二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 473章 新雪 ( No.685 )
日時: 2013/02/16 23:17
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「チラチーノ、まずは奮い立てるだ!」
 チラチーノはすぐには攻めず、自身を奮い立たせて攻撃力を高める。
「シビルドン、マッハボルト!」
 チラチーノが奮い立っている時、シビルドンは口から高速で電撃を射出した。
「かわしてスイープビンタ!」
 しかしチラチーノは飛来する電撃を跳躍してかわすと、硬化させた尻尾を連続でシビルドンに叩き付ける。
 エルレイドとのバトルでかなり消耗していたので、この連打でシビルドンは戦闘不能となった。
「お疲れ様。戻って、シビルドン」
 シビルドンが消耗していたのはシロナも承知のこと。動じることなくシビルドンをボールに戻した。
「さて、チラチーノ……とりあえずは、この子で行こうかしら」
 そして一つのボールを取り出し空中へと放る。
「雪原に吹雪け、グレイシア!」
 シロナの四番手は、新雪ポケモン、グレイシア。複数の進化形態を持つポケモン、イーブイの進化系の一種で、氷タイプだ。
 水色や青色など全体的に寒色系の体色で、耳元はもみあげのように垂れ下がっており、体の各所には雪の結晶を思わせる菱形の模様がいくつも見える。
「グレイシア、吹雪よ!」
 真っ先に動いたグレイシアが鳴き声をあげると、どこからか凍てつく猛吹雪が放たれ、チラチーノに襲い掛かる。
「避けきれないか……バグノイズ!」
 イリスの見立てでは、このグレイシアの吹雪の範囲はダイケンキのものよりも広い。なのでチラチーノでも回避は無理だと判断し、バグノイズで相殺を試みる。
 しかし吹雪は範囲が広いだけでなく威力も高い。一度奮い立たせているにも関わらず、相殺しきれずに残った吹雪を浴びてしまう。
「続けてシグナルビーム!」
 吹雪が止んだ後、グレイシアはすぐさまカラフルな光線を発射して追撃してくる。
「今度は行ける。かわせ、チラチーノ!」
 シグナルビームの速度もかなり速いが、それでも直線的なので、チラチーノの身のこなしなら回避は可能だ。チラチーノサッと横に逸れ、光線をかわす。
「奮い立てる!」
 まだ反撃には出ず、チラチーノは再び自身を奮い立たせて攻撃力を高め、下準備を整える。
「もう一度奮い立てる!」
「させないわ。シグナルビーム!」
 チラチーノが続けて奮い立てるを使用しようとすると、そこにグレイシアのシグナルビームが発射され、中断される。
「もう一発、シグナルビーム!」
 さらにグレイシアはシグナルビームを発射。しかしそう何度も直線的な攻撃が当たるわけもなく、チラチーノは今度は確実回避した。
「チラチーノ、バグノイズ!」
「グレイシア、吹雪で迎え撃って!」
 チラチーノは耳をつんざくような騒音をグレイシアへと発するが、グレイシアも同時に吹雪を放ち、バグノイズを突き破ってチラチーノを攻撃。まだチラチーノの攻撃力はグレイシアには届かないようだ。
「だったらこれだ! 十万ボルト!」
 チラチーノは威力が拡散するバグノイズではなく、一点突破が可能な十万ボルトを放つ。凝縮された高電圧の電撃は、一直線にグレイシアへと向かっていくが、
「吹雪!」
 またしてもグレイシアの吹雪にかき消され、そのままチラチーノに襲い掛かる。十万ボルトでもダメらしい。
「グレイシア、シグナルビームよ!」
 グレイシアは間髪入れずにカラフルな光線を発射する。
「かわして奮い立てる!」
 だが、吹雪はともかくシグナルビームならかわせる。チラチーノは横に跳んで光線を避けると、自身を奮い立たせて攻撃力をさらに高める。
「もう一度!」
「これ以上攻撃力を上げられると流石に困るわね。グレイシア、シグナルビーム!」
 チラチーノはその場で再び奮い立てるを使用。攻撃力を高めようとするが、そこにグレイシアの光線が発射される。
 結果、チラチーノは光線の直撃を受けて吹っ飛ばされたが、代わりに振るい立てるは間に合い、攻撃力がさらに上昇。通常の三倍となった。
「これなら行けるはず。チラチーノ、バグノイズ!」
 チラチーノは大きく息を吸い込み、鼓膜を破らんばかりの超大音量の騒音を発する。騒音は破壊力を持つ音波となり、グレイシアへと向かっていった。
「迎え撃つわよ、グレイシア。吹雪!」
 グレイシアも凍てつく猛吹雪を放ってバグノイズに対抗。しばらく騒音と競り合っていたが、やがて徐々に押されていき、最後には音波に突き破られ、グレイシアは吹っ飛ばされてしまった。
「よしっ。シグナルビームを直撃されてでも奮い立たせた甲斐があったよ。チラチーノ、このまま攻めよう。十万ボルト!」
「グレイシア、吹雪! 一点集中!」
チラチーノは十万じゃ利かないくらい超高電圧の電撃をグレイシアへと放つ。対するグレイシアも、広範囲に放つのではなく、稲妻のように襲ってくる電撃にぶつけるように、細く絞った吹雪を吹かせた。
 こちらも激しく押し合ったが、一点の突破力なら十万ボルトに分があったようで、電撃が吹雪を突き破り、そのままグレイシアに電流を浴びせる。
 しかし、

「グレイシア、ミラーコート!」

 刹那、グレイシアの体が光り輝く。光はグレイシアの周囲でいくつかに分かれて凝縮され、鋭い光線となってチラチーノへと高速で飛んで行った。
「これは……! チラチーノ、出来るだけかわすんだ!」
 イリスはそう指示するが、光線をはチラチーノを追いかけ、一つ残らずチラチーノの体を貫いた。
「チラチーノ! 大丈夫か?」
 チラチーノは起き上がり、ふるふると首を振る。正直なのは結構だが、ここは嘘をついてほしかった。
 ミラーコートは特殊技のダメージを倍にして返す反射技。恐らくシロナはこの技を使用することを想定し、吹雪を使って上手く十万ボルトのダメージを調整したのだろう。そのため、グレイシアのダメージは最小限に抑えられ、チラチーノは相当なダメージを受けてしまっている。
「特殊技で攻めればまたミラーコートか……だったらチラチーノ、スイープビンタ!」
 チラチーノは地面を蹴ってグレイシアとの距離を詰め、硬化させた尻尾を振りかざす。が、
「グレイシア、シグナルビーム!」
 チラチーノが尻尾を振り下ろす前に、グレイシアは光線を発射。チラチーノを吹っ飛ばし、洞穴の壁に叩き付けた。
「チラチーノ!」
 その一撃で遂にチラチーノは目を回して戦闘不能になってしまった。
「戻ってくれ、チラチーノ。よく頑張った」
 イリスはチラチーノをボールに戻す。これでイリスの手持ちは残り二体。
(体力が残り少ないとはいえ、グレイシアにはミラーコートがあるから、特殊技を使うポケモンは出し難い。デスカーンみたいにじわじわ削るのもなんだかな……相性的にはズルズキンが一番だけど、シロナさんにはガブリアスがいる。氷技を使えるダイケンキかフローゼルは残しておきたいし、飛べるリーテイルも捨てがたい)
 イリスがシロナと戦うにあたって、最も警戒しているのが、以前サザナミタウンで見せたガブリアスだ。出ていた時間は短いものの、そのスピードはイリスのディザソルやリーテイルに匹敵するほどだろうし、なにより未解放とはいえ、レイのレジュリアのアイスバーンの直撃を、四倍の弱点で喰らってもなお戦い続けられるほどの耐久力がある。なので、パワーとスピード、互いの足りないところを補い合っている関係にあるダイケンキとリーテイルは、相性的にも残しておきたい。
「それにシロナさんにはウォーグルもいる。ズルズキンじゃウォーグルには対応できないだろうから……ここは、君に任せる」
 そしてイリスは、ボールを一つ手に取って構えた。
「出て来い、ダイ——」
 ボールを放り投げる直前、イリスの脳に一つの言葉がよぎった。

『一番強い奴に頼ってんじゃねぇ!』

 きつく言われた、イリゼの言葉。ここ一番でエースに頼ってしまうという、自分の弱さ。後に控えているであろうガブリアスを倒すために考えた対抗策は、まさにそれそのものだった。
 イリスはボールを放る手を止め、違うボールと取り換えた。
「……ズルズキン!」
 イリスが繰り出したのは、グレイシアに有利なズルズキンだ。格闘技で弱点を突け、物理技主体なのでミラーコートも怖くない。
「ズルズキン、マグナムパンチ!」
「……グレイシア、かわしてシャドーボール!」
 ズルズキン大砲のような勢いで繰り出した拳をかわし、グレイシアは影の球を発射。ズルズキンに直撃させるが、
「ブレイズキック!」
 ズルズキンは怯まず、炎を灯した足でグレイシアを蹴り飛ばす。
 その一撃でグレイシアは壁まで吹っ飛ばされ、戦闘不能となった。
「…………」
 相手を倒した。というのに、イリスの心は晴れない。本当の相手は、もっと別のところにいる。そんな思いが、靄のようにイリスを惑わせていた——



シロナ戦その四、グレイシアの登場です。ブイズはポケモン界でも人気の高いポケモンですが、皆さんはどうでしょうか? 白黒は好きですよ、バトルで使うかどうかはさておき。特にブラッキーが好きですね。次点でブースターとリーフィアです……やっぱり僕って不遇ポケモンに肩入れしてしまいますね。リーフィアはまだいいとして、ブースターなんて……いつか唯一王のフレアドライブが見てみたいです。久々にあとがきっぽいあとがきが書けたところで、次回はシロナ戦その五です。お楽しみに。