二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 470章 イリスvsシロナ ( No.680 )
日時: 2013/02/12 22:22
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 イリスとシロナのバトル。チャンピオンとのバトルは貴重なので断る理由はないが、それでも相手の意図が読めないのは些か不安だ。
「じゃあ、私からポケモンを出させてもらうわね」
 シロナはサッとボールを一つ取出し、空中へと放り投げる。
「暗闇に鎮め、ミカルゲ!」
 シロナの一番手は封印ポケモン、ミカルゲ。ひび割れた石から悪霊のような霊体が飛び出しており、いかにも邪悪そうな顔をしている。
「ミカルゲはゴーストと悪タイプ、弱点はなし、か……」
 となると純粋に火力の高いポケモンを使うのがよさそうだとイリスは判断し、ポケモンを繰り出す。
「出て来い、デンリュウ!」
 イリスの一番手はデンリュウだ。他の技はともかく、雷の貫通力は一級品である。
「行くよデンリュウ! 雷!」
 デンリュウは電撃を打ち上げ、激しく轟く稲妻をミカルゲへと落とすが、
「ミカルゲ、影分身」
 ミカルゲはいくつもの分身を作り出して雷を回避した。
「バークアウト」
 そしてすぐさまけたたましい叫び声をあげ、デンリュウを攻撃。しかしダメージは小さい。
「デンリュウ、シグナルビームだ!」
「かわしなさい」
 デンリュウは反撃にカラフルな光線を発射するが、影分身を展開しているミカルゲには当たらない。
「バークアウトよ」
 そしてすぐさま叫び声が放たれ、デンリュウを攻撃。微々たるダメージだが、バークアウトは攻撃と同時に相手の特攻を下げる技。こちらを弱体化させてから攻めるつもりなのだろうか。
「だったら物理技で攻める! アイアンテール!」
「影分身」
 鋼鉄のように硬化させた尻尾を振るうデンリュウだが、ミカルゲには当たらない。また影分身で透かされてしまった。
「続いて黒い眼差しよ」
 その後ミカルゲは瞳を真っ黒に染め、デンリュウを見つめる。
 黒い眼差しとは、イリゼのトリトドンが使用したとおせんぼうと同じ、交代を封じる技だ。
(交代封じ……嫌な予感がするな)
 イリスがミカルゲの行動を警戒しているとミカルゲは、
「バークアウト」
 まくしたてるような叫び声でデンリュウを攻撃する。が、やはり決定打には乏しい。どうもこのバークアウトは、攻撃のためではないようだ。
「……炎のパンチ!」
 デンリュウは拳に炎を纏わせ、ミカルゲに殴り掛かった。今度は分身ではなく、本物のミカルゲの顔面を捉えた。しかし、

「ミカルゲ、恨み」

 ミカルゲは恐ろしい形相でデンリュウを睨み付け、黒い瘴気を発する。デンリュウは黒い瘴気を浴びてしまうが、ダメージはなく、状態異状にかかったようにも見えない。
「今のは……?」
 イリスが今までに見たことのない技だった。攻撃でも状態異状でもない。能力が下げられたようにも見えないし、逆にミカルゲがパワーアップしたり補助を受けたわけでもなさそうだ。となると、一体なんなのか。
 そんなイリスの疑問は、シロナが解消した。
「恨みはね、相手が出した最後の技のパワーポイントを減らす技なの。知ってるかな?」
「パワーポイント……」
 イリスはあまり気にしたことはなかったが、一応知っている。
 パワーポイントは、ポケモンが技を繰り出すために必要な力だ。訓練することである程度伸ばせるが、このパワーポイントがなければポケモンは技を出すことができず、すべての技のパワーポイントが零になると悪足掻きという凄まじい反動を受ける技となり、自滅する。
「そして、恨みは相手の技のパワーポイントを減らす。え? ってことは……」
 このままデンリュウが技を使い続ければ、やがてパワーポイントは尽き、悪足掻きしか使えなくなってしまう。
「加えてミカルゲの特性はプレッシャー。パワーポイントの減りが普通より早くなるわ。そして、ミカルゲ、影分身」
 ミカルゲは自身の分身を作り出し、デンリュウを惑わせる。
「こうして攻撃を当たらなくすれば、デンリュウも必然的に多く技を繰り出すことになるわよね。黒い眼差しで逃げることもできないから、あなたのデンリュウはここでお終いよ」
「そ、そんな……」
 イリスは今まで、こんな戦い方をするトレーナーと戦ったことがない。パワーポイントを削りに来るなんて、初めてみるバトルスタイルだ。
「一体、どうすれば……」
 影分身により増えた大量のミカルゲに囲まれながら、イリスは頭を抱える。
 どうすれば、このミカルゲを突破できるのだろうか——



「ここか」
 場所は変わってヤマジタウン——の先、リバースマウンテンの外周のずっと先にある、古びた家。人々はその家をストレンジャーハウスと呼んでいる。
 そのストレンジャーハウスの扉の前に、二つの人影があった。
 一人は小柄な少女。ピンク色の髪を低い位置で二つに結っており、幼げで可憐な雰囲気がある。
 もう一人は鋭い眼付の青年。真っ赤な髪はぼさぼさで、厳しい表情からは粗雑で乱暴な雰囲気がにじみ出ている。
 言うまでもなく、PDOセッカ支部統括補佐、及び統括代理、ザキとミキだ。
「ここに、お父さんがいるの……?」
「そのはずだがな。あいつの親父からの情報なんで、いまいち確証はねぇが」
「師匠のお父さん……なんかピリピリしてたね。師匠は大丈夫かな……」
「さあな。だが、あいつなら大抵のことは自分でなんとかするだろ。それより、俺たちは俺たちの問題を片付けなきゃならねぇ。そうだろ」
「うん……」
「そんじゃあ、入るぞ」
 ザキは雨風が一応防げる程度の、かなり老化した扉を押し開ける。
 家の中は意外と老朽化していなかった。所々痛んでいるが、家具もまだ使えそうで、その気になれば住めそうだ。
 とはいえ、この家はいわくつきの家なので、好んで住む者はいないだろうが。
「な、なんか不気味だね……」
「そういう場所らしいからな」
「い、今、あそこのテーブル、動かなかった……?」
「気のせいだ」
 ビクビクと怯えながら進むミキに対し、ザキはスタスタと歩いていく。
「そんなことより、さっさと親父を探すぞ。この家のどっかにいるはずなんだ」
「う、うん……」
 そして、ミキとザキは、ストレンジャーハウスの奥へと入っていった。



「デンリュウ、シグナルビーム!」
「ミカルゲ、影分身」
 デンリュウはカラフルな光線を発射するが、ミカルゲの影分身でかわされてしまう。
 かれこれどれだけ技を指示したことか。たぶんいまだかつてないくらい技を使用した……と思う。
 今の一発で、シグナルビームのパワーポイントは尽きた。真っ先の尽きたのはアイアンテール。雷もあと一発か二発で終わりだろう。
「パワーポイント削りか……これは、厄介すぎるな……」
 普通の耐久型と違ってこちらが倒れるのを待つのではなく、戦えなくなるまで削っていくというのが非常にタチが悪い。一応、技を繰り出す中で何発かはミカルゲにもヒットしたが、ミカルゲは防御や特防が高いようで、いまいち決定打にはならない。
「デンリュウ、雷だ!」
 デンリュウは超高圧の稲妻をミカルゲに落とす。すると今回の雷は、奇跡的に命中した。しかしバークアウトで根こそぎ特攻をさげられているため、威力はかなり控えめになってしまっている。
「みかるげ、恨み」
 しかも、ミカルゲは恨みでデンリュウのパワーポイントを削ってくる。恐らく、今の恨みで雷のパワーポイントは零になっただろう。
「くっ、残るは炎のパンチだけか……」
 それでも恨みですぐに削られてしまうので、温存する意味もないだろう。バークアウトは少量とはいえダメージもある。それに、デンリュウのパワーポイントが尽きれば、悪足掻きで自滅するのだ。
「炎のパンチ!」
「影分身よ」
 デンリュウは拳に炎を灯して殴り掛かるが、ミカルゲを捉えることはない。
「恨み」
 そして黒い瘴気を発し、炎のパンチのパワーポイントを削る。あと一回でも恨みを使われれば、なくなってしまいそうだ。
「でも……やるしかない! デンリュウ、炎のパンチだ!」
 デンリュウは再び拳に炎を灯し、ミカルゲに特攻をかける。
「それしか手がないのは分かるけど、無駄よ。ミカルゲ、影分身」
 ミカルゲも影分身を作り出して炎のパンチを透かそうとする。しかし、
「っ! ミカルゲ!」
 炎のパンチは奇跡的にミカルゲを捉えた。それも、急所を突く形で。
 思わぬ大ダメージにミカルゲは吹っ飛ぶが、まだ戦闘不能ではない。辛うじて瀕死を免れている。
「ここで急所を突くとは、偶然でも、やるわね。でもこれで終わりよ。ミカルゲ、恨み!」
 ミカルゲは黒い瘴気をデンリュウに浴びせ、パワーポイントを削る。これで、デンリュウはもう技を使えないだろう。
「あとは少しずつ削るだけ。ミカルゲ、バークアウト!」
「せめて一矢報いる! デンリュウ、悪足掻き!」
 デンリュウはミカルゲの叫び声を聞きながら、悪足掻きとして、渾身の一撃をミカルゲに叩き込んだ。
「デンリュウ!」
「ミカルゲ!」
 デンリュウは悪足掻きの反動でその場に倒れ込み、ミカルゲも悪足掻きを受けて戦闘不能。
 デンリュウとミカルゲのバトルは、両者戦闘不能で終了した。



シロナ戦その一です。初手のミカルゲは小説でまさかのPP削り戦法。デンリュウを追い込みます。そして今回はバトルの合間にミキとザキが登場です。このパターンは初めてですかね。今後もちょこちょこ彼らを登場させるかもしれません。では、次回もお楽しみに。