつもりだよ!」
「うるせぇ。お前はなんも分かっちゃいねぇんだよ。いいか、今のお前の考えじゃあ、どうしたって俺には勝てない。だったらやるだけ無駄だ」
「そんなのやってみないと分かんないだろ!」
 さながら親子喧嘩のようになってきた二人の言い合いは、イリゼが打ち切った。
「だあ! わーったよ! そんじゃあとりあえずバトルしてやる! お前がここまで頑固だとは思わなかったぜ……俺が直々に、教えてやるよ。お前に足りないものをな」
「僕に、足りないもの……?」
 イリスは首を傾げるが、とりあえずイリゼとのバトルを取り付けることが出来た。
「バトルの方式は六対六。入れ替えありだ。そんじゃあちゃっちゃと始めっぞ」



 なにはともあれ、イリスとイリゼのバトルが始まった。遂に、始まったのだ。
「まずは俺からだ。出て来い、アズマオウ!」
 イリゼの一番手はアズマオウ。水がないので、陸上でピチピチと飛び跳ねている。
「陸上で水棲のポケモンなんて……父さん、僕を舐めてるの?」
「ああ、すげぇ甘く見てるぜ。だがな、宣言するぜ。俺のアズマオウはお前の初手には絶対に負けない」
 いきなりの勝利宣告。それもイリスがポケモンを見せていない状態でだ。
「……いいよ。その勝利宣告、すぐに撤回させてやる。頼んだよ、デンリュウ!」
 イリスが繰り出すのはデンリュウ。水タイプが相手だと氷タイプの技が来る恐れもあるので、リーテイルではなくデンリュウだ。
「やっぱそう来るか、予想通りだ。……アズマオウ、高速移動!」
 最初に動いたのはアズマオウだ。アズマオウは陸を高速で飛び跳ね、素早さを一気に高める。
「手数で攻める作戦か……? なら一気に決める! デンリュウ、雷!」
 デンリュウは空に向かって電撃を飛ばし、超高圧の稲妻をアズマオウへと落とす——

 ——が、稲妻はアズマオウの角に吸い寄せられ、無力化されてしまった。

「え……?」
 予想だにしない光景に、イリスは呆然とする。その隙に、アズマオウが動き出す。
「アズマオウ、ドリルライナー!」
 アズマオウは角を高速で回転させてデンリュウに接近し、突き飛ばす。
「デンリュウ!」
 地面タイプの技はデンリュウには効果抜群。直撃したので、かなり大きなダメージを受けただろう。
「考えてる暇なんてやらねぇぞ! アズマオウ、高速移動からドリルライナー!」
 アズマオウは陸上を飛び跳ねて高速移動、そしてドリルのように回転させた角をデンリュウに突き込んだ。
「ぐっ、引き剥がせ! デンリュウ、アイアンテール!」
「アクアテール!」
 デンリュウは鋼鉄のように硬化させた尻尾を振るうが、アズマオウも水を纏った尻尾を振るってデンリュウの尻尾を弾いてしまう。
「吹雪!」
 そして至近距離から猛吹雪を放つ。その威力は、普通の吹雪よりも大きく見えた。
「炎のパンチ!」
「させねぇよ! ドリルライナー!」
 デンリュウが拳に炎を灯した瞬間、アズマオウの角がデンリュウに突き込まれる。
 その一撃で、デンリュウは戦闘不能になってしまった。
「なっ……デンリュウ!」
 いくらなんでも早すぎる。まるで、デンリュウを相手取ることを想定していたかのような動きだった。
 ともかく、イリスはデンリュウをボールに戻す。そして、次のボールを構える。
 その先には、憮然と、そして超然と立ちふさがる、イリゼの姿があった——



遂にやってきました、イリゼ戦。にしてもアズマオウ強いですね。いや、それにはちょっと事情があるのですが、それはさておき。今日はいままでにないくらい更新してますが、もう少し更新できそうです。では、次回もお楽しみに。