二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 469章 甘え ( No.679 )
日時: 2013/02/11 23:44
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 イリゼはイリスのすべてのポケモンに対して対策を施している。となれば、リーテイル相手に繰り出してきたゼブライガもリーテイルの攻撃を無力化するなにかを持っていると考えるのが自然だ。
 無闇に突っ込んだりはせず、イリスはまず、図鑑でゼブライガについて調べてみる。
「特性、電気エンジン、避雷針、そして草食か……」
 草食ならアデクとのバトルで嫌というほど思い知らされている。草タイプの技を無効化し、攻撃力まで高める特性だ。
 となると、ダイケンキ同様、リーテイルの技の半分が封じられたことになる。エアスラッシュも半減なので、まともに通るのはドラゴンビートのみ。
「馬鹿でも少しは脳みそがあるみてぇだな。だが、ゼブライガの特性を知った程度じゃあどうしたって勝てねぇよ。ゼブライガ、ギガスパーク!」
 ゼブライガは巨大な電気の塊を生成し、さながら砲弾の如くリーテイルへと発射した。
「かわしてドラゴンビート!」
 直線的なので、リーテイルは難なくギガスパークを回避すると、龍の鼓動のような音波を発射する。
「守る!」
 が、音波はゼブライガの張った結界によって防御されてしまった。
「ギガスパークだ!」
「かわしてドラゴビート!」
 ゼブライガは再び電撃の砲弾を発射。しかしリーテイルには当たらず、リーテイルはゼブライガの側面から龍の咆哮を放つ。
「かわせゼブライガ!」
 だが咆哮はゼブライガを捉えられず、跳躍でかわされる。そしてゼブライガはリーテイルへと接近し、
「電磁波!」
 電磁波を発してリーテイルの体を麻痺させる。これでリーテイルのゼブライガと張り合える唯一の長所、スピードが失われてしまった。
「しまった……!」
「ぼさっとすんな! ギガスパーク!」
 麻痺状態で体が痺れたリーテイルを、ゼブライガは電撃の砲弾で吹き飛ばす。
「くっ、エアスラッシュ!」
 吹っ飛びながら空気の刃を無数に飛ばし、ゼブライガを切り刻む。しかしゼブライガには効果がいまひとつで、ダメージはあまり通っていない。
「ドラゴンビート!」
「守るだ!」
 続けて龍の咆哮も放つが、今度は守るで防がれる。
「全然攻撃が通らない……!」
 特性が草食なら、リーフブレードやリーフストームは使うだけ無意味。ゼブライガを強くするだけだ。しかしドラゴンビートは守るで防御され、エアスラッシュはほとんどダメージがない。トリトドンのように体力が回復されるわけではないが、攻撃がまったくと言って良いほど通らないため、このままではジリ貧だ。
「ゼブライガ、ギガスパーク!」
「! かわせ、リーテイル!」
 ゼブライガから巨大な電撃の砲弾が飛来する。リーテイルは急いでかわそうとするが、体が痺れて動けず、砲弾の直撃を受けてしまう。
「リーテイル!」
 加えて、ゼブライガは素の攻撃力が高い。リーテイルはダイケンキ程耐久力が高くないので、そろそろ体力も限界を迎えてきた頃だろう。
(いつもならここで特性深緑が発動して逆転を狙えるのに……草食のゼブライガ相手じゃそれもできない。どうすれば……)
 ダイケンキの時も思ったのだが、こういう時、エースポケモンの必殺級の一撃が使えないというのはかなりの痛手だ。
「お前、いつもなら深緑が発動して逆転するのに、とか思ってんじゃねぇのか?」
「っ!」
 唐突に、イリゼはそんなことを言い出した。その言葉にイリスは激しく動揺してしまう。
「やっぱな。そこがお前の弱さ、弱点だ」
「僕の、弱点……?」
「そうだ。今までは特になんともなかったんだろうがな、この先、その弱点を抱えたままだといずれ破滅するぞ。実際、俺がこうしているようにな」
 ゼブライガを一瞥し、イリゼは続ける。
「お前はエースに頼り過ぎだ。最初のポケモン、思い入れの強いポケモン。いいじゃねぇの、俺にもそういうポケモンはいる。初めてのポケモンに思うところがあるのは分かる。が、それをバトルに反映させるのは愚の骨頂だと俺は思う。思い出せ! アデクとのバトルはどうだったのかを!」
 アデクとのバトル。リーテイルは圧倒的に相性が悪く、ダイケンキは一時だがパワーで押し負けた。
「思い出せ! ホミカとのバトルはどうだったのかを!」
 ホミカとのバトル。リーテイルは毒タイプの技でやられ、ダイケンキは猛毒とダストダスの機転で苦しめられた。
「思い出せ! シズイとのバトルはどうだったのかを!」
 シズイとのバトル。ダイケンキは技が通じず、リーテイルは主力な技を封じられた。
「お前はここ一番でエースに頼り過ぎるきらいがある。いつもはそれで押し切って勝ってたのかもしれねぇ。でもな、俺にはそんなもんは効かねぇぞ! 一番強い奴に依存してんじゃねぇ!」
 イリゼの怒気を含む叫びと共に、ゼブライガは大きくいなないた。
「ゼブライガ、あの野郎の甘ったれた考えごと燃やし尽くせ! オーバーヒート!」
 ゼブライガは強力な電撃に身を包み、スパークする。すると体中から激しい火花が散り、だんだんと大きくなっていき、やがて膨大な炎となる。
 そしてその炎は、リーテイルを燃やし尽くした。



「出直してこい。まずはその甘ったれた考えを捨てろ。エースに依存し過ぎるな。そんでもって今のお前の実力は俺に劣る。もっと鍛えてきやがれ」
 そんなことを言われて、イリスはヤマジタウンから追い出されるように去っていった。行き先はヒオウギシティ。特に意味はなかった。ただ、イリゼから少しでも離れたところに行きたかっただけだ。
「はぁ……」
 イリゼにかなり厳しく言われてしまった。それも、今の自分のあり方を否定するようなことを。
「甘えた考え、か……」
 確かにイリスは、今までここ一番という重要な場面では、必ずと言って良いほどダイケンキやリーテイルを投入してきた。いつもそれで勝利を収めていたし、それが悪いことなんて思ったことは微塵もない。イリゼも別に、その考えそのものを否定したのではない。イリスがその考えを持つことを否定したのだ。
 その考えを持ったままでいれば、いずれ破滅する。イリゼはそう言っていたが、感覚的にはもうイリゼに一回破滅させられている。
「ダイケンキ、リーテイル……君たちは僕のこと、どう思っているのかな」
 イリスは自身のエースとして、信頼してきた。信じられるという点では、イリゼや他の仲間たちよりもずっと信用できる。しかし、ダイケンキたちがどう思っているのかは分からない。悪くは思っていないのかもしれないが、少なくともリーテイルはイリゼの言葉を聞いている。どう思っていても不思議ではない。
「こんな時、Nがいればな……」
 もしくは、自分にポケモンと意思疎通をする力があれば、とできもしないことを望むイリス。それほど彼の心は揺れているのだ。
「エースに頼る考えを捨てる。そして、今よりも強くなる、か。そんなの、どうすればいいっていうんだよ……」
 思わず顔を覆うイリス。その時、腕から聞きなれた電子音が鳴った。
「……誰だろう、こんな時に」
 イリスは腕を持ち上げ、ライブキャスターの回線を開く。するとそこには、意外な顔が映っていた。



 心の空洞、と呼ばれているらしい。
 二十番道路を南下した場所に存在する小さな洞穴。この洞穴の奥は、シンオウ地方に繋がっていると言われている。
 イリスはたったいま、そこに足を踏み入れた。目的の人物と出会うために。
「……こんなところに呼び出して、なんの用ですか。シロナさん」
 水が溜まっている洞穴の中央には、煌めく金髪のロングヘアーに、黒いコートを身に纏った一人の女性。
 シンオウ地方チャンピオン、シロナだ。
「まだシンオウ地方に帰っていなかったんですね」
「最初の言葉がそれなんて、やっぱり親子ね」
 シロナは振り返り、軽く微笑む。
「……あなたも、父さんの知り合いですか」
「ええ。シンオウにいた頃、少しお世話になったわ」
 イリゼの交流が広いことはもう今更だ。トリトドンを繰り出した時にも、シンオウがどうこうと言っていたので、シロナと知り合いでも不思議はない。
「それよりなんの用ですか。僕も、あまり暇ではありません」
「イリゼさんに負けたんでしょう?」
 イリスの問いには答えず、シロナはそう切り出してくる。
「イリゼさんに勝つため、あなたはもっと強くならなければいけない。そうでしょう?」
「そう、ですが……」
「なら、やることは一つしかない。そうよね」
 この流れは、今まで何度もあった流れだ。となると、
「イリス君。私は、あなたに六対六のフルバトルを申し込みます」

 ……かくして、シロナの意図は読めないが、イリスはシンオウチャンピオン、シロナとバトルをすることとなった。



イリゼ戦決着。結果はイリスのボロ負けです。そしてイリゼが伝えたかったメッセージは、エースに頼り過ぎるなということです。イリゼの対策も、イリスのエースがより強い対策を施していましたしね。そしてイリゼに出直してこいと言われたイリスと、シロナのバトルです。まあこの辺は今まで通りのパターンです。遂にチャンピオン戦がやって来ました。では、次回はシロナ戦、お楽しみに。